5話―14
……山田が謝るなんて……明日雪でも降るのかな……?
「その、ですね。伊藤さんとの心の距離?が、離れてしまうと、寒いんです。身体的でなく、精神的に」
……え? これって、どう受け止めれば良いの? どう解釈すれば正しいんだ?
今、俺の脳内は確実に自意識過剰な方向にフルスロットルで加速している。
ドッドッドッと、心臓がうるさい。
あぁもう! どういう意味かちゃんと説明してくれ!
「きっと私は、伊藤さんに嫌われたくないんです」
うわわわわ。そ、そうみたいですね!ど、動悸が……。
「なんだか、お世話になった恩を、仇で返すことになりそうで……」
「……あ、そう。そっちですか」
一瞬で頭が冷えた。いや、うん。分かってたよ。こういうオチだって。誰も期待なんかしてませんよ?
「伊藤さん? どうして謝った後の方が落ち込んでいるんですか?」
「はぁあ? 誰も落ち込んでねぇよ」
「では、どうして拗ねているんですか?」
「拗ねてもねぇ! 」
「伊藤さん」
「あぁ?」
不意に、フニッ、と俺の頬に山田の指が突き刺さった。
「ふふ。引っかかりましたね。一度これをやってみたかったのです」
いたずらっ子のように無邪気に笑う山田に、完全に調子を狂わされる。色んな意味で、俺はこの宇宙人には敵わないらしい。
「……ほら、さっさと案内所で店を聞いて、飯食いに行くぞ」
俺は照れ隠しに山田の手を少し強く引いて、一歩先を歩く。
俺に引かれて山田が「あ、待ってください!」と駆け足になった。
この後、俺たちはハントンライスを美味しく頂き、金沢城を見学して、夕方まで街をぶらぶらと歩き回った。山田言うところの「防寒対策」をしながら……。
――山田がアマルテアに帰るまで、あと、三日。




