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異常存在記録《AER》~怪異の発見、調査、封鎖、そして失敗~  作者: SN


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14/27

04-2.【泥塑師】── 泥の手

《異常存在記録報告書:A-E/No.004-2》


識別仮称:《泥塑師》


分類:創作型異常

収容状況:継続監視指定

危険等級:第一等級

管轄:国連総合ギルド 異常存在管理局(中央監査部)

閲覧制限:第二閲覧指定



■第二記録:初回実体観測(承)



■第二事件発生


ローデ村事案から六日後。


《西方辺境諸侯領》北部山岳地帯、

廃鉱集落グランツにて同様事件が発生。


確認された被害内容はローデ村事案と高度に一致。


* 生物の粘土状変質

* “作品”化された遺骸

* 微弱生体反応

* 液体音に関する共通証言


などが共通して確認された。


これを受け、

中央監査部は本件を単発異常ではなく、

継続型異常災害として再分類。


ベルド冒険者ギルドおよび中央監査部合同調査隊を派遣した。



■調査方針


調査隊は、

以下の情報収集を優先。


* 発生条件

* 加害存在確認

* 変質過程観測

* 被害発生時刻


なお、

調査開始時点においても、

加害存在の姿は依然確認されていない。



■共通証言


複数生存者より、

以下の共通証言を確認。


「トプン……って音がした」


「その後、

 叫び声が聞こえて」


「ぐちゃぐちゃ音が、

 ずっと続いてた」


また、

被害発生時には、


“地面が波打つ感覚”


を覚えたとする証言も確認されている。


ただし、

地盤変動自体は未観測。



■第一次実体観測


記録番号A-E/004-21。


北部廃鉱集落封鎖中、

監視員三名が異常存在そのものを観測。


監視記録抜粋:


「また、この音だ」


「何だ……これ?」


「地面が揺れた!?」


「違う……沈んでる」


「波打って――」


「手が……!」



■観測対象概要


確認された存在は、

泥状物質で構成された“手”であった。


形状自体は人間の腕部に近似。


しかし、


* 指が異常に長い

* 関節数が一致しない

* 表面が常時流動している


など、

明確な異常構造を有していた。


対象は、

地面より浮上するように出現。


発生時、

物理的破壊痕は一切存在しなかった。



■第一次犠牲記録


監視員ラド=フェインが、

対象に捕縛された。


泥の手は床面より出現。


直後、

対象の右足首を掴んだ。



変質経過記録:


一秒後:

右脚泥化開始。


二秒後:

腰部到達。


三秒後:

胸部まで変質。


四秒後:

顔面到達。


五秒後:

全身完全変質。



対象は悲鳴を上げながら抵抗。


しかし、

進行阻止には失敗。


防御術式、

強化術式ともに効果なし。


物理的干渉時、

対象表面は液体のように波打つのみであった。



■干渉記録


監視員デルク=ロアンは、

捕縛解除を試み、

泥の手へ斬撃を実施。


結果:


剣は対象を通過。

対象に損傷なし。


監視員デルクは、

「効いていない…!?」

という言葉を発している。


また、

泥の手側も攻撃へ反応を示さなかった。


しかし次の瞬間、

新たな泥の手が壁面より出現。


デルク=ロアンを拘束した。



監視記録では、

追加出現した泥の手について、


「最初からそこにいたんじゃない…

 今浮き出てきたようだった」


と表現されている。



■創作工程観測記録


変質完了後、

泥の手は二名の加工を開始。


生還した最後の監視員一名は、

至近距離から創作工程を観測している。


「……捏ねていた。

 二人まとめて」


「押し込んで…引き伸ばして」


「混ぜてた」


泥の手同士は、

互いへ素材を押し込むように作業を継続。


腕部が胴体内部へ沈み込み、

別の位置から指が形成される様子も確認された。


監視員記録によれば、

創作中、

泥の手は周囲へ一切反応を示さなかった。


「こっちなんて見てなかった」


「最初から最後まで、

 作品しか見てなかった」



■作品化後状態


完成作品には以下の特徴が確認された。


* 二名分の顔面構造が露出

* 腕部構造の異常重複

* 関節方向の崩壊

* 微弱脈動継続

* 発声反応残留


また、

加工中、

対象らしき発声が断続的に確認されている。


「やめ……」


「ああ……」


「いた……」


「ちが……」


創作終了後、

泥の手は液状化するように消失した。


生還した監視員は、

後の事情聴取において、

以下を繰り返し証言している。


「逃げられたんじゃない」


「選ばれなかっただけだ…」



■追加調査結果


以後、

中央監査部は継続調査を実施。


複数犠牲を伴う観測の結果、

以下の特徴が判明している。



■確認事項


複数事例の比較により、

泥の手は液体音発生後に高確率で出現することが判明。


特に、

三回目の音以降、

実体出現率が急増する傾向が確認されている。


また、

出現地点は地面に限定されない。


* 壁面

* 木床

* 天井

* 水面


などからの出現事例を確認。


創作中、

対象は周囲への関心を極端に低下。


干渉時には追加出現が発生した事例も確認されている。


さらに、

加工精度には個体差が存在し、

作品構造には明確な芸術的傾向が見られる。


調査班は以下の可能性を提示。


「泥の手は、

 単なる捕食行動を行っているわけではない」


「ただ制作しているだけだ」



■追跡調査


グランツ事案終息後、

泥の手出現は停止。


しかし五日後、

西部森林地帯にて新規泥塑事案が発生。


以後も、


* 村落

* 坑道跡地

* 地下墓地

* 街道沿い集落


など、

離れた地点で同様事件が断続発生。


中央監査部は、

各地に出現する泥の手について、


* 同一個体説

* 群体説

* 本体別存在説


など複数仮説を提示。


しかし現在まで、

確定には至っていない。



■暫定結論(承)


《泥塑師》は、

単純な殺傷型異常存在ではない。


それは対象を変質させ、

加工し、

“作品”として完成させる。


確認された行動には、

捕食効率・縄張り形成との関連性が見られない。


現在、

中央監査部は本件を、


「創作型異常災害」


として再分類する方向で協議を開始している。



■監査官付記


各地で確認された作品群を比較した結果、

初期事案より、

構造規模が拡大している可能性が浮上している。


単独人体のみだった作品は、

やがて複数融合構造へ変化。


最近確認された作品には、

家畜・人間・魔獣を同時使用した例も存在する。


また、

発生地点も、


* 辺境村

* 小規模集落

* 廃鉱区域


から、

より人口密度の高い地域へ移行しつつある。


もし、

対象がより大きな作品を求めているのだとしたら。


次に現れる場所は、

人が多い場所になる。


――中央監査部

第六監査官《シス》



※本報告は「承」段階の記録である。

次段階(転)では、都市部における大規模泥塑災害記録を統合予定。

次回投稿 本日21:00

04-3.【泥塑師】── 創作災害

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