05-3.【飼育樹】── 焼却
《異常存在記録報告書:A-E/No.005-3》
識別仮称:《飼育樹》
村民仮称:“母樹様”
分類:生態侵食型植物異常
収容状況:封鎖焼却指定
危険等級:第一等級
管轄:国連総合ギルド 異常存在管理局(中央監査部)
閲覧制限:特級閲覧指定
⸻
■第三記録:灰化処理作戦(転)
⸻
■危険性再評価
《飼育樹》確認後、
中央監査部は緊急協議を実施。
対象は単なる依存性植物ではない。
確認された異常性は、
* 宿主身体侵食
* 集団依存形成
* 労働力運用
* 流通拡散
* 生態系侵食
にまで及んでいた。
中央監査部は本件を、
「文明侵食型植物異常」
として正式指定。
確認済み個体群に対する、
焼却処分方針を決定した。
⸻
■灰化処理作戦
作戦名:《灰化処理作戦》
投入戦力:
* 高位探索者
* 焼却術師
* 聖印術士
* 重装護衛兵
総員八十七名。
複数村落への同時焼却作戦が実施された。
⸻
作戦初期、
最も激しく抵抗したのは住民達であった。
確認行動:
* 補給路妨害
* 夜間侵入
* 焼却設備破壊
* 自発的肉壁形成
住民達は武装していたわけではない。
しかし、
対象樹木へ接近しようとする部隊へ、
身体ごと飛び込むように抵抗した。
⸻
■住民拘束
第一次制圧により、
依存住民群の大半は拘束。
複数名が涙を流しながら、
以下発言を繰り返していた。
「母樹様が飢えてしまう」
「お願いです」
「焼かないでください」
当初、
中央監査部は、
住民達を無力化すれば、
作戦は完了可能
と判断していた。
この認識は、
成熟個体焼却直前に覆される。
⸻
■森林異常反応
焼却術式展開直後、
周辺森林内部より大量生物群が出現。
確認対象:
* 野生獣群
* 鳥類
* 大型魔獣
* 魔狼群
* 森林型魔物
特に異常だったのは、
本来縄張り争いを行う魔獣同士が、
互いへの敵対を停止していた点である。
全個体が、
焼却部隊への攻撃を優先していた。
⸻
■観測記録
「森そのものが、
樹を守っていた」
⸻
■第一次焼却成功
激しい抵抗を受けながらも、
討伐隊は成熟個体への着火に成功。
幹部外層の炭化、
枝部崩落を確認。
推定焼却率:
約三分の一。
しかし直後、
全個体が未知反応を示した。
⸻
■花粉散布事案
焼却開始から約十一分後。
成熟個体群は同時開花。
大量の灰白色花粉を周辺一帯へ散布した。
花粉吸入後、
高依存者群に急速な肉体変異が発生。
変異対象には、
* 村人
* 野生獣
* 魔獣
が含まれていた。
⸻
■変異記録
確認された変異特性:
* 皮膚樹皮化
* 血液樹液化
* 骨格硬質化
* 四肢肥大
* 痛覚低下
* 高速止血
さらに変異体は、
火傷・切断後も活動を継続。
一部個体は、
身体内部から根状組織を露出させながら行動していた。
中央監査部は、
変異後対象を
《樹怪個体》
として暫定分類した。
⸻
■交戦記録
「燃えてるのに止まらない!」
「首を落としたぞ!?」
「何でまだ動いてる!?」
「もう、人間じゃない……!」
⸻
■樹怪個体行動分析
特筆すべきは、
樹怪個体群が、
討伐隊への攻撃よりも、
“飼育樹の防衛”
を優先していた点である。
確認行動:
* 火災箇所遮断
* 延焼阻止
* 幹部保護
* 焼却術師への優先攻撃
一部個体は、
全身燃焼状態のまま、
幹部へ抱きつき続けていた。
⸻
■作戦結果
甚大な損害を伴いながらも、
討伐隊は確認済み全個体の焼却に成功。
討伐隊総員八十七名中、
* 死亡:四十一名
* 重度植物侵食:十八名
* 行方不明:九名
を記録。
焼却後、
森林異常活動は一時的沈静化を示した。
⸻
■残骸調査
焼却区域調査中、
複数の樹怪個体残骸が、
円状に重なるよう倒れている箇所を確認。
全個体は、
中心部を庇うような姿勢で固定されていた。
内部調査の結果、
中心部より、
未燃焼状態の種子一個を回収。
種子は、
微弱な脈動反応を継続していた。
中央監査部は当初、
当該種子を
「未確認母体個体へ接続された増殖核」
である可能性が高いと判断。
西方森林深部への追加調査を決定した。
⸻
■危険性再定義
本件により、
《飼育樹》は単なる植物型異常ではないことが判明した。
対象は、
* 宿主改変
* 生態系統合
* 集団防衛
* 自己増殖
を段階的に実施している。
中央監査部は本件閲覧制限を、
特級閲覧指定へ変更。
焼却区域の永久封鎖を決定した。
⸻
■監査官付記
焼却後、
樹怪個体達は既に停止していた。
だが、
その腕だけは最後まで種子を覆うよう固定されていた。
命令だったのか。
本能だったのか。
あるいは、
もっと単純な理由だったのか。
村人達は最後まで、
「母樹様」
と呼んでいた。
我々は、
あれを寄生と呼んでいる。
だが、
あの光景だけを見るなら。
親を守ろうとした子供達にも見えた。
それが最も理解したくない結論だ。
――中央監査部
第六監査官《シス》
⸻
※本報告は「転」段階記録である。
現在、
回収種子の収容管理、
および西方森林深部における追加調査が継続中である。
なお、
未確認母体個体の存在については、
現時点で確認されていない。
次回投稿 明日20:00
05-4.【飼育樹】── 収容庭園




