表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異常存在記録《AER》~怪異の発見、調査、封鎖、そして失敗~  作者: SN


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/31

07-2.【飢腹】── 捕食衝動

《異常存在記録報告書:A-E/No.007-2》


識別仮称:《飢腹》


分類:欲求汚染型異常

収容状況:接触管理指定

危険等級:第二等級

閲覧制限:第二閲覧指定

管轄:国連総合ギルド 異常存在管理局(中央監査部)

協力機関:森国立異常封印院



■第二記録:食べたい肉



■帰還隊員経過観察


第一次調査隊帰還後、全隊員に対して経過観察が実施された。


確認された主な症状は以下。


* 肉類への執着

* 対象夢想

* 集中力低下


一方、身体的異常は限定的であった。


食事量の軽微な増加は確認されたものの、異常な飢餓症状や栄養失調などは発生していない。


しかし精神面では共通する変化が確認された。


隊員らは繰り返し、


「肉料理が食べたい」


ではなく、


「あの肉をもう一度見たい」


と発言していた。



■共通夢事案


帰還から四日後。


第一次調査隊九名中七名より類似夢の報告が提出された。


内容は概ね一致している。


広場。


巨大な肉塊。


漂う肉の香り。


そして、


“まだ食べていない”


という感覚。



隊員証言抜粋


「またあの肉だった」


「夢の中でも美味そうだった」


「あと少しで食べられそうだった」


「起きた時、本気で残念だった」


夢の内容は細部に差異が存在したものの、


“食べ損ねた”


という感覚のみは全員に共通していた。



■第二調査隊派遣


対象異常性の再評価を目的として、第二調査隊が編成された。


隊員総数十六名。


第一次調査結果を受け、以下対策が実施された。


* 精神防壁術式展開

* 隊員相互監視

* 単独行動禁止

* 対象接触禁止


監査部はこの時点でなお、《飢腹》を精神干渉型異常存在として認識していた。



■再接触記録


対象は前回観測時と同位置に存在していた。


外見上の変化は確認されない。


しかし接触開始から十分後。


複数隊員に認識異常が発生した。



音声記録抜粋


「前より美味そうに見える」


「駄目だ、肉にしか見えない」


「少しだけなら……」


「美味そうには見えんな。

 ただの太りすぎたオークだ」


「本気で言ってるのか?」


精神防壁術式は一定の効果を示した。


だが完全な遮断には至らなかった。


対象を注視した隊員ほど、


対象への関心が強まる傾向が確認されている。


ただし、

隊員一名のみが強い執着傾向を示さなかった。


当時、この差異は個人差として処理された。



■デルム隊員事案


記録番号:E-007-D


接触開始から二十三分後。


前衛隊員デルムが隊列を離脱。


対象へ接近を開始した。


制止命令には反応しなかった。



音声記録


「デルム、止まれ」


「聞こえているか」


「……少しだけ」


「何をする気だ」


「少しだけだ…」



デルムは対象右腕部へ短剣を突き立てた。



■切除反応


切断面から流出したのは血液ではなかった。


黄金色の液体であった。


油脂にも肉汁にも見える粘性流体である。


同時に周辺へ強烈な臭気が発生。


複数隊員が吐き気を訴える一方、


別の隊員は唾液分泌量増加を示した。


デルムは流出物を指先ですくい上げた。


そして口へ運んだ。


「……ああ…うまい」


直後。


対象腹部が開口した。



■初回捕食記録


腹部裂開構造は急速に拡大。


内部より舌状器官が伸長。


デルム上半身へ巻き付いた。


救出行動実施。


失敗。


デルムは対象内部へ引き込まれた。


所要時間四秒。


回収不能。



最終音声記録


「デルム!」


「引き戻せ!」


「離れろ!」


「――」



記録終了。



■暫定結論


《飢腹》は、


* 食欲を誘導する

* 対象への欲求を固定する

* 接触者を捕食する


異常存在である可能性が高い。


また長時間接触者ほど影響が増大する傾向が確認された。


本事案を受け、


対象は第二等級へ昇格。


接触管理指定へ変更された。



■監査官付記


我々は人を食う怪物だと思っていた。


違う。


人が食べたがる怪物なのだ。


デルム隊員は最後まで抵抗しなかった。


逃げようとも。


助けを求めようとも。


ただ、


捕食される者の顔ではなかった。


――中央監査部

第七監査官《ラルク》



※本報告は「承」段階の記録である。


次段階「転」において、《飢腹》による汚染拡大および災害指定経緯を記録する。

次回投稿 本日23:00

07-3.【飢腹】── 喰われに行く者たち

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ