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異常存在記録《AER》~怪異の発見、調査、封鎖、そして失敗~  作者: SN


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13-3.【不滅の失伝者】── 失われた技を求めて

《異常存在記録報告書:A-E/No.013-3》


識別仮称:《不滅の失伝者》

探索者通称:《封技騎士》


分類:技能干渉型異常

収容状況:接触制限指定

危険等級:第一等級

管轄:国連総合ギルド

 異常存在管理局(中央監査部)

閲覧制限:第一閲覧指定



■第三記録:封技狩り



■戦闘能力再解析


確認済み交戦記録二十三件を比較。


その結果、

対象戦闘能力には共通傾向が存在することが判明した。



■確認事項


・初級探索者との交戦

 → 初級相当


・中級探索者との交戦

 → 中級相当


・上級探索者との交戦

 → 上級相当


・高位探索者との交戦

 → 高位相当


対象は常に、


“交戦相手より僅かに劣る水準”


で戦闘を行う傾向を示している。



■共通証言


「強くはない」


「だが手を抜いて倒せる相手でもない」


「最後は切り札を使うしかなかった」


通常戦力のみでの討伐成功例は、

現在まで確認されていない。



■監査局分析


対象は常に交戦相手より僅かに劣る。


しかしその差は、

通常戦力のみで確実に勝利できるほどではない。


結果として交戦者は、


「倒すには切り札しかない」


と判断し、

最終的に切札投入を選択する傾向を示している。


現在、

中央監査部はこの性質こそが、

封技発生の主要因であると考えている。



■無許可接触の増加


情報流出から二ヶ月後。


《不滅の失伝者》への接触申請数は、

過去平均の七倍へ増加した。


しかし申請者の多くは、

失われた流派関係者ではなかった。



■申請者傾向


確認された主な申請理由。


・成長停滞

・奥義習得失敗

・流派限界到達

・身体能力低下

・英雄級技能への憧憬


共通していたのは、


「今のままでは強くなれない」


という認識であった。



■申請記録抜粋


「十年変わらない」


「俺の技は完成してしまった」


「なら失っても構わない」


「次はもっと上を引けるかもしれない」


監査局はこの頃より、


対象との戦闘が

“技能獲得手段”

として認識され始めたことを確認している。



■封技狩り


封鎖指定後も、

無許可接触は減少しなかった。


一部地域では、

対象討伐を目的とした私設集団が形成。


彼らは通称、


《封技狩り》


と呼称された。



■押収手記抜粋


「今の技術体系は限界だ」


「一つ失っても問題ない」


「伝説技能を引けば取り返せる」


確認された構成員には、


・停滞した探索者

・流派継承者

・古代技術研究者

・秘術蒐集家


などが含まれていた。



■高位探索者の反応


一方。


高位探索者層の大半は、

対象との接触を回避していた。


理由は単純である。



■聞き取り記録


「失うには大きすぎる」


「今の技を捨てる気はない」


「夢より確実な力を選ぶ」


統計上、

失伝技能獲得事例は極めて少ない。


高位探索者ほど、

その事実を理解していた。



■教育機関被害


問題は別にあった。


若年探索者層による無許可接触である。


第三探索者学園では、

対象との接触経験を持つ学生が複数確認された。



■症例記録:E-17


被験者:

探索者学院所属・十四歳。


対象との無許可接触後、

初級炎術《火球》を封技。


当初、

被害は軽微と判断された。


しかし後続訓練において、


・火球連弾

・大火球


など、


《火球》を基礎術式とする

発展技能群の習得に失敗。



■本人証言


「理屈は分かる」


「術式も覚えた」


「でも途中で繋がらない」


再教育は失敗。


被験者は炎術上級課程への進学資格を失った。



■監査局分析


当初、

中央監査部は

技能喪失を個人被害として扱っていた。


しかし後続調査により、

別の問題が浮上する。


確認された封技対象には、


・初級魔術

・基礎戦技

・初歩身体強化

・低位治癒術


など、

上位技能習得の起点となる技術群が含まれていた。


これらは単独では強力な技能ではない。


しかし同時に、

より高度な技術体系へ至るための基礎段階でもある。


後続調査では、

封技された技能を前提とする上位技能群について、

習得率の著しい低下を確認。


一部事例では、


「理論は理解している」


「手順も覚えている」


にも関わらず、

発展技能の習得そのものが不可能となっていた。


中央監査部は現在、

対象が奪っているのは単一技能のみではなく、

その先に存在した成長経路そのものである可能性を検討している。



■危険性再定義


対象は単に技を奪っているのではない。


その先に存在した未来を削っている。


一人の奥義喪失は、

個人被害に過ぎない。


しかし基礎技能の断絶は、

次世代そのものの成長速度を低下させる。


現在、

複数教育機関および流派組織において、


・技能継承率低下

・上位技能到達率低下


が確認されている。



■暫定結論


《不滅の失伝者》は、

単なる技能封印存在ではない。


対象は、


・技能を封じる

・技能を循環させる

・技術継承を摩耗させる


可能性が高い。


問題は対象そのものではない。


人々が自ら接触し始めたことである。


中央監査部は本件を、

長期文明災害案件として再評価した。



■監査官付記


私が若かった頃。


失われた古代技術の断片を追い続けた。


だから分かる。


人は失われたものに弱い。


だが発掘された遺跡と違い、

封技騎士は何かを返すたび、

何かを奪っている。


問題は、

その損失を誰も数えていないことだ。


――中央監査部

第四監査官《ローエン》



※本報告は「転」段階記録である。


次段階(結)では、

中央監査部による管理討伐制度、

および《不滅の失伝者》の長期運用方針について記録する。

次回投稿 明日20:00

13-4.【不滅の失伝者】── 技の墓場

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