12-3.【黄金箱】── 与えられた衝動
《異常存在記録報告書:A-E/No.012-3》
識別仮称:《黄金箱》
冒険者通称:《当たり箱》《ボーナスミミック》
分類:精神汚染型異常(暫定)
収容状況:要監視
危険等級:第三等級 → 第二等級
管轄:国連総合ギルド
異常存在管理局(中央監査部)
閲覧制限:第二閲覧指定
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■第三記録:与えられた衝動
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■探索行動の変質
黄金箱の拡散以降、
冒険者社会には奇妙な変化が現れ始める。
* 探索頻度の増加
* 休息期間の短縮
* 連続潜行日数の増加
当初は、
「強力な武器を得たことで活動範囲が広がった」
と判断されていた。
実際、
戦力向上による合理的な行動変化として説明可能だったためである。
この段階では、
誰も異常とは考えなかった。
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■対人衝突の増加
しかし同時期、
冒険者同士の衝突件数が急増。
* 口論
* 威嚇行為
* 暴力沙汰
発生件数は例年比約2.4倍。
複数の報告では、
「異常な怒り方をした」
「些細なことで激昂した」
との証言も確認されている。
だが当時は、
“冒険者人口増加に伴う摩擦”
として処理された。
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■行動逸脱
その後、
より深刻な異常行動が確認され始める。
* 高難度領域への無謀な進行
* 医療勧告の無視
* パーティ内対立の激化
* 単独探索者の増加
複数の証言では、
「慎重だった人物が突然変わった」
「まるで別人になった」
との報告が提出された。
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■共通要因
調査の結果。
異常行動を示した人物には、
ある共通点が存在した。
全員が黄金箱由来武具の使用者だったのである。
中央監査部は直ちに関連武具を調査した。
その結果。
複数武具から、
呪詛反応が確認された。
ただし当該反応は、
代償型魔剣や契約武装などに見られる呪詛と同程度であり、
即時使用禁止を求める水準には達していなかった。
しかし中央監査部は、
別の点に危機感を抱いていた。
黄金箱発見直後に行われた初期鑑定記録では、
呪詛反応は確認されていない。
それにもかかわらず、
現在の武具からは明確な呪詛反応が検出されていたのである。
“呪いが存在すること”
ではなく、
“呪いが増加していること”
そのものが異常だった。
中央監査部はこの時初めて、
“呪いそのものが成長している可能性”
を疑い始めた。
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■当時の見解
中央監査部内部では、
武具の使用停止を求める意見も提出された。
しかし現場からは強い反発が発生。
「多少の呪いなら魔剣にはよくある」
「危険だという証拠はない」
「利益の方が大きい」
冒険者。
商人。
騎士団。
国家。
その全てが黄金箱の恩恵を受けていた。
結果として、
使用禁止案は見送られた。
後に振り返れば、
この判断が事態を決定的に悪化させた可能性は高い。
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■異常の進行
事態はさらに悪化した。
失踪者は増加。
暴力事件は増加。
そしてついに、
冒険者同士の衝突による死亡事案が発生した。
後の内部報告書では、
「使用停止を強行すべきだった」
との意見も記録されている。
しかしこの時点において、
決定的証拠は未だ存在していなかった。
この時点で、
中央監査部は本件を重大案件へ指定。
調査体制を拡充し、
原因究明を最優先事項として扱うことを決定した。
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■拘束個体記録 E-07
暴力事件を起こした冒険者を拘束。
対象は終始、
同一内容を繰り返した。
「行かなきゃ……」
「まだ足りない……」
「もっと狩らなきゃ……」
「もっと強い獲物を……」
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■症状
* 極度の興奮状態
* 睡眠異常なし
* 食欲異常なし
* 原因不明の衰弱
対象は日ごとに痩せ衰えた。
睡眠も取っている。
食事も摂っている。
それにもかかわらず、
衰弱だけが進行した。
最終的に対象は死亡。
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■死後調査
死亡したE-07の装備一式に対し、
詳細鑑定を実施。
その結果――
黄金箱由来武具に、
明確な異常が確認された。
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■確認異常
* 複雑な呪詛構造
* 精神干渉痕跡
* 魔力構造の変質
比較調査の結果、
さらに異常な事実が判明した。
当該構造は、
黄金箱発見直後に行われた初期鑑定記録には存在していなかったのである。
もはや武具ではなく、呪具と化していた。
また、
共通要因調査時に確認された呪詛反応と比較しても、
異常な増大が認められた。
これを受け、
中央監査部は対象の危険等級を第三等級から第二等級へ引き上げた。
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■呪詛の成長性
追加検証の結果。
呪詛は固定されたものではなかった。
* 使用期間
* 討伐数
* 戦闘回数
に比例し、
徐々に増大していた。
つまり、
武具を使うほど、
呪いは成長する。
初期鑑定時に呪詛反応が確認されなかった理由も、
この性質によるものと考えられる。
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■追加調査
異常行動を示した他の冒険者の装備を再検査。
結果。
全ての武具から、
同様の呪詛構造を確認。
さらに、
呪詛の濃度と精神汚染進行度には
明確な相関が認められた。
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■暫定仮説
黄金箱武具は、
単なる高性能装備ではない。
それは、
使用者の行動原理そのものへ干渉する異常物品である。
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■対応措置
中央監査部は、
鑑定ギルドへ正式調査を依頼。
調査対象は以下。
* 呪詛の正体
* 発生源
* 発動条件
* 影響範囲
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■暫定結論(転)
我々は、
安全であると判断した。
利益をもたらすと歓迎した。
だがその判断は、
致命的な誤認であった可能性が高い。
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■監査官付記
黄金箱由来武具の装備者に共通していた衝動は、
“より獲物を狩れ”
である。
だが不思議なことに、
誰一人として、
何のために狩るのかは語らなかった。
私たちはまだ理解していない。
あの箱が何を与え、
何を奪い、
そして何を集めているのかを。
――中央監査部
第八監査官《ホーン》
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※本報告は「転」段階の記録である。
次段階「結」において、
黄金箱の発生機構および呪詛構造の最終解析結果を記録する。
次回投稿 明日20:00
12-4.【禁忌箱】── 何を集めていたのか




