第49話 リーダーの資質
ハリーの全身に電流が走った。
ニャオスが、はっきりと危険を告げている。
「……子供たちが危ない!」
一瞬、その場が静まり返る。
ミツとカンが顔を見合わせる。
「何だって!?」
「間違いない!」
ハリーは迷わなかった。
「ミツ!」
「ここで全員集まってる場合じゃない!」
「子供たちの所に敵が集まってたらギンジさんも危ない!」
ミツは一瞬考える。
その一瞬が長く感じた。
ハリーは叫ぶ。
「シロ!」
「俺と来て!」
「ハチ公!」
「すぐチュウジさんに伝えて!」
「ユキ!」
「女子供を連れて避難!」
「ナナとキジ子さんはその護衛を!」
次々と指示が飛ぶ。
誰も返事をする暇もない。
体が勝手に動いていた。
「わかりました」
シロが駆け出す。
「任せて!」
ユキ達も女子供のもとへ走る。
「了解です!」
ハチ公は山を駆け上がる。
その様子を見たカンが呟く。
「……自然に皆が動いた。」
ミツも驚いていた。
(俺が指示を出す前に……。)
だが間違ってはいない。
「よし!」
「そのまま行け!」
「俺とカンは別方向を潰す!」
「絶対に孤立するな!」
「はい!」
ハリーとシロは森を駆ける。
風を切る。
その先から聞こえる。
子猫たちの悲鳴。
「いた!」
黒い影。
細長い身体。
鋭い牙。
五匹のイタチが子猫たちへ迫っていた。
「チッ!」
「猫が来たぞ!」
その瞬間。
ハリーが飛び込む。
「やめろーーーっ!!」
体当たり。
一匹を吹き飛ばす。
すぐに二匹目が襲い掛かる。
「ハリー!」
シロの爪が閃く。
敵を引き離す。
しかし。
木の陰からさらに二匹。
「まだいたのか!」
数が多い。
やはり敵の多くはここに集まっていた。
その時だった。
「キャーーッ!」
子猫の一匹が転んだ。
一匹のイタチが一直線に飛び掛かる。
(間に合わない!)
誰もがそう思った。
だが。
ハリーだけは迷わなかった。
ドンッ!!
自分の体を盾にする。
「ぐっ……!」
肩を深く噛まれる。
「ハリー!」
シロが叫ぶ。
それでもハリーは離さない。
「この子には……!」
「指一本……」
「いや!」
「牙一本!」
「触らせるかぁーーー!!」
ハリーのニャオスが弾ける。
強烈な一撃。
イタチは吹き飛ばされた。
そこへ。
「待たせた!」
ミツ。
「こっちは終わった!」
カン。
さらに。
「チュウジ様!」
ハチ公を連れ、チュウジも駆けつける。
形勢逆転だった。
イタチたちは顔を見合わせる。
「ちっ!」
「引くぞ!」
森の奥へ逃げ去っていく。
静寂が戻る。
子猫たちは泣きながらハリーへ駆け寄った。
「ありがとう……。」
「助かったぁ……。」
ハリーはようやく力が抜け、その場に座り込む。
「いてて……。」
肩から血が流れていた。
そこへミツが歩み寄る。
「……悪かった。」
「隊長は俺だった。」
「なのに、お前が先に動いた。」
ハリーは慌てて首を振る。
「そ、そうだよね!」
「勝手に動いて……。」
「ごめん!」
ミツは笑った。
「謝るな。」
「今日、一番正しい判断をしたのはお前だ。」
カンも静かに頷く。
「俺もそう思う。」
シロが微笑む。
「ハリー。」
「今日は格好良かったですよ。」
ハチ公は目を輝かせる。
「ハリーさん!」
「すごいっす!」
照れ臭そうに頭をかくハリー。
その様子を見ていたチュウジが静かに口を開く。
「ハリー。」
「指揮とは命令することではない。」
「仲間を生かすことじゃ。」
「お前は誰よりも先に仲間を守ろうとした。」
「だから皆が自然とついて行った。」
ハリーは黙って聞いている。
チュウジは穏やかに笑った。
「リーダーとは、一番強い者ではない。」
「一番先に仲間のために動ける者じゃ。」
その言葉は、ハリーの胸に深く刻まれた――。




