5話―06
「いらっしゃいませ~」
「いらっしゃいました?」
え?
「はい?」
俺とコンビニの店員に見られ、山田は一人であわあわしている。
ほんと何やってんだが。
俺と山田は徒歩二十分かけて最寄のコンビニに立ち寄った。最寄のくせに二十分もかかるのだから、いかにこの辺りにコンビニがないのかが分かる。長戸には『ありえな~い』と笑顔で言われた事もある。
「ちょい、山田」
「はい!」
びしっと俺の方に振り向き彼女は返事をした。
「良い返事だ。だけど、さっきのには返事はいらないから」
しても会釈くらいにしておきなさい。
「ですが、挨拶されたら返事をするのが礼儀なのではないですか?」
ごもっとも。
「でも、お店に入る時はしな~いの」
しかも“いらっしゃいました”ってどんな返事だよ。
「日本人はいつからそんなにドライになったのですか?」
山田は頬を膨らませて不満を露わにする。
「山田は地球人、特に日本人に夢を見すぎ。俺たちだってただの人間だよ」
「ええ~!? その言い方は夢がなさすぎます!」
「事実です!」
「むしゅん……」
ははん。山田を論破してやったぜ。
「……二百年って、ものすごく長い年月なんですね」
唐突に、山田が小さく呟いた。
何気に買い物カゴの中にジャムパンが放り込まれている。油断も隙もない。
「私は二百年前の日本をとても熱心に勉強して、ここに来ました。それなのに……まるでそれが、無意味だったかのように感じるのです」
たまごサンドを手にとった山田の横顔は、いつになくシリアスだった。




