04-3.【泥塑師】── 創作災害
《異常存在記録報告書:A-E/No.004-3》
識別仮称:《泥塑師》
分類:創作型広域災害
収容状況:封鎖監視指定
危険等級:特級指定
管轄:国連総合ギルド 異常存在管理局(中央監査部)
閲覧制限:第一閲覧指定
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■第三記録:創作災害(転)
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■継続発生記録
グランツ事案以降も、
泥塑事案は各地で継続発生。
当初確認されていたのは、
* 山岳廃村
* 坑道跡地
* 地下墓地
など、
人の少ない封鎖地域が中心だった。
しかし、
その後の発生地点は徐々に変化。
* 街道沿い宿場町
* 小規模交易集落
* 外縁農業都市
など、
より人口密度の高い地域へ移行していった。
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中央監査部は当初、
対象が人間活動を避けている可能性を想定していた。
だが、
現在ではその推測は否定されつつある。
発生地点に共通する明確な地理条件は存在しない。
ただし、
現在まで確認された全事例において、
「発生前日に降雨が確認されている」
という共通点が存在する。
中央監査部気候解析班は、
降雨と泥塑事案の関連性を調査中。
しかし、
直接的因果関係は未解明。
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■対抗・封鎖実験
中央監査部は、
泥の手に対する複数の封鎖・拘束実験を実施。
確認された試行内容:
* 聖印封鎖
* 高位拘束術式
* 地下隔離
* 水没封印
* 魔力遮断結界
* 高熱焼却処理
結果:
いずれも失敗。
泥の手は、
封鎖内部・壁面・水面などから再出現。
完全拘束には至っていない。
また、
創作工程中への干渉行為は、
追加出現を誘発する危険性が高いことも判明。
以後、
中央監査部は、
「創作中の対象へ直接干渉してはならない」
との通達を発令した。
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■現行生存指針
現在確認されている唯一の対策は、
以下のみである。
“トプンという液体音が三回聞こえる前に、
その場から離脱すること”
三回目以降、
泥の手出現率は急激に上昇。
また、
出現後の逃走成功例は極めて少ない。
高位斥候職、
強化騎士、
高速移動術師による離脱も複数失敗している。
現在確認されている生還者の多くは、
単に“選ばれなかった者”だった。
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■レイヴェル事案
記録番号A-E/004-39。
《ザガン新王国》王都近郊都市にて、
当時最大規模の泥塑災害が発生。
生存者証言:
「石畳が沈んで見えた」
「街全体が波打ってた」
「音が近づいてきた」
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■都市部創作記録
レイヴェル事案では、
過去最大規模となる作品群を確認。
確認作品例:
《牙を抱く母》
女性群体融合構造。
遠距離観測時、
巨大な獣頭部に類似したシルエットを形成。
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《王の騎行》
騎士と軍馬の融合群像。
脚部構造が完全混合していたにも関わらず、
疾走姿勢を維持。
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《連結児童群像》
複数児童による円環状融合構造。
全体が呼吸するように微弱脈動を継続。
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■被害状況
レイヴェル封鎖解除時点における被害は以下。
* 粘土化被害者:二百名以上
* 行方不明者:多数
* 確認作品数:八十七
* 都市機能:一部停止
本件を受け、
《泥塑師》危険等級は、
“第一等級”
から
“特級指定”
へ昇格。
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■作品流通事案
レイヴェル事案後、
回収作品の一部が闇市場へ流通。
貴族層および違法蒐集家による、
高額取引疑惑が浮上した。
押収作品例:
《泣く聖女》
女性像。
顔面より断続的に泥状涙を流し続ける。
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《六腕の楽団》
複数人体融合群像。
接近時、
微弱な呼吸音を確認。
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《王を抱く獣》
複数人体による大型融合群像。
巨大獣が人間を抱え込むようなシルエットを形成。
内部より、
複数心拍反応を確認。
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なお、
現在まで、
作品自体に認識汚染・精神干渉は確認されていない。
しかし、
複数調査員が、
「嫌悪感と同時に、
異様な完成感を覚える」
と証言している。
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■出現傾向変化
レイヴェル事案後、
中央監査部は都市部への継続出現を警戒。
大規模避難計画および降雨監視網を構築した。
しかし、
泥塑事案は突如として都市部から消失。
その後確認されたのは、
* 森林地帯
* 山岳区域
* ダンジョン内部
* 高濃度魔物生息域
などで発見された、
異常彫刻群であった。
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■魔物作品群
後続調査により、
泥の手は人間だけでなく、
魔物を素材として使用し始めた可能性が浮上。
確認作品例:
* ワイバーン翼部を利用した大型群像
* 多数魔狼による円環構造
* 巨大蛇型魔物を絡ませた柱状作品
* オーガ複数体の融合彫刻
これらは、
初期作品群と比較し、
明確な構造変化を示していた。
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■芸術解析班報告
芸術解析班は、
最新作品群について以下を報告。
「初期作品とは比較にならない完成度」
「空間構造・遠近配置・素材利用、
全てが向上している」
「作品が、
“成長”しているように見える」
「まるで、
学習しているように」
特に、
大型魔物作品では、
* 遠近法利用
* 群像配置
* 骨格構造利用
* 空間全体を用いた構図形成
など、
初期作品には存在しなかった高度芸術性を確認。
中央監査部は現在、
「対象は、
より高度な作品制作のため、
素材を変化させた可能性」
について調査を継続している。
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■暫定結論(転)
《泥塑師》は、
単なる殺傷型異常存在ではない。
それは、
素材を選定し、
加工し、
“作品”として完成させる。
そして現在、
その作品規模・構造・芸術性は、
継続的に向上している。
対象の最終目的は依然不明。
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■監査官付記
回収作品群に、
認識汚染・精神干渉は確認されていない。
少なくとも、
現在の解析結果では。
だが、
長時間観察した調査員の一部は、
奇妙な証言を残している。
「吐き気がするのに、
目が離せなかった」
「理解できないのに、
完成されていると思った」
私自身、
最新の魔物群像記録を確認中、
ある瞬間から、
“構図の美しさ”
について考えている自分に気付いた。
本来、
あれは人間と魔物を捏ね合わせた異常物体だ。
美しいと思う理由など、
あるはずがない。
それでも、
一度そう感じてしまった。
認識汚染ではない。
精神干渉も検出されていない。
では、
なぜ私はそう感じたのか。
作品には本当に、
危険がないのだろうか。
――中央監査部
第六監査官《シス》
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※本報告は「転」段階の記録である。
次段階(結)では、《泥塑師》本体と推定される巨大構造物に関する調査記録を統合予定。
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