6話―思い告げ草
山田と出会って今日で七日目。つまり今日、山田は飛び立つ。
日本をなのか、地球をなのかは分からないけど。
そんでもって、今彼女が何をしているのか俺は知らない。
「伊藤くん」
綺麗な女性の声で我へとかえる。
「先生の事嫌いなの?さっきから窓の外の雲ばかり見ているけれど」
「いえ、英語が嫌いなだけです」
そう、俺が、山田が今どうしているのか知らない理由は学校に来ているからだ。
ただそれだけ。単純な理由。
◇
キーンコーンカーンコーン
「伊藤ちゃん、さっきのは良かったよ~」
それ、確実に褒めてないよな。
長戸は教科書の上に頬を付けてにまにまとこっちを見てる。
「芸人目指してる訳じゃないから、その言葉は嬉しくないよ」
「え? 目指してないの? 初耳だよ~」
目指しませんっていちいち宣言する奴がいるかよ。
「ってかさ~、早くご飯食べにいこ~よぉ。お腹空いっちゃったよ」
長戸って、山田並みに自由だな。
「うん。あっ!孝広」
「ん?」
おっ、ほんとだ。
長戸が指す所に坂本さんがいた。
「チャオ~」
坂本さんは腰に付けたシルバーアクセサリーを、ジャラジャラ言わせながら俺らの方に歩いて来た。
「孝広も一緒にご飯食べよう?伊藤ちゃん良いよね?」
「うん」
ここで嫌だって言う奴はないくないか?
「マジで?じゃあ邪魔させてもらっちゃおうかな?」
坂本さんはポケットに手を入れたまま「食堂も人多いし、秘密の場所で食っちゃわない?」と、悪戯っ子みたいな顔をして言った。
「良いね~」
長戸もにやっと笑った。
そんな訳で、俺らは坂本さんオススメの今はもう使われていない部室で食べる事にした。
「また夷藤君にはごめんなんだけど、今度の曲の話ししても良い?」
昼のパンを齧りながら坂本さんが言う。
「どうぞ」
それBGMにして飯食べるから。
「マジさんきゅ。今度のは珍しく別れる感じの曲にしようかなぁって思うんだけど、どう?」
「別れる?」
「うん、お互い好き合ってる男女が別れるって感じの歌詞のやつ」
「あぁ!そういう別れるね~。良いんじゃない?」
「一応、脳内イメージではさ、全く別の次元の人らが恋するって感じなんだよね」
全く別の次元か……なんでだろう、山田の顔が思い浮かぶなぁ。
「お姫様とナイト的な感じって事?」
「あ~、それっぱい感じ」
……ぷっ。山田に姫はないなぁ。ナイトが失望しそうな姫になりそうだ。




