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異常存在記録《AER》~怪異の発見、調査、封鎖、そして失敗~  作者: SN


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01-1.【雨踊り】── 雨夜の踊り子

《異常存在記録報告書:A-E/No.001-1》


識別仮称:《雨踊り》

古称:《空蝉の舞》


分類:儀式型異常

収容状況:管理運用指定

危険等級:第三等級

管轄:中央監査部

閲覧制限:第二閲覧指定



■概要


本報告書は、

東方旧忍族《黒雨衆》跡地より発見された秘伝書、

および関連異常存在《雨踊り》に関する初期調査記録である。


《雨踊り》は、

降雨環境下に限定出現する女性型異常存在であり、

接触者へ、

異常な隠密能力を付与する性質を有する。



■第一記録:秘伝書発見


東方辺境旧集落跡にて、

旧忍族《黒雨衆》の地下保管庫が発見された。


《黒雨衆》は、

“痕跡を残さない忍族”

として知られていた集団である。


しかし現在、

生存者は確認されていない。


保管庫内部では、

歩法、

呼吸制御、

気配遮断など、

複数の古式隠密技術書が回収された。


問題視されたのは、

その最奥より発見された一冊の秘伝書である。


当該秘伝書末尾には、

以下記述が存在した。


「雨降り、風なき夜に現る」


「共に舞えば音は消える」


「影へ至りたくば、舞を極めよ」


「されど最後まで届くな」



当初、

中央監査部東方調査室は、

本記述を失伝した特殊隠密術式と判断。


記録内容に基づき、

降雨環境下での再現実験を実施した。


この時点では、

敵対性・精神汚染性ともに確認されていない。


危険性は低いものと判断されていた。



■初期接触記録


実験開始から約三十二分後、

調査員R-10が対象を視認。


当時の音声記録には、

小規模ノイズと共に、

以下発言が残されている。


「……誰かいる」



対象は、

降雨内に立つ女性型個体として観測された。


白色衣装着用。


顔面詳細は不明。


確認済み特徴:


* 足音なし

* 水面歩行

* 雨滴付着なし

* 魔力反応:極小


記録映像では、

対象が水溜まり上を歩行している。


しかし、

最後まで波紋形成は確認されなかった。



また、

複数調査員が

“距離感異常”

を証言している。


証言抜粋。


「近く見えるのに遠い」


「輪郭だけ曖昧だった」


「視界にはいる。

 だが位置を掴めない」



対象は終始無言のまま舞踏を継続。


舞踏動作は、

既存舞踊体系との一致を確認できず。


複数術師は、

「儀式動作に近い」

と証言している。


なお、

対象は約七分経過後、

調査員R-10へ接触要求動作を実施。


R-10は自発的に前進。


後の面談において、

以下証言を残している。


「拒否する理由が浮かばなかった」


「気づいた時には前へ出ていた」



■舞踏接触実験


接触後、

R-10の動作が対象と同期。


本人証言によれば、

動作模倣感覚は希薄だった。


「真似していた感じじゃない」


「最初から知っていた動きだった」


舞踏は約十一分継続。


終了後、

対象は一礼。


その後、

降雨内へ歩行し消失した。


追跡は失敗。


なお、

消失直前まで、

足音は一度も記録されていない。



■接触後変化


接触終了後、

R-10には以下変化が確認された。


* 足音消失

* 気配探知回避率上昇

* 呼吸制御精度向上

* 魔力反応低下


各数値は、

既存隠密術式を大きく上回っていた。


特に、

感知術式による探知成功率が大幅低下。


訓練用感知結界では、

R-10の接近を三度連続で検知できなかった。



一方、

第三監査官イルヴァスは、

別種異常性を指摘している。


面談記録抜粋。


イルヴァス監査官:

「……薄いな」


補助術師:

「気配ですか」


イルヴァス監査官:

「違う」


「“存在している感じ”そのものが薄い」



当時、

明確な副作用は確認されなかった。


このため中央監査部は、

本件を危険等級第三等級として仮登録。


同時に、

管理運用指定候補として継続調査対象へ指定した。


一部調査員からは、

潜入・暗殺技術としての実戦運用を求める声も上がっていた。


この時点において、

《雨踊り》を危険視する者は少数だった。


……監査官自身を含めて。



■付記記録


実験終了後、

R-10は以下発言を残している。


「雨の音が遠かった」


「……もう少しで、

 何かに届きそうだった」



■暫定結論(起)


《雨踊り》は、

降雨環境下に限定出現する女性型異常存在であり、

舞踏接触を介して高度な隠密能力を付与する性質を有する。


現時点では、

明確な敵対性は確認されていない。


ただし、

秘伝書末尾に記された以下記述については、

現在も意味不明である。


「されど最後まで届くな」



■監査官付記


本件は当初、

東方式失伝隠密技術として高く評価された。


実際、

初期接触者の多くは、

《雨踊り》を危険視していなかった。


……私も含めて。


――中央監査部

第三監査官《イルヴァス》



※本報告は「起」段階の記録である。


次段階(承)では、

舞踏完成度上昇に伴う存在希薄化現象、

および接触者消失事例について追加調査記録を統合する。

次回投稿 投稿済み

01-2.【雨踊り】── 最後まで踊るな

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