01-2.【雨踊り】── 最後まで踊るな
《異常存在記録報告書:A-E/No.001-2》
識別仮称:《雨踊り》
古称:《空蝉の舞》
分類:儀式・存在侵食型異常
収容状況:管理運用指定
危険等級:第三等級 → 第二等級
管轄:中央監査部
閲覧制限:第二閲覧指定
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■第二記録:舞踏深化調査
初期接触実験以降、
《雨踊り》は特定条件下において継続出現を確認。
現在判明している出現条件は以下。
* 降雨環境
* 夜間
* 微風以下
* 周囲雑音の少ない環境
中央監査部東方調査室は、
旧忍族《黒雨衆》失伝技術との関連性を重視。
継続接触実験を開始した。
当時、
中央監査部内部では、
高位潜入技術としての運用価値を評価する声が強かった。
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■舞踏深化記録
継続接触者には、
既存隠密術式を大きく上回る異常変化を確認。
記録番号R-10は、
第三接触以降、
高位感知結界内への侵入に三度成功。
当該実験において、
監視術師二名は、
接近後も対象認識に失敗している。
報告抜粋。
「いる」
「……だが、
視線が合わない」
「輪郭だけが滑る」
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追加調査により、
舞踏深化は接触時間に比例しないことが判明。
むしろ、
“どこまで舞を合わせられたか”
によって変化していた。
調査部はこれを
《舞踏完成度》
と仮称。
舞踏一致率の高い接触者ほど、
より深い変化傾向を示している。
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■接触者共通症状
高完成度接触者には、
以下症状を確認。
* 呼名反応遅延
* 集団内認識率低下
* 記録映像の不鮮明化
* 視線追尾率低下
一部職員は、
「会話中、
途中で存在を見失う」
と証言。
また、
接触者退出後、
担当記録官三名が
「顔が思い出せない」
と報告している。
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■記録異常補遺
第四接触記録映像内にて、
複数解析術師が以下異常を報告。
「対象周辺のみ雨音が小さい」
ただし、
原記録術式内に異常は確認されていない。
現在も原因不明。
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■被験者証言(抜粋)
「静かなんじゃない」
「遠くなってる」
「後ろに立つと、
そのまま忘れられる」
「雨の音だけ近い」
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■初回死亡事案
記録番号L-22は、
第四接触実験中、
舞踏を意図的に中断。
この際、
《雨踊り》は初の明確な敵対反応を示した。
映像記録では、
対象が舞踏停止後、
極めて緩慢な動作で接近。
その直後、
L-22頸部が反転。
致命的頸椎損傷により即死。
なお、
接触瞬間の映像には、
一瞬の降雨欠落が確認されている。
原因不明。
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■追加検証結果
以後の実験により、
対象は
* 動作失敗
* 技量不足
* 同期遅延
に対しては反応を示さないことが判明。
一方、
* 意図的中断
* 拒絶行動
* 舞踏放棄
に対してのみ、
高確率で殺害行動を実施する。
調査部は、
対象が舞踏技術ではなく、
“最後まで踊る意思”
そのものを重視している可能性を指摘した。
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■中央監査部見解修正
《雨踊り》による変化は、
単なる隠密能力強化ではない。
接触者の
“存在認識そのもの”
へ干渉している可能性が高い。
これを受け、
危険等級は第二等級へ再指定。
管理運用計画は継続中。
ただし、
累積接触許容量については再検討対象となった。
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■累積接触危険性
継続接触者ほど、
舞踏同期速度が自然上昇する傾向を確認。
接触者の一部は、
非降雨環境下においても、
無意識の舞踏動作を反復。
また、
接触禁止期間中、
以下証言を繰り返している。
「雨が聞こえる」
「もう少しで思い出せる」
「向こう側に誰かいる」
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■付記記録
R-10第五接触終了後の面談記録。
「怖い」
「でも、
雨を待ってる」
「……あと少しで、
届く気がする」
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■暫定結論(承)
《雨踊り》は、
舞踏接触を介して、
対象認識および存在定義へ干渉する異常存在である可能性が高い。
また、
対象には明確な意思性が存在する。
その目的は現在不明。
ただし、
秘伝書末尾記述、
「されど最後まで届くな」
との関連性が強く疑われている。
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■監査官付記
R-10への面談を実施。
受け答えは正常。
精神汚染兆候も確認されなかった。
……だが、
面談終了後、
私は記録を見返すまで、
彼の顔を思い出せなかった。
なお、
面談映像内において、
R-10の着席位置のみ、
雨音に類似した微小雑音が継続記録されている。
――中央監査部
第三監査官《イルヴァス》
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※本報告は「承」段階の記録である。
次段階(転)では、
完全舞踏達成者消失事案、
および記録侵食現象についての統合調査記録を収録する。
次回投稿 本日21:00
01-3.【雨踊り】── 最後まで踊った者




