5話 ー観光あっちこっち
「絶好の観光日和ですね!」
「ん〜……」
ねむ……。
「伊藤さん、やる気を出して下さい」
無理ぃ…。
「伊藤さんってば!」
「ん?」
「魂入ってますか?」
……流石にそれは入ってる。
「あのなぁ、今何時だと思ってんだよ」
「思ってるとかではなく、事実、針は現在6時3分を指しています」
「もういい……」
どうもおはようございます伊藤です。
朝早くに叩き起こされ、只今、バス停に向かって徒歩にて行進中……。
はぁ。山田は『絶好の〜』とかぬかしているが、秋のこの時間は薄暗いし冷える。
何をもって彼女がそう言ったのか。ま、宇宙人の考えていることは分からん。
「お前はもっと、地球の常識を慮ると良いと思うよ」
「常識を慮るとか、日本語として変な言葉を言ってしまうような人に言われたくはありません」
かっわいくねぇ!
「もとい! 人を慮ると良いと思うよ」
「? どのようにですか?」
首を傾げる山田。少しは自分で考えようよ。
「普通はね、この時間帯はまだ寝てるもんなの」
「勿体ないじゃないですかっ!!」
間髪入れずに至近距離で反撃された。
何か俺、理不尽じゃない? 質問に答えただけのに、ちょっと怒鳴られちゃってさ。あ~あ、嫌になっちゃう。俺はもっと寝ていたいのに……。
ん? 何か静かだな……お~い、山田さん?
「……」
……え? あれ? なんでそんな顔してるんだよ?
「や、山田?お腹でも痛いのか?」
「違いますよ」
じゃあなんで涙目?
俯いている彼女の目には涙が溜まっていた。




