表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異常存在記録《AER》~怪異の発見、調査、封鎖、そして失敗~  作者: SN


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/60

04-1.【泥塑師】── 泥の彫刻事件

《異常存在記録報告書:A-E/No.004-1》


識別仮称:《泥塑師》


分類:変質型異常

収容状況:収容不能

危険等級:第一等級

管轄:国連総合ギルド 異常存在管理局(中央監査部)

閲覧制限:第二閲覧指定



■概要


本報告書は、

《西方辺境諸侯領》ベルド辺境伯管轄下《ローデ村》にて発生した、

大規模人体変質事件の初期記録である。


事件発生後、

村内部では複数住民および家畜が、

粘土状の“彫刻”へ変質した状態で発見された。


発生原因、

変質原理、

加害存在の有無は現在も不明。


本件は通常災害を逸脱した異常案件として、

中央監査部管理下へ移行された。



■第一記録:泥の彫刻事件(起)



■事件発生


異変が確認されたのは、

降雨翌日の早朝だった。


《ローデ村》住民が、

広場中央に存在する異常物体を発見。


当初、

村民たちは誰かが彫刻を置いたものと認識していた。


しかし接近後、

それが前日まで生存していた村民であると判明。


村内部は即座に混乱状態へ移行した。



■中央広場の状況


広場中央には、

成人男性を模した等身大彫刻が配置されていた。


全身は灰色の粘土状物質へ変質。


しかし、


* 爪

* 指紋

* 歯列

* 皮膚皺


などは異常な精度で保存されていた。



対象の首部は、

通常人間の二倍近い長さへ引き延ばされていた。


にも関わらず、

皮膚構造に破綻は確認されていない。



両腕は、

喉を掻きむしる姿勢のまま捻転。


指先は胸部へ深く食い込む形で固定されていた。


顔面には、

苦悶とも歓喜とも判別不能な表情が保存されていた。



眼球のみ、

異常な湿潤状態を維持していたことが記録されている。



■追加作品群


その後、

村内部各地で同様の彫刻を多数確認。


主な発見地点:


* 民家内部

* 家畜小屋

* 納屋

* 井戸周辺


確認された作品には、


* 四肢を逆方向へ折り曲げられた人物

* 家畜と人間が融合した造形

* 人間同士を抱擁姿勢のまま癒着させた群像


などが含まれていた。


調査隊記録では、


「村全体が展示場のようだった」


と表現されている。



■ベルド冒険者ギルド調査隊到着


事件発生から三日後。


ベルド冒険者ギルド所属調査隊七名がローデ村へ到着。


到着時点で、

追加被害は確認されなかった。


また、

加害存在らしきものも未確認。



調査隊記録では、

村内部について以下の記述が残されている。


「静かすぎた」


「誰も外へ出ていなかった」


「村だけが残っていた」



■生存者状況


確認できた生存者は十一名。


多くは家屋内部へ閉じこもっていた。


共通して以下の状態を示している。


* 極度の震え

* 発声拒否

* 耳塞ぎ

* 睡眠障害

* 強い恐怖反応



理由を問われた住民は、

震えながら以下を証言している。


「耳から離れないんだ」


「あの叫びと、

 何かを捏ねるぐちゃぐちゃ音が……」


また、

一部住民は以下を証言。


「トプン……って音がした」


「泥に石を落としたみたいな音だった」



■神父エルム手記(抜粋)


村教会所属神父エルムは、

事件発生後、

独自に犠牲者確認を実施。


その際の手記が回収されている。


「助けを求める声が聞こえた」


「祈ってはいけなかった」


「彼らは、まだ苦しんでいた」


「これは死者ではない」



■老薬師バド記録


老薬師バドもまた、

独自に作品群を調査。


以下の特徴を記録している。


* 内部脈動

* 微熱反応

* 未乾燥部位の存在


また、

解体を試みた作品内部から、

未変質の肉組織および骨格構造を確認。


完全な死亡状態ではない可能性が浮上した。



■作品保管記録


なお、

作品群は破壊を禁じられた状態で保管された。


回収作品群は、

ベルド冒険者ギルド地下倉庫へ一時保管。


複数作品より微弱な発声を確認。


「……たす…け」


「……いた……」


なお、

複数生存者は現在も、

断続的な液体音を幻聴している。


「トプン」


音源は未確認。



■初期術式検査結果


回収作品群に対し、

簡易魔術検査を実施。


しかし、


* 呪術反応

* 魔力残滓

* 精神干渉痕

* 降霊痕跡


はいずれも検出されなかった。


「反応が存在しない」


にも関わらず、

生物変質のみが発生している点が問題視された。


これを受け、

ベルド冒険者ギルドは通常案件処理を中断。


中央監査部へ正式報告を提出した。



■暫定結論(起)


現時点において、

変質発生原理および加害存在は未確認。


しかし、


* 人体の粘土化

* 生体反応の残留

* 異常な加工精度

* 芸術作品化傾向

* 原因不明の液体音証言

* 魔術反応の完全欠落


以上の特徴から、

本件は通常魔物・呪術災害を逸脱した異常案件と判断。


中央監査部は、

一連の事件を《泥塑事案》として登録。


後に、

識別仮称《泥塑師》が付与された。



■監査官付記


私は、

回収作品群を直接確認した。


全ての変質個体には、

明確な加工痕が存在する。


偶発的変異ではない。


人体を粘土化した後、

さらに変形処理が施されている。


確認された造形には共通性がない。


苦悶する者。


祈る者。


抱擁する者。


癒着する者。


保存されている感情も、

姿勢も、

統一されていない。


現時点では、


* 芸術作品

* 記録媒体

* 儀式工程


そのいずれであるかも判断できない。


ただ一つ確かなのは、

対象が変質そのものではなく、


“完成形”


へ強い執着を示していることだ。


我々が回収したのは犠牲者ではない。


少なくとも対象は、

そう認識していない可能性が高い。


それが最も厄介だ。


――中央監査部

第六監査官《シス》



※本報告は「起」段階の記録である。

次段階(承)では、《泥塑事案》初回実体観測記録を統合予定。

次回投稿 明日20:00

04-2.【泥塑師】── 泥の手

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ