00-1.【始原遺物】── 願いは現実へ流れ落ちる
これが最後の異常となります。
《異常存在記録報告書:A-E/No.000-1》
識別仮称:《始原遺物》
通称:《世界卵》《空想機関》《神の核》
分類:超古代遺物
収容状況:共同研究指定
危険等級:第三等級
管轄:国連総合ギルド
異常存在管理局(中央監査部)
閲覧制限:第二閲覧指定
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■第一記録:発見
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■概要
本記録は、
古代大陸中央部《封鎖遺跡群》にて発見された超常遺物
《始原遺物》についての統合調査報告である。
当該対象は、
現在確認されている魔物・幻想種・異常存在群の起源と関係している可能性が高い。
本報告は、
空想戦争終結後に回収された古代資料、
戦時記録、
生存者証言を統合して作成されたものである。
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■発見領域
古代大陸中央部《封鎖遺跡群》。
当時、
この領域は超古代文明跡地として知られていた。
遺跡内部では、
・高濃度魔力反応
・自律稼働施設
・未知の建築構造
・解読不能文字列
が確認されていた。
また、
各国家が保有する最先端魔導技術ですら再現できない構造物が多数存在していたことが記録されている。
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■対象発見
共同調査開始から八か月後。
最深部区画にて、
巨大球状構造体が発見された。
直径は約四百二十メートル。
表面は白銀色とも黒色とも判別できず、
観測者ごとに色彩認識が変化したという証言が残されている。
調査員手記には以下の記録がある。
【調査員手記抜粋】
「あれを見た瞬間、
巨大な卵だと思った。」
「だが隣の研究員は、
巨大な心臓に見えると言った。」
「誰も同じ物を見ていなかった。」
対象周辺では、
・魔術成功率向上
・魔力消費低下
・術式安定性向上
などの異常現象が確認された。
当時の研究機関は、
対象を超古代文明の動力炉である可能性が高いと判断している。
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■古代記録群
対象周辺からは大量の文書が回収された。
文書内では、
当該対象について、
《世界卵》
《空想機関》
《夢見る器官》
《原初炉》
《世界心臓》
など、
複数の名称が確認されている。
しかし、
全ての資料には共通する一文が存在した。
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「願いは現実へ流れ落ちる」
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当時、
この記述は宗教的比喩表現であると解釈されていた。
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■能力実験
発見から一年後。
各国家共同研究班は、
対象能力の検証実験を開始した。
当初確認された成果は驚異的であった。
・干ばつ地域への降雨誘導
・高効率魔導炉生成
・重病患者治療
・作物収穫量増加
いずれも、
従来技術では実現困難な成果である。
以後、
世界各国は対象研究へ莫大な予算を投入。
人類文明は急速発展期へ突入した。
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■第一魔導都市復元計画
対象発見から三年後。
複数国家共同事業として、
《第一魔導都市復元計画》
が開始された。
計画目的は、
遺跡内部資料に記録されていた神代文明都市の再現である。
計画は成功した。
都市は稼働した。
半永久型魔力炉。
自律修復建築。
気候制御結界。
自動防衛機構。
失われたはずの技術が、
次々と再現された。
当時の記録には、
「神代文明へ到達した」
との記述すら残されている。
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■古代資料抜粋
【翻訳記録:AR-0/03】
「神は願いを聞いた」
【翻訳記録:AR-0/09】
「飢えは終わった」
【翻訳記録:AR-0/14】
「我らは理想へ至る」
【翻訳記録:AR-0/21】
「声なき願いにも応える」
【翻訳記録:AR-0/27】
「生成実験時は思考を統一せよ」
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■異常発生
しかし、
復元都市調査が進むにつれ、
研究班はある違和感へ気付く。
古代文明資料に、
都市滅亡理由だけが存在しなかった。
何千枚もの資料が残されている。
技術もある。
設計図もある。
運用記録もある。
だが、
滅亡だけが書かれていない。
調査班は独自調査を開始した。
【研究会議記録】
「外敵侵攻か?」
「魔導災害ではないか?」
「神話級存在の襲撃という伝承もある」
複数研究員が、
古代文明滅亡に関する仮説を共有していたことが確認されている。
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■出現記録
仮説共有から三日後。
復元都市上空にて、
超大型飛行生命体を確認。
第一発見者による記録。
【監視塔記録】
「雲だと思った」
「違う」
「翼だ」
「空が燃えている」
対象は、
黒色鱗装甲。
超高熱ブレス。
広域飛行能力。
異常な再生能力。
を有していた。
後に、
《古代竜》と仮称される存在である。
対象出現から二時間後。
復元都市は崩壊した。
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■暫定結論
現在、
《始原遺物》は単なる願望実現装置ではなく、
“空想そのものを現実へ定着させる存在”
であった可能性が高い。
また、
現在確認される魔物・幻想種の多くは、
当該対象によって誕生した可能性がある。
ただし、
この時点では、
現代異常存在に見られる法則侵食性や認識災害性は確認されていない。
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■個人付記
私は後年、
空想戦争を経験した。
世界が滅びる光景も見た。
だが、
本当に恐ろしかったのは戦争ではない。
この記録に残る研究者たちが、
誰一人として悪人ではなかったことだ。
彼らは世界を良くしようとしていた。
だからこそ、
止められなかった。
――後の中央監査部
第一監査官《アルヴェイン》
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※本報告は「起」段階記録である。
次段階(承)では、
《始原遺物》を巡る思想対立、
および世界規模分裂について報告する。
次回投稿 明日20:00
00-2.【始原遺物】── 恐れは願いに混ざる




