第55話 ニャオスの覚醒
ハグサ山。
息を切らしたハリーとポンズがチュウジを訪れる。
「あれ?」
ナナとユキがいるのに気づきハリーが声をかける。
「何やってんの?」
「チュウジさんの若い頃の話聞いてるの」
ユキが答えると2匹は前のめりになる。
疲れた様子の2匹を見てナナが言う。
「あんた達は何してきたの?」
「そんなに疲れちゃって」
「ハリーと実戦練習してたんだ」
「ポンズが強くてヘロヘロになっちゃったよ」
それを聞きながらチュウジは微笑む。
「熱心じゃの。良いことじゃ」
褒められて少し照れる2匹であったが。
ハリーがチュウジを見ながら。
「その…チュウジさんの話」
「俺達も聞いていいかな?」
チュウジはフッと息を吐き。
「かまわんよ」
「ここからはキャッツ結成とニャオスの話じゃ」
タカウジ殿と合流したわしを待っていたのは。
これまで以上に激しい戦いの日々じゃった。
タカウジ殿の勢力はすでに50匹を超えておった。
それは共に行動している数であって。
実際にはその子分やら枝の勢力を合わせると。
100匹以上になっているとのことじゃった。
わしも始めから10匹ほど預かり各地をまわった。
話し合って済むこともあったが。
多くは戦いになってしまう。
群れで戦うことに慣れるまでは大変じゃった。
連携などとった事がなかったからのう。
しかし慣れてくると仲間意識も芽生えてくる。
部下の1匹にマツという猫がおってな。
元気で真面目なもんで特に目をかけておった。
戦闘力も高く連携もマツから学んだようなもんじゃ。
そのマツにピンチが訪れた。
交渉成立したと思っていた勢力に騙され囲まれてしまったのじゃ。
わしらは遅れてその場に行く約束じゃったが。
マツは10匹相手に奮闘するも。
到着した時にはすでに立っているのがやっとという状態じゃった。
その時じゃ。
あの老人を助けた時の感覚。
時の流れが遅く感じる。
廻りの者の動きがゆっくりしている。
「マツ!今行くぞ!」
わしは無我夢中で相手に飛び込んだ。
一撃。
すべての猫を一撃で倒していった。
マツも他の部下も驚いておったわい。
そしてマツの無事を確認し気を失ったのじゃ。
どれくらい眠っていたかはわからんが。
タカウジ殿と仲間たちに見守られる中で目を覚ました。
「大丈夫か?」
心配するタカウジ殿。
「チュウジさん…マジで凄かったっす」
マツが一部始終を説明したらしい。
「そうか…」
わしを見つめるタカウジ殿からある情報を聞く。
「あんたのその力はおそらく…」
「”ニャオス”というものだろう」
ニャオス?
あの老人が言っていた力の名前か?
「なぁチュウジさん」
「身体が回復したら一緒に行きたいところがある」
それは…ナナ。
お前が行ったあの洞窟じゃ。
タカウジ殿は知っておったのじゃ。
この”ニャオス”という力の事を。
なぜこの地を中心に動いておるのかと思っていたが。
その洞窟があったからなのじゃ。
そしてわしは、その洞窟へ連れていかれた。
「この先は一匹で進んでくれ」
タカウジ殿の言うままに洞窟入る。
中を進むうちに、生まれてから今までの記憶が次々と蘇ってきた。
農家の娘さんたちの事。
その父親の事。
取引にやって来る者たちの事。
助けてくれた老人の事。
犬に襲われニャオスが発動した事。
沢山の争い。
沢山の別れ。
そして仲間たち。
すると。
(誰かを守れる猫になれ!)
(誰かのために怒れる猫になれ!)
あの老人の声がしたんじゃ。
(でも。)
(怒りに飲まれる猫にはなるな。)
(力に使われるような生き方だけはするな。)
その時。
またあの感覚。
時の流れが遅くなり青い光を感じる。
「そうか…」
「ニャオスは…」
「誰かを守るための力…」
そう悟った時。
(それでいい…)
老人の声はそこまでだった。
洞窟を出るとタカウジ殿が一匹で待っておった。
「……そうか。」
「やっぱりな。」
「え?」
「いや……何でもねぇ。」
タカウジ殿はそれ以上何も言わなかった。
「ただ、一つだけ分かった。」
「あんた……もっと強くなれる。」
そう言って微笑んだ。
わしはより一層の精進を重ねて。
タカウジ殿の助けになろうと誓った日じゃった。
そして――。
わしらはさらに多くの仲間と出会っていった。
両州キャッツという名が、少しずつ形になっていったんじゃ。
じゃが。
わしの人生を大きく変える、もう一つの出会いが待っておった。
ハグサ山。
そこでわしは――。
一匹の猫と出会うことになる。




