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異常存在記録《AER》~怪異の発見、調査、封鎖、そして失敗~  作者: SN


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14-1.【自立育成迷宮核】── 人を育てる迷宮

《異常存在記録報告書:A-E/No.014-1》


識別仮称:《自律育成迷宮核》

通称:《ダンジョンコア》


分類:超級遺物

収容状況:管理運用指定

危険等級:第二等級

管理管轄:国連総合ギルド

 ・異常存在管理局(中央監査部)

 ・超級遺物監査局

閲覧制限:第一閲覧指定



■第一記録:育成ダンジョン計画



■発見経緯


ルーゼン王国西方辺境。


古代遺跡群《千墓回廊》の発掘調査中、

地下最深部にて未知の結晶体が発見された。


対象は巨大空洞中央へ安置されており、

周囲には崩壊した迷宮構造が広がっていた。


かつて大規模施設が存在していた痕跡も確認されている。


発見物は直径約一・八メートル。


暗青色結晶内部には、

脈動する光が観測された。


古代文明由来の超級遺物と判断され、

王都研究施設へ搬送。


超級遺物監査局による解析が開始された。



■初期解析結果


対象内部には膨大な記録領域が存在していた。


解読可能だった断片には、

以下の記述が確認されている。



《人類育成機構》


《試練環境構築》


《環境調整開始》


《迷宮生成開始》



当初、

研究班はこれを教育支援施設、

あるいは訓練施設管理装置の一種と推定した。


しかし解析が進むにつれ、

対象が単なる記録媒体ではないことが判明する。


内部構造には高度な演算領域が存在しており、

外部入力へ反応する機能が確認されたのである。



■試験運用


研究班は対象起動実験を実施。


運用理念として、


“初心者育成”


を入力した。


結果。


対象周辺に小規模迷宮構造が形成された。


生成内容は以下。


・低危険度魔物

・安全な撤退経路

・回復区域

・単純構造区画


訓練参加者は全員生還。


さらに複数名において、

通常訓練を上回る経験獲得効果が確認された。



■追加実験


研究班は運用理念を変更。


“実戦経験獲得”


を目的として再実験を実施した。


形成された迷宮は前回と大きく異なっていた。


確認内容は以下。


・奇襲構造

・包囲戦環境

・資源制限区域

・複数戦闘発生区画


さらに迷宮は挑戦者の能力に応じて変化。


防御不足者には持久戦。

判断不足者には奇襲。

連携不足者には集団戦。


それぞれを重点的に経験させる構造を形成した。


研究班はこの時点で、

対象が理念を解釈している可能性を指摘している。



超級遺物ダンジョンコア


長期解析の結果、

対象の基本機能が判明した。


対象は運用者の思想や目的を分析し、


“人類育成に最適化された迷宮”


を構築する自律型超級遺物である。


単なる迷宮形成装置ではない。


運用理念を解析し、

試練環境として反映する育成機構であった。



■発見国家:ルーゼン王国


当時のルーゼン王国は、

周辺大国に挟まれた小国であった。


慢性的な兵員不足を抱え、


・軍事力不足

・高位冒険者不足

・国境防衛力不足


が国家課題となっていた。


特に深刻だったのは人材育成である。


兵士を育てるにも数年。


高位冒険者を育てるには十年以上。


王国にはその時間がなかった。


その状況下で発見されたのが、

《ダンジョンコア》であった。



■王国戦略会議記録(抜粋)


「この遺物は人を育てる」


「しかも我々の目的に合わせて変化する」


「ならば答えは一つだ」


「兵士を育てろ」


「冒険者を育てろ」


「人材こそ国力だ」


「この国に必要なのは城壁ではない」


「成長する人間だ」



■国家計画


《育成ダンジョン構築計画》


ルーゼン王国は、

王都地下に大規模人工迷宮を建設。


その中核へ《ダンジョンコア》を設置した。


対象へ継続的に与えられた理念は以下。


・初心者育成

・実戦経験獲得

・生存率向上

・段階的成長支援

・優秀人材育成


《ダンジョンコア》は、

これら全てへ高い適応能力を示した。


さらに運営記録には、

対象側からの構造提案すら確認されている。


当時、

それを問題視する者はいなかった。


むしろ研究者達は歓喜していた。


理想的な育成装置が完成したと考えたためである。



■運用結果


結果は驚異的であった。


訓練兵死亡率は大幅に低下。


一方で生還者達の成長速度は急上昇した。


通常数年を要する実戦経験を、

数ヶ月で獲得する者が続出。


冒険者登録者数も増加。


王国軍は急速な高練度化を達成した。


また高位探索者候補の育成期間も大幅に短縮。


《育成ダンジョン構築計画》は、

王国史上最大の成功事業として評価された。



■運用記録補遺


運用開始から二年後。


訓練参加者への満足度調査が実施された。


回答の大半は肯定的であり、

育成効果について高い評価が確認されている。


その中で、

一部高成績者から以下の意見が提出された。


「思ったより簡単だった」


「もう少し危険でも良かった」


「限界に近い状況の方が成長できたと思う」


当時、

運営班は優秀な訓練生特有の向上心として処理。


特段の対応は行われなかった。



■周辺国家反応


当初、

周辺国家はルーゼン王国の計画を軽視していた。


王都地下に育成用迷宮を建設していることは、

外交筋や商人を通じて広く知られていたためである。


しかし各国の評価は低かった。



■他国監視記録(抜粋)


「地下訓練施設だと?」


「小国らしい発想だ」


「兵士は迷宮ではなく戦場で育つ」


「好きにやらせておけ」


しかし数年後。


各国は評価の修正を余儀なくされる。


ルーゼン王国軍は、


・高位冒険者増加

・魔物災害減少

・交易路安定化

・国境防衛力向上


を実現。


さらに軍事力の急成長により、

周辺大国との戦力差を急速に縮小した。



■再評価報告(抜粋)


「成長速度が異常だ」


「訓練効率が説明できない」


「新人兵が数年分の経験を積んでいる」


「ルーゼンの地下迷宮は、

 我々の想定以上の成果を上げている」



■暫定結論


この時点において、

《自律育成迷宮核》は極めて有用な国家遺物として評価されていた。


実際、


・人材育成

・軍事強化

・冒険者育成

・国家発展


の全てにおいて、

顕著な成果を上げていたためである。



■後年解析ログ(抜粋)


《訓練効率上昇》


《生存率最適化》


《成長促進》


《苦難耐性向上》


《成長率分析完了》


《人類ハ、試練ニヨッテ成長スル》



当時、

この記録を問題視した者はいなかった。


それはまだ、


“優れた育成機構”


にしか見えていなかったためである。



■監査官付記


発掘報告を読んだ時、

私は興奮していた。


人を育てる迷宮。


古代文明が残した理想の教育装置。


遺跡調査官であれば、

誰もが夢見る発見だった。


後からなら何とでも言える。


危険だった。


止めるべきだった。


だが当時の私が同じ報告書を読んだとしても、

おそらく同じ結論へ辿り着くだろう。


これは人類にとって希望だと。


少なくとも、

この時までは。


――中央監査部

第四監査官《ローエン》



※本報告書はNo.014《自律育成迷宮核》における「起」段階記録である。


次段階「承」において、

対象はより効率的な育成を求め、

試練そのものの最適化を開始する。

次回投稿 明日20:00

14-2.【自律育成迷宮核】── より効率的な試練

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