13-1.【不滅の失伝者】── 勝者が失ったもの
《異常存在記録報告書:A-E/No.013-1》
識別仮称:《不滅の失伝者》
探索者通称:《封技騎士》
分類:戦闘型異常(暫定)
収容状況:討伐対象
危険等級:第二等級(暫定)
管轄:国連総合ギルド
異常存在管理局(中央監査部)
閲覧制限:第一閲覧指定
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■第一記録:勝者への報酬
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■概要
本報告書は、
北方旧王墓群にて初確認された異常個体
《不滅の失伝者》に関する初期接触記録である。
対象は全身を黒銀色の甲冑で覆った人型存在であり、
高度な戦闘能力を有する。
当初、
地方探索者ギルドは対象を高知能型リビングアーマーと判断。
通常討伐対象として処理していた。
しかし後に、
当該判断は重大な誤認であったことが判明する。
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■発生領域
北方旧王墓群
第三区画《無名王の回廊》
当該区域は、
滅亡王朝期の地下霊廟群である。
古代騎士の亡骸や
自律鎧系魔物の出現が以前より確認されている。
本件以前、
当該区域において
特筆すべき異常事例は報告されていない。
最初の異常報告は、
探索者三名による救援申請であった。
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■初期報告(抜粋)
「技を読まれた」
「いや……違う」
「あいつは知っていた」
「まるで前にも戦ったことがあるみたいに」
当時、
証言内容は極度の戦闘緊張による錯覚として処理されている。
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■対象外見
確認特徴は以下。
・全身を覆う黒銀色甲冑
・国家紋章なし
・顔面部完全閉鎖
・長剣一本のみ装備
・呼吸音なし
対象は発見時から常に戦闘態勢を維持。
周辺を徘徊する行動は確認されていない。
目撃者証言の多くは、
「こちらが武器を抜いた瞬間、既に構えていた」
と一致している。
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■初回討伐作戦
地方探索者ギルド北方支部は、
上級探索者四名による討伐隊を編成。
構成は以下。
・剣士
・重戦士
・炎術師
・強化術師
討伐隊は対象と接触後、
即時交戦を開始した。
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■戦闘記録
戦闘開始直後、
対象は高水準の剣技を披露。
しかし戦況そのものは探索者側優勢で推移した。
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■交戦記録抜粋
「押してる!」
「囲め!」
「ただの鎧だ!」
映像記録解析の結果、
対象の戦闘能力は討伐隊より僅かに低い水準で推移。
確認事項。
・剣速は若干劣る
・筋力は若干劣る
・魔力反応も低位
しかし同時に、
対象は決定的敗北のみを回避し続けていた。
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■証言記録
「弱い」
「少なくとも俺たちよりはな」
「だが妙に倒れない」
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■戦闘経過
交戦開始から二十分後。
討伐隊は優勢を維持。
対象への有効打も複数確認した。
しかし対象は後退と防御を繰り返し、
決定打のみを回避。
戦闘は膠着状態へ移行した。
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■重戦士証言
「変な感じがした」
「理由は分からん」
「だがこれ以上長引かせるのはまずい気がした」
当時、
討伐隊は対象を単なる高位リビングアーマーと認識していた。
しかし甲冑系魔物との長期戦は、
体力消耗の観点から生者側が不利となる。
重戦士の提案により、
討伐隊は戦力温存を断念。
奥義投入を決定した。
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■奥義投入
使用技能は以下。
・奥義《断界一閃》
発動時、
対象は初めて大きく体勢を崩した。
直後。
対象胴体中央部に亀裂発生。
甲冑内部より黒色粒子が噴出。
対象は完全停止した。
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■討伐成功判定
対象停止後、
討伐隊は帰還。
地方ギルドは本件を
“高位リビングアーマー討伐成功事例”
として処理予定であった。
しかし翌日、
異常事態が発生する。
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■技能喪失事例
剣士は
《断界一閃》を再現不能となった。
重戦士、炎術師、強化術師の三名も
一部の技が発動不能となっていた。
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■検査結果
・魔力総量正常
・魔術回路正常
・記憶障害なし
・他技能使用可能
喪失は単一技能のみに限定。
再訓練および再習得は全て失敗した。
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■監視記録抜粋
剣士は調査中、
奥義再現を繰り返し試みた。
記録によれば、
構えに入るたび動作が停止している。
「違う」
「ここまでは覚えている」
「この先も知っている」
「知っているはずなんだ……」
最終的に剣士は剣を落とし、
その場に膝をついた。
以後、
当人が《断界一閃》を再現することはなかった。
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■継承事例
対象討伐から三日後。
討伐参加者の一人である重戦士が、
地方ギルド訓練場にて
関係者を呼び集めた。
理由は、
「変な技が使えるようになった」
という報告であった。
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■聞き取り記録
「騎士を倒した時だ」
「頭の中に何か残った感じがした」
「説明はできん」
「だが使えそうだと思った」
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■実演記録
重戦士は、
本人が習得していない剣技を発動。
当該技術は既存流派との一致を確認できず。
しかし複数観測者は、
「対象の剣筋に酷似している」
と証言した。
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■追加調査
追加聞き取り調査の結果、
他の討伐参加者からも類似証言を確認。
当初、
全員が錯覚と判断していた。
理由は単純である。
頭に浮かんだ技術は、
本人の専門分野と全く一致しなかった。
・剣士 → 初級治癒術
・炎術師 → 槍術
・強化術師 → 古式格闘術
試行の結果、
全員が当該技能の発動に成功。
いずれも習得経路は確認できなかった。
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■再出現
初回討伐より十二日後。
北方旧王墓群第七区画にて、
同一特徴を持つ黒銀甲冑個体を再確認。
さらに対象は、
剣士が喪失した奥義《断界一閃》に酷似した技を使用していた。
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■再遭遇時証言
「待て」
「あの構え……」
「それ、あいつの奥義だろ」
これを受け中央監査部は、
・技能喪失が対象側への移転である可能性
・討伐が成立していない可能性
・対象が技能を保持している可能性
を正式調査対象へ指定。
識別仮称
《不滅の失伝者》
探索者通称
《封技騎士》
を登録した。
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■暫定結論
《不滅の失伝者》は、
単なる戦闘型異常存在ではない。
対象は、
・技能喪失
・再出現個体
・未知技能継承
との関連性が高い。
本件は現在、
異常存在管理局による継続調査案件へ移行した。
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■監査官付記
初回報告を読んだ時、
私は再生能力を持つ古代兵器の一種だと思った。
技を失う異常なら過去にも存在する。
だが再出現個体の映像を見て考えを改めた。
あれは技を壊しているのではない。
集めている。
問題は何のために集めているのかだ。
もし仮説が正しいなら、
あの鎧の中には、
我々の知らない何かが蓄積されている。
問題は、
それが技なのか、
記憶なのか、
それとも別の何かなのかだ。
――中央監査部
第四監査官《ローエン》
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※本報告は「起」段階記録である。
次段階(承)では、
封技現象の発生条件、
および技能継承事例について調査を行う。
次回投稿 明日20:00
13-2.【不滅の失伝者】── 失われた技




