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異常存在記録《AER》~怪異の発見、調査、封鎖、そして失敗~  作者: SN


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20/27

05-4.【飼育樹】── 収容庭園

《異常存在記録報告書:A-E/No.005-4》


識別仮称:《飼育樹ブリーディング・トレント

村民仮称:“母樹様”


分類:人類飼育型異常

収容状況:収容管理指定

危険等級:第一等級

管轄:国連総合ギルド 異常存在管理局(中央監査部)

閲覧制限:特級閲覧指定



■第四記録:収容庭園(結)



■戦後協議


《灰化処理作戦》終了後、

中央監査部は、

回収された脈動種子について緊急協議を実施した。


議論は大きく二派へ分裂した。


・完全焼却処分派


・研究継続派


研究継続を主張した理由は、

対象果実の異常有用性である。


確認済み効果:


* 高栄養効率

* 疲労軽減

* 長時間活動維持

* 飢餓耐性向上


特に、


* 長距離遠征

* 飢饉対策

* 軍用携行食


としての価値を重視する声は強かった。


協議の結果、

中央監査部は、


「研究目的に限り保存」


を決定。


回収種子は、

中央封印施設地下植物異常区画

《封印庭園》へ移送された。



■収容庭園


収容区画には、

以下封印処置が実施された。


* 種子飛散遮断結界

* 花粉焼却術式

* 高位封印杭

* 魔力循環遮断壁

* 常時監視術式


対象への無許可接触は禁止。


また、

収容区画立入職員には、


* 呼吸遮断面

* 浄化護符

* 定期精神検査


が義務化された。



■発芽記録


回収種子は、

収容開始から二十三日後に発芽。


小型幼体《飼育樹》として正式収容された。



■観察記録


確認事項:


* 異常成長速度

* 根部脈動継続

* 微弱魔力吸収

* 周辺植物への軽度影響


特に問題視されたのは、

成長速度である。


通常植物として説明困難な速度で、

根部組織が拡張を継続していた。


中央監査部は現在、

対象が既知生態系とは異なる栄養循環を有している可能性を指摘している。



■世話係選定


通常職員による長時間管理では、

軽度異常が確認された。


主症状:


* 長時間滞在希望

* 果実への興味増加

* 接触欲求


一方、

旧依存者群は極めて安定していた。


そのため中央監査部は、

高依存症状経験者を

《封印庭園》専属世話係として採用。


監視下運用を開始した。



■肥料供給制限


世話係から有機物供給の申請が提出されたが、

中央監査部は、

対象への供給を全面禁止としていた。


異常が発生したのは、

申請却下から一週間後である。


世話係一名が、

巡回職員へ突発的襲撃を実施。


対象は職員を拘束し、

腕部へ刃物を押し当てていた。


制止時、

対象は以下発言を繰り返している。


「肥料が足りない」


「少しくらいなら大丈夫です」


「母樹様が飢えてしまうほうが問題ですよね?」


特筆すべきは、

対象に興奮状態が存在しなかった点である。


記録では、


“当然のことを説明しているようだった”


と報告されている。


その後の調査により、

世話係達が密かに、


* 自身の血液

* 切除肉片


を《飼育樹》へ与えていたことが判明。


中央監査部は協議の末、

制限管理下における

有機物供給を許可。


以後、


* 魔獣肉

* 獣肉

* 有機肥料


の定期供給が実施されることとなった。


供給後、

幼体《飼育樹》は、

根部脈動の安定化を示している。



■研究進展


果実研究は現在も継続中である。


確認済み事項:


* 栄養効率は極めて高い

* 疲労軽減効果あり

* 飢餓耐性向上


しかし、


依存性除去成功例は存在しない。



■依存患者治療記録


依存患者への隔離治療も継続中。


しかし長期摂取者においては、


* 通常食拒絶

* 幻覚症状

* 果実渇望

* 根組織再発


が継続。


摘出済み根組織の再増殖事例も確認されている。


現在まで、

完治成功例は存在しない。



■母体調査結果


《灰化処理作戦》後、

中央監査部は、

未確認母体個体の大規模捜索を実施した。


しかし、


* 巨大母体個体

* 中枢根系

* 大規模群生域


はいずれも発見されなかった。


確認されたのは、

焼却済み残骸および、

既知個体の根片のみである。


現在、

中央監査部内部では、


「そもそも母体個体は存在しなかった」


という新たな仮説も提出されている。



■最終結論


《飼育樹》は、

宿主を喰らう存在ではない。


対象は、

宿主を“養い”、

依存によって共同体を形成し、

自発的奉仕行動を誘導する。


それは捕食ではない。


“飼育”である。



■監査官付記


我々は長らく、

“母体個体”を探していた。


だが最近、

別の可能性を考えている。


そもそも、

母体など存在しなかったのではないか。


あれは、

人間に育てさせることで、

初めて増殖する存在だったのかもしれない。


人間に世話をさせ、

守らせ、

種を運ばせる。


そうして、

次の《飼育樹》を育てていく。


もしそうなら、

我々は最初から、

繁殖行動の一部へ組み込まれていたのかもしれない。


……


こんな仕事をしていると、

酷く疲れた日に、

あの果実を食べてみたくなる時がある。


――中央監査部

第六監査官《シス》



※対象は現在も

《封印庭園》にて収容管理中。


果実利用研究および依存症例治療は継続中である。


次回投稿 本日21:00

06-1.【帰還待ち】── お帰りなさいませ

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