5話―12
「……いや、普通そこは『男ですか!?』だろ。何だよ『地球人ですか!?』って。言っとくけどな、お前以外ここにいる奴全員地球人だからな!」
つい熱くなってしまったせいで、チラチラと見られている。
「そんな事は……」
「しっ。ちょっと静かにできるか?」
一旦、落ち着こう。
「……それは一時的な発言権の剥奪ですか?」
あぁ、もう、本当に黙れよ!
「いいか、山田? 俺達は浮いている。どうしてか分かるか?」
「……そもそも伊藤さん」
「ん?」
山田は小さく挙手した。
「ドラ○もんではありませんので、私は地面から浮いていません」
山田の星は一体何を教えているんだ?! そもそも二百年前にそのキャラ日本に居なかったよな?!
「伊藤さんは浮いているんですか?」
お前ほどではないよ……。
「はぁ、取り敢えず……」
「はい。取り敢えず?」
山田は俺の手を握ったまま小首を傾げた。
「昼飯を食おうぜ……」
「賛成です! 私、『はんとんらいす』というものが食べたいです!」
出た。金沢が誇るご当地B級グルメ、ハントンライス。
「おっけ。じゃあ、誰かにそれが出そうな店でも聞くか」
「はい!」
お土産屋の店員さんあたりなら詳しいだろう。
「……伊藤さん」
「ん~?」
「もしかして、食べたことがないのですか?」
「……その県で有名なものを、全県民が必ず食べているとは言い切れないだろ」
「つまり……食べたことがないんですね?」
「まぁ、そうとも言うね」
はっきり言ってテレビでの紹介で初めてその存在を知ったよ。
「うふふ~、お揃いですね!」
「え?」
山田はえらい嬉しそうだけど、こういうのも"お揃い"扱いでいいのか?
なんか解釈が独特すぎないか?
「さあ、早く聞いて食べに行きましょう!」
山田は嬉しそうに目を細め、売店が並ぶ方向へと歩き出した。
当然、手を繋いでいる俺も引っ張られるように歩き出す。……が、ふと思った。
これってさぁ、なんか格好悪くないか?
女子の数歩後ろを情けなくついて歩く男子、みたいで。
「伊藤、あのお店で聞きますか?」
「いや、坂を下りきった辺りで聞こう。確かこの坂道にそういう店はなかったはずだから」
そう言って俺は山田の手を引く。
そう、俺が手を引く。
よし、これで、良い感じに……って、違うだろ。
あ~なんか、いつもの俺じゃない気がする。
そもそもなんで手を繋いでるんだっけ?
冷静になったら、めっちゃ恥ずかしくないか、これ。
「や、山田ぁ」
気恥ずかしさに耐えかねて、声をかける。
「はい!」
振り返った山田は、ずるいくらいに眩しい笑顔を浮かべていた。
……クソ、手、外したいってめちゃくちゃ言いにくい。
「……お前、髪、食ってるぞ」
「え?」
山田の柔らかな髪の毛が口元にかかっていた。




