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異常存在記録《AER》~怪異の発見、調査、封鎖、そして失敗~  作者: SN


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10-1.【■■■■者】── 消えた五人目

《異常存在記録報告書:A-E/No.010-1》


識別仮称:《■■■■者》


分類:不明

収容状況:要調査

危険等級:第三等級

管轄:国連総合ギルド

 異常存在管理局(中央監査部)

閲覧制限:第一閲覧指定



■第一記録:消えた五人目



■概要


本報告書は、

中級ダンジョン《灰層回廊》にて発生した原因不明の失踪事案に関する初期調査記録である。


当初、

本件は一般的な遭難事故として処理されていた。


しかし調査の進行に伴い、

通常の失踪事案では説明不能な複数の異常が確認された。


本記録では、

中央監査部による最初の調査経緯について記録する。



■発生事案


発生日:王暦██年██月██日


冒険者パーティ《白灯》が中級ダンジョン《灰層回廊》より帰還。


確認人数は四名。


全員に疲労および軽傷が見られたものの、

探索継続に支障をきたす損傷は確認されなかった。


問題が発覚したのは帰還手続き中である。


担当受付員は登録情報との照合作業を実施。


その際、

編成人数の不一致を確認した。



■登録記録


《白灯》


登録人数:五名


構成員


・前衛剣士

・盾役

・斥候

・術師

・第五構成員



帰還人数:四名


不足人数:一名



■聞き取り記録(抜粋)


受付員:


「もう一人はどちらですか」


剣士:


「もう一人?」


受付員:


「登録は五名です」


斥候:


「いや、四人だろ」


術師:


「待ってください……」


盾役:


「五人?」


受付員:


「こちらの記録では五名です」


剣士:


「いや……そんなはずは……」



当初、

受付員は単純な登録ミスを疑った。


しかし照合作業は直後に停止されることとなる。



■記録照合結果


保管記録の確認を実施。


以下資料に同一人物の存在を確認。


・登録羊皮紙

・魔力印

・宿泊記録

・依頼参加記録

・報酬分配記録

・装備購入履歴


いずれも同一人物の存在を示していた。


記録上、

第五構成員は確実に存在している。


しかし帰還した四名は、

誰一人として当該人物を記憶していなかった。



■人物確認


受付員は登録写真を提示。


以下、監査水晶記録より抜粋。


受付員:


「この人物です」


術師:


「…………」


剣士:


「誰だ?」


斥候:


「知らねぇよ」


盾役:


「待て……」


受付員:


「見覚えはありませんか」


盾役:


「ある気がする」


術師:


「私もです」


盾役:


「駄目だ」


術師:


「顔が浮かばない」



証言によれば、

写真を見た瞬間のみ強い既視感が発生する。


しかし視線を外した直後、

その印象は急速に薄れる。


顔立ち。

髪色。

声。

名前。


いずれも保持できない。


ただし、


「知っていたはずだ」


という感覚だけが残存する。



■二次確認事案


その後、

調査へ参加したギルド職員にも同様の症状を確認。


当該人物について説明を求められると、


・顔を説明できない

・特徴を言語化できない

・思考が途中で停止する


といった現象が発生した。



■監査記録(抜粋)


「写真には確かに人が写っている」


「だが顔が思い出せない」


「髪色を書き留めようとしても言葉にならない」


「忘れたのではない」


「思い出せないのとも違う」



■追加異常


発生から三日後。


登録写真の一部に軽度劣化を確認。


顔部分のみ輪郭が不鮮明化しており、

複製記録との比較においても同様の変化が確認された。


ただし保管環境に異常はなく、

他資料への影響も確認されていない。


現時点では偶発的損耗の可能性も否定されていない。



■初期評価


確認された特徴は以下。


・特定人物に対する認識阻害

・記憶保持不能

・言語化障害


特筆すべきは、


「存在していた証拠は残っている」


にも関わらず、


「当人だけが思い出せない」


点である。


現時点では、


・未知モンスター

・記憶干渉系異常

・ダンジョン由来災害


いずれの可能性も否定できない。



■暫定結論


本件は通常の遭難事案ではない。


何らかの異常現象が介在している可能性が極めて高い。


中央監査部は灰層回廊を要注意監視区域へ指定。


継続調査を実施する。



■監査官付記


本件は私が第三監査官へ着任して以降、

初めて担当する認識異常案件である。


現時点では、

記憶操作あるいは精神干渉系異常の可能性が高いと考えている。


記録上は存在している。


だが誰も覚えていない。


その点だけを見れば、

過去にも類似事例は存在する。


しかし、

私には一つ気になる点がある。


被害者達の反応が統一されていないのだ。


剣士および斥候は、

写真の人物を完全な他人として扱った。


一方で、

盾役および術師は、


「知っている気がする」


と証言している。


同一事象へ接触したにも関わらず、

認識の欠落に差異が発生している。


これは通常の記憶操作や精神干渉としては不自然である。


現時点では、


・精神耐性

・魔術適性

・個人差による抵抗


などの可能性も考えられる。


だが、

私はこの差異を軽視すべきではないと思う。


理由は説明できない。


しかし、

本件にはまだ記録に表れていない異常が存在するように思える。


今のところ被害者は一名。


しかし私は、

この数字を信用していない。


――中央監査部

第三監査官《カイン》



※本報告は「起」段階の記録である。


次段階(承)では、

灰層回廊内部における追加発生事例および共通発生地点の調査記録について報告する。

次回投稿 明日20:00

10-2.【■■捕食■】── 誰も振り向かない

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