5話―13
「ん」
繋いでいない方の手を伸ばし、それとなく髪を取ってやった。
「っ!」
山田は小さく息を呑み、借りてきた猫のようにカチコチに固まった。見る見るうちに、耳まで真っ赤に染まっていく。
「……い、伊藤さん!」
「お、おう!」
何だよ急に。そんな大声出されたらびっくりするだろ。
「恥ずかしいです」
「ん?」
「今のは無性に、恥ずかしいです!」
両手で顔を覆ってジタバタする宇宙人。え? そんなに?
「俺はどちらかと言うと、手を繋いでる方がかずいんだけど」
「なんでですか? 寒さ対策は万人に必要でしょう」
万人ねぇ……。
「……それとも、伊藤さんは手を繋ぐ行為がイヤラシイと……?」
その理論で言うと、さっきの俺の行為がヤラシイみたいじゃん。
「そうじゃないけどさぁ」
「ふ~ん。そうですか」
うわ、出た。久しぶりに見たぞ、あのどうでも良さそうな冷たい目。
「あのなぁ! じゃあ何だ、さっきの俺の行動はヤラシイんか?」
恥ずかしいイコール、ヤラシイではないだろ。
「結論だけ簡潔に述べると、そうなりますよね」
「そうなるの!?」
「背景はきっと薔薇柄ですよ」
「何の話し!?」
「少女漫画のトーンですよ」
何で急に少女漫画?!
「伊藤さんの脳味噌の柔軟性の欠如については、思うところが色々とありますが、今は敢えて何も言わないでおきます」
酷い言われようだ……。
「うん、もう何も言わないで」
もしかして、山田って俺の事嫌い? たまに言葉に棘があるんですけど。
ははっ。ま、良いけどね。
……本当は良くないけど。
「……伊藤さん、寒いです」
「はい?」
風邪でも引いてんじゃね?
「今ほどは言い過ぎました」
山田はマフラーに顎を埋めた。
「ごめんなさい……」




