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異常存在記録《AER》~怪異の発見、調査、封鎖、そして失敗~  作者: SN


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10-3.【■識捕■■】── 消えていく記録

《異常存在記録報告書:A-E/No.010-3》


識別仮称:《■識捕■■》


分類:認識侵食型異常(暫定)

収容状況:封鎖管理指定

危険等級:第一等級

管轄:国連総合ギルド

 異常存在管理局(中央監査部)

閲覧制限:特級閲覧指定



■第三記録:消えていく記録



■封鎖後調査


空白室封鎖後も、

中央監査部は調査を継続した。


重点対象となったのは以下。


・録音記録

・監視鏡記録

・自動筆記記録

・精神干渉検知記録


当初、

いずれの資料も解析不能と判断されていた。


しかし複数資料の重ね合わせにより、

共通情報の抽出に成功した。



■断片記録統合結果


消失直前の複数記録から、

以下の共通発言を確認。


「目だ」


「浮いてる」


「なんだあれ」


「見るな!」


確認件数:七件


発話者:全員消失


中央監査部は、

空白室内部に何らかの存在が出現している可能性が高いと判断した。



■監視鏡記録


識別番号:MR-12

記録状態:著しい劣化あり


確認可能だった映像は僅か三秒。


映像中央部に、

巨大な円形物体を確認。


詳細輪郭は不明。


しかし以下特徴が共通していた。


・単眼状構造

・浮遊

・異常な大型化

・周辺光量低下


なお、

映像確認後に実施された模写作業では、

担当記録官七名全員が形状再現に失敗している。


記録上、

全員が映像を閲覧していた。


しかし後の聞き取りでは、


「何を見たか説明できない」


と証言した。



■対象存在の暫定情報


現時点で判明している特徴は以下。


・巨大な単眼

・浮遊存在

・失踪直前に出現

・消失者のみが視認

・周囲は存在を認識できない


特筆すべきは、

対象を認識しているのが、

常に失踪する人物本人である点である。


同行者は、

対象が存在していること自体を認識できない。


録音記録上では戦闘音や絶叫が発生しているにも関わらず、

他隊員は通常行動を継続していた。



■正式仮称登録


王暦██年██月██日。


中央監査部は対象を新規異常存在として登録。


識別仮称:


《認識捕食者》


命名理由:


対象が人間そのものではなく、


“対象に関する認識”


を消失させている可能性が高いため。



■記録侵食事案


王暦██年██月██日。


記録保管庫にて重大異常を確認。


《白灯》事案に関する資料の一部に変質が発生した。


確認内容は以下。


・顔写真欠損

・人物欄空白化

・筆跡消失

・署名欠損

・家族情報消失


当初確認されていた情報が、

後日の再確認時には消失していた。


物理的改竄痕は存在しない。


保管環境にも問題は確認されなかった。



■資料比較記録


【初回閲覧記録】


「第五構成員:男性」


「家族構成:父・母・妹」



【二回目閲覧記録】


「該当記述なし」



【保管資料】


人物欄:空白

顔写真:欠損

署名:消失

家族情報:未記入



■追加異常


本件担当職員三名に異常を確認。


当該職員らは、

現在進行形で本件調査へ従事していたにも関わらず、


「何の事件を調査しているのか分からない」


と証言した。


【聞き取り記録】


監査官:


「現在担当中の案件を答えろ」


職員:


「……」


監査官:


「答えろ」


職員:


「分かりません」


監査官:


「お前は二ヶ月以上この案件を担当している」


職員:


「そう記録されています」


監査官:


「覚えていないのか」


職員:


「記録は読めます」


職員:


「ですが……何を調べていたんでしょうか」



■記録官錯乱事案


記録侵食確認後、

保管庫担当記録官一名が錯乱状態に陥った。


拘束直前、

以下発言を確認。


「違う」


「記録が消えてるんじゃない」


「違う」


「俺が間違ってるんだ」


「いや違う」


「違う……」


以後、

当該記録官は重度精神汚染認定。


隔離処置。



■危険性再評価


本件は単純な失踪事案ではない。


対象は、


・人物

・記憶

・記録


のみならず、


・事件認識そのもの


へ影響を及ぼしている可能性が高い。


中央監査部は本件を、


“第一種認識災害候補”


として再分類。


危険等級を第一等級へ引き上げた。


また、

関連資料の閲覧は監査官許可制へ変更された。



■監査官付記


私は現在、

《白灯》事案の資料を三組保管している。


理由は単純である。


一組では不安だからだ。


奇妙な話だが、

最近は資料を読む前に内容を書き写すようになった。


そうしないと、

後で比較できなくなる気がする。


実際に変化した証拠はまだない。


少なくとも私は確認していない。


だが、

確認していないことと、

起きていないことは同じではない。


数日前、

私は《白灯》の第五構成員について調べていた。


今も調べている。


そのはずだ。


だが正直に言えば、

何を調べていたのか、

少し自信がなくなってきている。


本日付で、

本件は第八監査官ホーンへ移管される。


理由は適性によるものだ。


私はその決定を承認した。


少なくとも記録上は、

そうなっている。


――中央監査部

第三監査官《カイン》



※本報告は「転」段階の記録である。


次段階(結)では、

討伐試行結果および調査終了勧告について報告する。

次回投稿 本日22:00

10-4.【■■■■■】── あそこへ行くな

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