5話―09
「伊藤さんの趣味は訂正されたんですね! それで、正しいです!」
胸を張ってフンスと鼻を鳴らす山田。
……クソ、やっぱり訂正だ。こんな調子に乗る奴を可愛いと言ってしまった過去の自分を全力で殴りたい。
「もとい! 俺よりちょっとパーツの造形が丁寧だからって調子に乗んなよ!」
「断然、言葉のトゲが酷くなっていますよ!?」
「ははは!」
「笑うなんて酷いです!」
いや、だって、山田の表情が可笑しくて、可笑しくて。あんなに目を開いて驚かなくても良いだろう。ほんと、変な奴。
「あっ伊藤さん、ことじろうですよ」
「ん? ことじ灯篭な」
山田の指す方にあの天気とか表示される時の背景なんかに使われることじ灯篭がデンと構えている。
「? そう言ったじゃないですか?」
「いやいやいや、山田は“ことじろう”って言ったじゃん」
「『ことじろう』は『ことじ灯籠』の愛称なのですから、テストの答案なら丸ではありませんか?」
「いや、バツだな。完全に不正解だ」
「ええ~、ケチですね。三角くらいはくれても良いではありませんか」
「くれるわけないだろ」
そんなくだらない言い合いをしながら歩いていると、山田がふと足を止め、すれ違った外国人観光客の背中をじっと目で追った。




