第54話 最初の仲間
チュウジの話に聞き入るナナとユキ。
「つまらん話じゃったかな」
チュウジが照れくさそうにいうと。
「え?そんなこと無いよ」
「もっと聞きたいよ」
前のめりになる2匹を見てチュウジは続ける。
「では続きを…」
すっかり傷が癒えたわしは老人の家を出た。
老人と一緒にいれば食うにも寝るにも困らない。
他の人間からも守ってもらえる。
じゃが。
わしの生き方はこれではない。
なぜかそう思うようになっておった。
老人から離れる寂しさもあった。
しかしその思いを断ち切り再び”野生”へと飛び込んだ。
また虫やカエルなどを食べながら生きながらえる日々。
外敵との争いも増える。
他の野良猫や野良犬。
タヌキやイタチ。
ハクビシンやカラス。
何度も傷つき逃げたことも多い。
まだ”あの力”の引き出し方も分かっておらんからな。
その代わりニャン法は磨かれておったな。
生きるために。
日々の戦いで徐々に力をつけ自信を持ち始めて。
やがて近隣の猫たちの中では、敵なしと言われるほどになっておった。
子分になりたがる奴らも多くなってきたが。
わしは群れるつもりはなかった。
あの方に会うまではな。
わしは少しずつ元居た地域から離れるように動いていた。
顔が売れるとしがらみも面倒でな。
そんなある日。
初めての土地でゴミ置き場を見つけた。
空腹だったわしは食べ物を探した。
すると。
「見ねえ顔だな」
敵が来たか。
と振り返る。
そこには見た事が無い大きさの猫がおった。
それがタカウジ殿との出会いじゃ。
さすがのわしも一瞬ひるんだ。
明らかにわしより若い。
しかし漂う風格が違う。
今まで出会った猫たちとは。
それは身体の大きさからだけではない。
「オスの三毛か」
「だから何だ」
言い返したわしをじっと見ると
「もしかして」
「あんたチュウジさんか?」
わしを知っていた。
「俺を知ってるのか?」
「ああ」
「近辺じゃだいぶ名が売れてるぜ」
名を売るために戦ってきた訳じゃないが。
こういうのは自然と広がっていくのじゃのう。
「俺の名はタカウジ」
「この地区をまとめようとしている者だ」
「まとめる?」
土地の名すら知らんわしにはそれがどういう事かもわからんかったが。
「ああ」
「猫たちの無駄な争いを無くすんだ」
迷いない堂々とした言葉じゃった。
その時からタカウジ殿に魅かれておったのじゃな。
「俺と一緒に来ないか?」
タカウジ殿もわしに何かを感じたようじゃった。
じゃが。
「仲間は作らねぇ」
「他の者など信用できんからな」
その頃のわしは本気でそう思っておった。
野良猫は皆自分が生きる事で精一杯じゃからの。
「だったら」
「俺が信用できる最初の仲間になる」
わしの目をしかと見て言いよったのじゃ。
これにはわしの心も揺らいだわい。
「すぐじゃなくても良い」
「気が変わったらまた会おう」
そう言って立ち去って行った。
それから数日考えた。
ほぼ心は決まっておったがのう。
そしてある日。
近隣のボス猫との争いが勃発。
わしは苦戦しておった。
相手はなかなかの猛者で簡単には勝てんかった。
そこへ。
「手を貸そうか?」
タカウジ殿が20匹あまりの仲間を引き連れて現れたのじゃ。
さすがに相手の猫もうろたえていた。
「ちょうどこの地区のまとめに動いていた」
「そいつも仲間に加えるべくな」
「チッ」
ボス猫は急いで逃げる。
「追え」
タカウジ殿の一声で20匹が一斉に走り出す。
「フッ。助かったわい」
「腹が減って力が出なかったからな」
わしは安堵し冗談を言うとタカウジ殿は笑いながら。
「返事。もらえるか?」
真っすぐわしを見て言った。
「ああ。もう若くはないがな」
「あんたについていく」
わしもしっかりタカウジ殿を見つめて答えた。
「そうか。ありがたい」
「よろしく頼むぜ」
「おう」
こうしてわしは、タカウジ殿の仲間になった。
この時のわしは、まだ知らなかった。
この出会いが。
やがて多くの猫たちを繋ぎ、
一つの大きな群れを生み出すことになるとはな。
両州キャッツ。
その始まりは、
一匹の老いた三毛猫と、
一匹の若い猫との出会いだった。




