12-4.【禁忌箱】── 何を集めていたのか
《異常存在記録報告書:A-E/No.012-4》
識別仮称:《禁忌箱》
(旧識別仮称:《黄金箱》)
冒険者通称:《黄金箱》《当たり箱》《ボーナスミミック》
分類:精神汚染型異常
収容状況:継続監視指定
危険等級:第二等級 → 第一等級
管轄:国連総合ギルド
異常存在管理局(中央監査部)
閲覧制限:第一閲覧指定
⸻
■最終記録:育てられた災厄
⸻
■鑑定結果報告
中央監査部より依頼していた鑑定ギルドから、
正式な解析結果が提出された。
結論から述べる。
禁忌箱由来武具は、
単なる呪具ではなかった。
⸻
■精神汚染機構
確認された主な効果は以下。
・狩猟行為への執着形成
・攻撃性の増加
・判断能力の低下
特筆すべきは、
その進行速度である。
変化は極めて緩慢であり、
使用者自身が異常を自覚できない。
多くの装備者は、
最後まで自らの意思で行動していると信じていた。
⸻
■生命力徴収機構
さらに解析の結果、
武具には第二の機能が存在していた。
対象を殺害した際、
生命力の一部を回収するのである。
回収された生命力は武具内部に蓄積されない。
外部の何らかの対象へ転送されていた。
⸻
■供給停止時の反応
生命力供給が途絶えた場合、
武具は使用者へ作用する。
確認症状。
・殺害衝動の急激な増幅
・焦燥感
・異常な探索欲求
・生命力の強制徴収
拘束個体E-07の衰弱死は、
この影響によるものと結論付けられた。
⸻
■転送先調査
回収武具の破壊調査により、
全個体から共通する魔力紋様を確認。
さらに同一紋様が、
禁忌箱本体からも検出された。
生命力は禁忌箱へ送られていた可能性が極めて高い。
⸻
■発生機構仮説
中央監査部は以下の仮説を提示。
禁忌箱は、
生命力を回収する武具を世界へ撒く。
武具は生命力を集める。
集められた生命力は禁忌箱へ送られる。
そして、
十分な生命力を得た禁忌箱は、
新たな禁忌箱を発生させる。
⸻
■緊急対応措置
本結果を受け、
中央監査部は緊急命令を発令。
・禁忌箱武具の全面使用禁止
・市場流通停止
・強制回収
・順次破壊処分
を開始した。
⸻
■抵抗個体
回収作戦開始後、
一部装備者が激しく抵抗。
・武具提出拒否
・逃走
・暴力行為
・監査官への攻撃
が確認された。
高進行個体ほど抵抗は激しかった。
⸻
■離脱後経過
武具を手放した者に対し、
・浄化処置
・精神治療
・生命力補填治療
を実施。
結果。
軽度汚染者は回復。
中度汚染者は改善。
重度汚染者の多くは回復せず、
最終的に衰弱死した。
⸻
■出現数の変化
武具回収作戦開始後、
禁忌箱の出現数は急速に減少した。
各地で確認されていた出現報告は激減。
増殖傾向も停止した。
⸻
■事態収束
中央監査部は本件について、
「一応の収束」
を宣言。
禁忌箱は依然出現するものの、
制御不能な拡散状態は解消された。
⸻
■残存リスク
しかし問題は残されている。
・全武具の回収は未達成
・闇市場への流出
・違法使用の継続
現在も散発的な出現報告は継続中である。
⸻
■最終結論(結)
禁忌箱は黄金の宝ではない。
それは、
開けてはならない禁忌だった。
生命を餌とし、
意思を侵し、
自らを増殖させるための収穫装置である。
我々はそれを歓迎した。
利用した。
そして広めた。
その結果――
自らの手で災厄を育てた。
⸻
■監査官付記
我々から吸い上げられた、
あの膨大な生命力はどこへ消えたのか。
禁忌箱の増殖に使われた。
そう考えるのが最も自然だろう。
だが――
本当にそれだけだったのか。
そして、
それは既に十分な量を得たのか。
私には分からない。
ただ一つ確かなことがある。
禁忌箱は減少した。
だが、消えてはいない。
どこかのダンジョンで今日もまた、
ひとつの箱が静かに口を開けている。
――中央監査部
第八監査官《ホーン》
※本報告書をもって、
異常存在《禁忌箱》に関する統合記録を終了する。
なお、武具の回収は引き続き継続。
次回投稿 本日21:00
13-1.【不滅の失伝者】── 勝者が失ったもの




