01-3.【雨踊り】── 最後まで踊った者
《異常存在記録報告書:A-E/No.001-3》
識別仮称:《雨踊り》
古称:《空蝉の舞》
分類:存在侵食型儀式異常
収容状況:接触制限指定
危険等級:第二等級
管轄:中央監査部
閲覧制限:第二閲覧指定
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■第三記録:完全舞踏到達実験
《雨踊り》接触者に発生する
存在希薄化現象について、
中央監査部は以下二仮説を提出。
* 高位隠密化
* 存在情報変質
これを受け、
舞踏完成度限界実験が承認された。
被験者には、
第一潜入部隊所属高位潜入員
《レイス》を選定。
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■被験者概要
《レイス》は、
東方式潜伏術および西方遮断術双方を修得した、
第一潜入部隊所属潜入員。
高位結界区域潜入、
王城内部侵入など、
複数任務成功記録を保有。
接触実験時点において、
最も高い舞踏同期適性を示していた。
なお、
現在、
顔写真記録の大半は不鮮明化している。
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■実験開始
接触開始直後より、
《レイス》は異常な同期速度を記録。
記録担当員は以下を報告。
「真似しているように見えない」
「最初から同じ舞だった」
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開始九分後、
映像記録内で軽度異常を確認。
* 輪郭不鮮明化
* 音声記録劣化
* 雨粒による像崩れ増加
ただし、
《雨踊り》本体側には異常なし。
記録術式のみが、
《レイス》を正常保持できていない可能性が指摘された。
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■存在定位不全
開始十七分後。
監視術式が、
《レイス》位置情報の追尾に失敗。
監視記録抜粋。
「見えている」
「だが固定できない」
「輪郭が滑る」
「雨の方が近い」
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以後、
監視員間で位置認識不一致が発生。
「右側」
「違う、中央だ」
「いや、
最初から一人だった」
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■記録侵食発生
開始二十三分後。
複数記録媒体に不整合発生。
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●監視記録A
「舞踏参加者三名を確認」
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●同時刻映像
映像内確認人数:二名
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●任務名簿
No.1
No.2
―――
No.4
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●術式追跡記録
対象追尾数:
二
備考:
「一つ多い」
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●署名記録
報告書署名欄一箇所が空白化。
筆跡痕のみ残存。
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■監視員証言
「人数が合わない」
「誰かいた」
「思い出せない」
「雨音だけ残る」
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■舞踏継続記録
異常進行後も、
舞踏そのものは継続。
映像内では、
降雨中心部に
“白衣の踊り子が存在している”
ことのみ確認可能。
対面対象側の動作は、
時間経過と共に判別不能となった。
一部映像では、
《雨踊り》が
誰もいない空間へ向けて舞っているようにも見える。
なお、
複数解析員は、
「途中から、
誰と踊っていたのかわからなくなる」
と報告している。
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■最終到達
開始二十九分後。
《雨踊り》が舞踏停止。
その後、
対象はゆっくりと一礼。
同時に、
《レイス》反応が完全消失。
現場からは以下未発見。
* 遺体
* 衣服
* 血痕
* 魔力残滓
* 転移痕跡
消失地点には、
浅い水溜まりのみ残存。
記録映像では、
停止直前まで、
二人分の波紋が確認されている。
ただし、
映像内に
“二人目の姿”
は存在しない。
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■記録侵食現象
事件後、
《レイス》関連記録へ継続侵食を確認。
確認症状:
* 氏名欠落
* 顔写真劣化
* 呼称消失
* 文脈断片化
* 記憶曖昧化
特異点として、
複数職員が
《レイス》そのものを思い出せなくなっていた。
しかし全員が、
「誰かが消えた」
という認識のみ保持している。
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■中央監査部見解
現在、
《レイス》の最終状態は不明。
提出仮説:
* 死亡
* 異界転移
* 存在情報消失
* 完全隠匿状態移行
なお、
一部調査員は別仮説を提出。
《雨踊り》は、
存在を消失させているのではない。
“認識されない側へ到達した”
可能性がある。
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■付記記録
最終映像解析内にて、
断片音声を確認。
解析成功部分は以下のみ。
「――届いた」
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■暫定結論(転)
《雨踊り》は、
舞踏接触を介し、
対象存在定義そのものへ干渉する異常存在である可能性が高い。
また、
完全舞踏到達者が
どこへ至るのかは現在不明。
ただし、
秘伝書記述
「されど最後まで届くな」
との関連性は極めて強い。
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■監査官付記
記録によれば、
私は《レイス》と
七年間同部署に所属していたらしい。
……らしい、
としか表現できない。
顔を思い出せない。
声も、
癖も、
歩き方も残っていない。
だが、
報告書を閉じる度に、
“誰かを置いてきた”
感覚だけが残る。
なお、
本付記記録作成中、
執務室外では降雨を確認していない。
それにも関わらず、
断続的な雨音が記録されている。
――中央監査部
第三監査官《イルヴァス》
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※本報告は「転」段階の記録である。
次段階(結)では、
《雨踊り》最終運用規定、
および管理運用指定継続理由を統合する。
次回投稿 本日22:00
01-4.【雨踊り】── 雨音は止まない




