6話―05
違う。根本が違う。
山田の中でいつから俺がロリコン扱いされていたのか……。気になるけど、聞きたくない。
「大丈夫ですよ! 伊藤さんの趣味がなんであれ、そんなの関係ないですから!」
元凶が何を言う…!!
バス停に人がいないのが唯一の救いだな。
「……伊藤さん」
もうすぐ"さようなら"をするからか彼女の声が少し切なく感じた。
「ん? 何?」
「やっぱり良いです」
いやいや、そう言うの気になるから。
「山田」
「なんですか?」
「やっぱり良いや」
「なんですか? 気になります」
むぅと山田は眉根を寄せた。
「俺、さっきそう言う心境になったんですけど」
「……」
山田はバツが悪そうに顔を背けた。
「……伊藤さんは」
山田は困ったような顔でこっちに顔を戻した。
「私と知り合った事を、後悔していますか?」
へ?
……ずるいだろ、そんなの。
そんな風に言われたら誰だって“後悔してる”なんて言えないよ。
いや、元から言う気はないけど。
「いや」
「伊藤さん……」
「山田を家に上げたのは後悔してるけどね」
「伊藤さん!」
ニヤっと笑った俺に山田はからかわないで下さい!と、膨れっ面を寄こした。
この顔を見るのも最後なのかと思うと、山田の手首を思わず掴んでしまった。
「伊藤さん?」
不思議そうに小首を傾げる山田。その無垢な瞳を見ていると、情けない感情が溢れそうになる。
今日で終わり? 冗談じゃねえ。町長になれる情報だか何だか知らないが、そんなもん調べたらさっさと自分の星に帰るのかよ。
「お前……本当に、行くのか?」
掴んだ手に、じわりと力がこもる。
「俺の家に上がり込んで、家族と仲良くなって……俺の日常をめちゃくちゃにしといて、笑顔でバイバイなんて、勝手すぎるだろ」
声が震えた。ダサい。めちゃくちゃに格好悪い。 だけど、これが俺の精一杯の足掻きだった。
山田は驚いたように目を見開いたあと、掴まれた自分の手首を見つめ、それから……びっくりする程俊敏な動きで鞄の中を漁り始めた。
「……何してるの?」
俺の神妙さ返してくれる?
「ちょっと捜し物を……」
顔を上げずにガサゴソしながら答えている。
気づけばもう、バスはすぐそこまで来ていた。
「出てきました!」
「ん?」
山田が俺に向けてきたのは花だった。




