00-2.【始原遺物】── 恐れは願いに混ざる
《異常存在記録報告書:A-E/No.000-2》
識別仮称:《始原遺物》
通称:《世界卵》《空想機関》《神の核》
分類:超常遺物
収容状況:管理運用指定
危険等級:第二等級
管轄:国連総合ギルド
異常存在管理局(中央監査部)
閲覧制限:第一閲覧指定
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■第二記録:分裂
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■古代竜事案以後
《第一魔導都市復元計画》崩壊後。
世界各国は、
初めて《始原遺物》の危険性を認識した。
しかし同時に、
対象がもたらした恩恵もまた事実であった。
飢饉は減少した。
疫病は克服されつつあった。
失われた技術は蘇った。
そのため、
各国家は研究停止ではなく、
「より安全な運用方法の確立」
を選択した。
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■追加運用実験
古代竜事案後も、
研究は継続された。
当初、
結果は良好であった。
・治療術式の高性能化
・農業生産量増加
・魔導機構の小型化
・都市防衛能力向上
いずれも成功。
しかし、
複数の生成事案において、
説明困難な誤差が確認され始める。
【確認事例】
・防衛獣生成計画
→ 敵対対象への攻撃性能が設計値を超過
→ 停戦後も警戒行動を継続
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・自律警備機構生成計画
→ 治安維持能力は向上
→ 軽微な規則違反への介入頻度が増加
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・作物改良計画
→ 収穫量は目標値を大きく上回る
→ 周辺作物への競争性が増加
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・都市防衛結界生成計画
→ 防御性能は設計値を超過
→ 平時においても高出力状態を維持
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当初、
研究班はこれらを
生成精度不足による誤差であると判断した。
また、
いずれの事案も実用上の問題は限定的であり、
運用継続に支障はないと結論付けられている。
一方で、
同種事例は継続的に増加傾向を示していた。
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■再解析命令
古代竜事案から二年後。
各国家共同研究会議は、
古代文明資料の全面再解析を決定。
その結果、
従来見落とされていた文書群が発見される。
【翻訳記録:AR-0/52】
「声なき願いにも応える」
【翻訳記録:AR-0/61】
「生成実験時は思考を統一せよ」
【翻訳記録:AR-0/73】
「恐れは願いに混ざる」
【翻訳記録:AR-0/88】
「理想だけを見るな」
当初、
これらは宗教的教義と考えられていた。
しかし、
古代竜事案との照合により、
解釈は一変する。
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■研究部門見解
研究部門は、
《始原遺物》が参照しているのは、
「願望」
のみではない可能性を指摘。
同時に、
・懸念
・恐怖
・予測
・想像
・無意識
なども参照している可能性が浮上した。
特に問題視されたのは、
古代竜出現直前に複数研究員が
「古代文明は神話級存在によって滅ぼされた」
という仮説を共有していた事実である。
現時点で因果関係は証明されていない。
しかし、
研究部門は、
「対象が思考内容を参照した可能性を否定できない」
との報告を提出している。
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■思想対立
この報告を契機に、
世界各勢力は大きく二派へ分裂した。
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■運用継続派
運用継続派は主張した。
問題は制御技術不足である。
古代文明は運用方法を誤った。
我々は失敗から学べる。
利益は危険性を大きく上回る。
主な構成勢力
・魔導研究機関
・技術革新派国家
・医療研究団体
・神代文明復興派
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■封印派
一方、
封印派は主張した。
人類は思考を制御できない。
無意識を制御できない。
恐怖を制御できない。
つまり、
対象は本質的に制御不能である。
主な構成勢力
・封印術師団
・一部宗教組織
・現実安定化研究者
・古代竜事案被害国家
また、封印派内部でも、
一部急進派は《始原遺物》の完全破壊を主張し始めていた。
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■対立激化
以後、
両派閥は急速に対立。
研究成果共有停止。
共同実験中断。
研究資料秘匿。
生成技術独占。
各国家は、
《始原遺物》を巡る主導権争いを開始した。
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■統合管理機関設立案
事態悪化を受け、
中立国家群は、
“《始原遺物》専属管理機関”
設立を提唱した。
しかし会議は決裂。
運用継続。
封印。
破壊。
各勢力の意見は一致しなかった。
後年、
この会議は
「最後の和平機会」
と呼ばれている。
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■暫定結論
現在、
中央監査部では、
《始原遺物》を巡る対立は、
単なる政治問題ではなく、
「人類は空想を制御できるのか」
という思想対立であったと分析している。
また、
この時点で既に、
後の《空想戦争》へ直結する研究が開始されていた可能性が高い。
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■個人付記
古代竜によって考え方が変わった者もいた。
変わらなかった者もいた。
どちらが愚かだったとは思わない。
問題は、
誰もが自分こそ正しいと確信していたことだ。
その確信が、
やがて世界を二つに割った。
――後の中央監査部
第一監査官《アルヴェイン》
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※本報告は「承」段階記録である。
次段階(転)では、
《空想戦争》発生、
および《始原遺物》を巡る全面戦争について報告する。
次回投稿 本日21:00
00-3.【始原遺物】── 人はそれでも手を伸ばす




