00-4.【始原遺物】── 終わりは始まりとなる
《異常存在記録報告書:A-E/No.000-4》
識別仮称:《始原遺物》
通称:《世界卵》《空想機関》《神の核》
分類:現実改変型超常異常
収容状況:破壊済み(推定)
危険等級:特級指定
管轄:国連総合ギルド
異常存在管理局(中央監査部)
閲覧制限:特級閲覧指定
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■第四記録:終わりは始まりとなる
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■停止作戦決定
ヴァルネシア統合王国崩壊後、
戦況は急速に変化した。
運用継続派は分裂。
中立国家群は離反。
各勢力は、
《始原遺物》の継続運用を断念し始める。
そして空想戦争開始から十一年後。
諸国家連合会議は、
《始原遺物》停止作戦
を正式承認した。
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■最終侵攻作戦
作戦には、
空想戦争を生き残った各勢力が参加した。
投入戦力:
・超大型封印術式
・現実固定結界
・神代封鎖杭
・魔力遮断陣
作戦目標は一つ。
《始原遺物》の完全停止。
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■中枢領域侵入
侵攻部隊は、
封鎖遺跡群最深部へ到達。
中枢領域は、
戦争以前の記録と概ね一致していた。
中央部には、
《始原遺物》と推定される巨大球状構造体が存在。
複数部隊による視認記録も一致している。
この時点では、
空間異常や認識異常は確認されていない。
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■停止失敗
中枢領域到達後、
侵攻部隊は複数封印術式を実施した。
しかし対象反応に変化なし。
魔力遮断も効果なし。
現実固定結界も維持不能。
停止作戦は失敗した。
原因は現在も不明。
術式構築不備。
魔力出力不足。
対象構造の未知性。
複数の仮説が提出されているが、
いずれも決定的根拠に欠けている。
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■停止失敗に関する後年考察
後年、
研究部門は別の可能性を指摘している。
当時、
侵攻部隊内部には、
・戦争終結への期待
・文明再建への願望
・失われた技術への執着
・奇跡への期待
が広く存在していた。
また、
作戦参加者の多くは、
《始原遺物》による恩恵を直接経験した世代であったことも確認されている。
《始原遺物》が観測者の願望や空想を参照していたとするならば、
停止を命じた者たち自身の内にも、
「失いたくない」
という感情が存在していた可能性は否定できない。
研究部門は、
対象存続への無意識的願望が、
停止作戦へ何らかの影響を与えた可能性について言及している。
ただし、
これを停止失敗の原因と断定する証拠は確認されていない。
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■最終判断
作戦指揮部は、
《始原遺物》停止不能
と判断した。
しかし、
総攻撃案に対する反対意見も多かった。
対象がもたらした恩恵は、
あまりにも大きかったためである。
飢饉を終わらせた。
疫病を克服した。
失われた文明を蘇らせた。
世界を発展させた。
多くの者は、
なお《始原遺物》に希望を見ていた。
それでも。
これ以上の運用継続は、
人類存続そのものを危険に晒すと結論された。
最終的に、
諸国家連合会議は、
“対象遺物への総攻撃”
を承認した。
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■破壊記録
総攻撃は実行された。
通信映像には、
対象構造体の崩壊が記録されている。
しかし、
その後の帰還報告は存在しない。
直後、
全通信は途絶。
侵攻部隊は消息不明となった。
現在に至るまで、
生存者は確認されていない。
【最終通信】
「反応停止を確認」
「成功だ」
「終わった」
(長時間の無音)
「……聞こえるか」
「誰かいるか」
「どういうことだ?戻れない」
「な…なんで」
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■第一次捜索作戦
侵攻部隊との通信途絶後。
各国家は、
中枢領域への第一次捜索作戦を実施した。
しかし、
調査隊は異常な報告を残している。
確認事象:
・過去記録との地形不一致
・距離感覚異常
・同一地点再到達不能
・帰還経路消失
さらに、
隊員間の証言も一致しなかった。
「内部は空洞だった」
「都市が存在した」
「何もなかった」
「巨大な球体を見た」
調査は失敗。
第二次以降の調査隊も、
同様の異常を報告している。
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■永久封鎖指定
度重なる調査失敗を受け、
中枢領域は
《永久封鎖指定区域》
へ移行。
現在も監視対象となっている。
中央監査部は、
《始原遺物》を破壊済み(推定)の分類としているが、
残骸の確認には至っていない。
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■終戦
《始原遺物》消失後、
空想戦争は終結した。
戦争開始前と比較し、
・人口六割以上減少
・複数国家消滅
・神代文明技術喪失
・世界地図改変
が確認されている。
後年、
この戦争は
“人類史最大の内戦”
と記録された。
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■異常存在時代
しかし、
終わってはいなかった。
《始原遺物》消失から二年後。
各地で説明不能な超常事案が発生し始める。
確認事例:
・自己増殖呪物
・認識汚染現象
・空間侵食災害
・因果異常事案
・自律概念存在
これらは、
従来の幻想生物や魔導兵器とは明確に異なっていた。
特に問題視されたのは、
“原因の説明が成立しない”
という点である。
ただ一つ共通していたのは、
異常発生地点から、
《始原遺物》稼働時に観測されたものと近似する魔力反応が検出されていたことである。
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■研究部門見解
現在、
中央監査部は、
《始原遺物》が完全には消失しておらず、
破損した状態で機能を継続している可能性を採用している。
その場合、
対象は取り込んだ空想情報を、
歪んだ形で現実へ投影していることになる。
現在確認されている異常存在群は、
その副次的結果である可能性が高い。
ただし、
完全な証明には至っていない。
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■異常存在管理局設立
遺物の破壊が、
異常存在発生の原因となった可能性が浮上した。
その責任を負うべく、
封印派主要国家は、
新たな統合組織設立を決定。
名称:
《国連総合ギルド
異常存在管理局》
目的は、
・異常存在監査
・異常災害対処
・危険遺物封印
・認識汚染管理
・情報統制
である。
また局内には、
異常存在記録管理および
超常災害監査を専門とする部署が設置された。
後の
《中央監査部》
である。
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■最終結論
《始原遺物》は発見された。
人類は繁栄した。
人類は分裂した。
人類は戦争した。
そして人類は、
《始原遺物》を破壊した。
それが正しかったのか。
誤りだったのか。
現在も結論は存在しない。
ただ一つ確かな事実がある。
《始原遺物》の時代は終わった。
そして、
異常存在の時代が始まった。
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■個人付記
我々は終わらせたかった。
戦争を。
悲劇を。
《始原遺物》を。
だが後になって理解した。
あれは終わりではなかった。
始まりだった。
――中央監査部
第一監査官《アルヴェイン》
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※本報告書は特級閲覧指定対象である。
※本記録をもって、
識別仮称《始原遺物》に関する統合報告を終了する。
ここまでお読みいただき、
本当にありがとうございました。
本作は、
「もしファンタジー世界にSCP的な組織が存在したら」
という発想から生まれた作品です。
《雨踊り》から始まった異常存在たちの記録も、
当初の予定通り《始原遺物》で締めくくることができました。
少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。
感想、評価等をいただけると、
今後の創作の励みになります。
改めまして、
最後までお付き合いいただきありがとうございました。




