最終話―ハイタッチ
「ストレス社会マジこえぇ~……」
「同感」
社会人になって半年。
毎日へとへとになりながら、俺たちのために働いてくれていた父さんへの感謝が身に染みる日々。
情けないが、俺はもう挫折しそうだ。
それは俺だけじゃない。同期の長戸なんて、この前『明日会社が爆発してればいいのに』と満面の笑みで言っていた。
そして、会社が近いという理由でよく飲みに行くようになった坂本も、完全に限界を迎えている。
「周りは皆敵、みたいなさぁ? そんな環境でどうして楽しく仕事ができるんだよ。なのに上司の奴、チームワークが大切だからって、休日に皆でボーリングに行くぞとか言い出すんだぜ?」
坂本は居酒屋の机に頭を突っ伏した。
「マジKY! 強制参加とかありえなくない?」
「ないなぁ。せっかくの休みなのに最悪じゃん」
「だろぉ? あ~、憂鬱すぎる……」
坂本は脱ぎ捨てたスーツの上着を抱きしめ、机に頬を預けている。
みっともない光景だが、気持ちは痛いほど分かるから多めに見たい。
「あーあ、なんか良いことないかねぇ……」
「良いこと、ね。例えば?」
「宝くじで十億当たるとかさ」
「無理だな。そもそも、宝くじの最高金額より上だし」
「だよね~……」
くしゃりとスーツに顔を埋めてしまう坂本。
そんな俺たちの重苦しい空気の中に、鈴の鳴るような声がすっと割り込んできた。
「では――可愛い女の子に会う、というのはどうでしょうか?」




