04-2.【泥塑師】── 泥の手
《異常存在記録報告書:A-E/No.004-2》
識別仮称:《泥塑師》
分類:創作型異常
収容状況:継続監視指定
危険等級:第一等級
管轄:国連総合ギルド 異常存在管理局(中央監査部)
閲覧制限:第二閲覧指定
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■第二記録:初回実体観測(承)
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■第二事件発生
ローデ村事案から六日後。
《西方辺境諸侯領》北部山岳地帯、
廃鉱集落にて同様事件が発生。
確認された被害内容はローデ村事案と高度に一致。
* 生物の粘土状変質
* “作品”化された遺骸
* 微弱生体反応
* 液体音に関する共通証言
などが共通して確認された。
これを受け、
中央監査部は本件を単発異常ではなく、
継続型異常災害として再分類。
ベルド冒険者ギルドおよび中央監査部合同調査隊を派遣した。
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■調査方針
調査隊は、
以下の情報収集を優先。
* 発生条件
* 加害存在確認
* 変質過程観測
* 被害発生時刻
なお、
調査開始時点においても、
加害存在の姿は依然確認されていない。
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■共通証言
複数生存者より、
以下の共通証言を確認。
「トプン……って音がした」
「その後、
叫び声が聞こえて」
「ぐちゃぐちゃ音が、
ずっと続いてた」
また、
被害発生時には、
“地面が波打つ感覚”
を覚えたとする証言も確認されている。
ただし、
地盤変動自体は未観測。
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■第一次実体観測
記録番号A-E/004-21。
北部廃鉱集落封鎖中、
監視員三名が異常存在そのものを観測。
監視記録抜粋:
「また、この音だ」
「何だ……これ?」
「地面が揺れた!?」
「違う……沈んでる」
「波打って――」
「手が……!」
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■観測対象概要
確認された存在は、
泥状物質で構成された“手”であった。
形状自体は人間の腕部に近似。
しかし、
* 指が異常に長い
* 関節数が一致しない
* 表面が常時流動している
など、
明確な異常構造を有していた。
対象は、
地面より浮上するように出現。
発生時、
物理的破壊痕は一切存在しなかった。
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■第一次犠牲記録
監視員ラド=フェインが、
対象に捕縛された。
泥の手は床面より出現。
直後、
対象の右足首を掴んだ。
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変質経過記録:
一秒後:
右脚泥化開始。
二秒後:
腰部到達。
三秒後:
胸部まで変質。
四秒後:
顔面到達。
五秒後:
全身完全変質。
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対象は悲鳴を上げながら抵抗。
しかし、
進行阻止には失敗。
防御術式、
強化術式ともに効果なし。
物理的干渉時、
対象表面は液体のように波打つのみであった。
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■干渉記録
監視員デルク=ロアンは、
捕縛解除を試み、
泥の手へ斬撃を実施。
結果:
剣は対象を通過。
対象に損傷なし。
監視員デルクは、
「効いていない…!?」
という言葉を発している。
また、
泥の手側も攻撃へ反応を示さなかった。
しかし次の瞬間、
新たな泥の手が壁面より出現。
デルク=ロアンを拘束した。
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監視記録では、
追加出現した泥の手について、
「最初からそこにいたんじゃない…
今浮き出てきたようだった」
と表現されている。
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■創作工程観測記録
変質完了後、
泥の手は二名の加工を開始。
生還した最後の監視員一名は、
至近距離から創作工程を観測している。
「……捏ねていた。
二人まとめて」
「押し込んで…引き伸ばして」
「混ぜてた」
泥の手同士は、
互いへ素材を押し込むように作業を継続。
腕部が胴体内部へ沈み込み、
別の位置から指が形成される様子も確認された。
監視員記録によれば、
創作中、
泥の手は周囲へ一切反応を示さなかった。
「こっちなんて見てなかった」
「最初から最後まで、
作品しか見てなかった」
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■作品化後状態
完成作品には以下の特徴が確認された。
* 二名分の顔面構造が露出
* 腕部構造の異常重複
* 関節方向の崩壊
* 微弱脈動継続
* 発声反応残留
また、
加工中、
対象らしき発声が断続的に確認されている。
「やめ……」
「ああ……」
「いた……」
「ちが……」
創作終了後、
泥の手は液状化するように消失した。
生還した監視員は、
後の事情聴取において、
以下を繰り返し証言している。
「逃げられたんじゃない」
「選ばれなかっただけだ…」
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■追加調査結果
以後、
中央監査部は継続調査を実施。
複数犠牲を伴う観測の結果、
以下の特徴が判明している。
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■確認事項
複数事例の比較により、
泥の手は液体音発生後に高確率で出現することが判明。
特に、
三回目の音以降、
実体出現率が急増する傾向が確認されている。
また、
出現地点は地面に限定されない。
* 壁面
* 木床
* 天井
* 水面
などからの出現事例を確認。
創作中、
対象は周囲への関心を極端に低下。
干渉時には追加出現が発生した事例も確認されている。
さらに、
加工精度には個体差が存在し、
作品構造には明確な芸術的傾向が見られる。
調査班は以下の可能性を提示。
「泥の手は、
単なる捕食行動を行っているわけではない」
「ただ制作しているだけだ」
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■追跡調査
グランツ事案終息後、
泥の手出現は停止。
しかし五日後、
西部森林地帯にて新規泥塑事案が発生。
以後も、
* 村落
* 坑道跡地
* 地下墓地
* 街道沿い集落
など、
離れた地点で同様事件が断続発生。
中央監査部は、
各地に出現する泥の手について、
* 同一個体説
* 群体説
* 本体別存在説
など複数仮説を提示。
しかし現在まで、
確定には至っていない。
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■暫定結論(承)
《泥塑師》は、
単純な殺傷型異常存在ではない。
それは対象を変質させ、
加工し、
“作品”として完成させる。
確認された行動には、
捕食効率・縄張り形成との関連性が見られない。
現在、
中央監査部は本件を、
「創作型異常災害」
として再分類する方向で協議を開始している。
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■監査官付記
各地で確認された作品群を比較した結果、
初期事案より、
構造規模が拡大している可能性が浮上している。
単独人体のみだった作品は、
やがて複数融合構造へ変化。
最近確認された作品には、
家畜・人間・魔獣を同時使用した例も存在する。
また、
発生地点も、
* 辺境村
* 小規模集落
* 廃鉱区域
から、
より人口密度の高い地域へ移行しつつある。
もし、
対象がより大きな作品を求めているのだとしたら。
次に現れる場所は、
人が多い場所になる。
――中央監査部
第六監査官《シス》
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※本報告は「承」段階の記録である。
次段階(転)では、都市部における大規模泥塑災害記録を統合予定。
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04-3.【泥塑師】── 創作災害




