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まさか!うちのニャンコが?!―伝説を継ぐ者たち―  作者: トネガワ ワタル


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第45話 ドウギ山

 ハグサ山を出発して半日。


 六匹の猫は隣山――ドウギ山を目指していた。


 先頭を歩くのはゾロ。


 その後ろにタカウジ、ポンズ。


 そしてゲン太、レオ、アキュラ。



 山道は静かだった。


 鳥のさえずりだけが響く。


「いやぁ、遠征ってワクワクするなぁ!」


 アキュラは落ち着きがない。


「あっ! あの木デカッ!」


「あっ! キノコ!」


「あっ! あの石、猫の顔に見えね?」


「少し黙れ」


 ポンズの猫パンチが飛ぶ。


「いってぇ!」


 皆が思わず笑う。



 その時だった。


 ガサッ。


 茂みが揺れる。


 大きな影。


 二頭の猪だった。


 立派な牙。


 大きな体。


 鼻息を荒くしながら猫たちを睨みつける。


「……。」


 アキュラが固まる。


「で……でけぇ……。」


 レオも思わず身構える。


「ど、どうします?」


 しかし。


 ゾロは歩みを止めただけだった。


 まるで昔からの知り合いを見るように。


 猪を見つめる。


 静かな睨み合い。


 風だけが流れる。


 やがてゾロが口を開いた。


「よぉ。」


 軽い口調だった。


「俺たちゃ旅の途中なんだ。」


 一歩前へ。


「道、開けてくんねぇか?」


「……。」


 アキュラは思わず叫ぶ。


「な、何言ってんの!?」


 沈黙。


 数秒。


 やがて。


 二頭の猪はゆっくりと体を横へずらした。


 そして背を向ける。


 道が開いた。


「ええぇぇぇぇっ!?」


 アキュラとレオの声が重なる。


「ど、どいてくれた!」


「父ちゃんすげぇ!」


「当たり前だろ。」


 ポンズが呆れ顔で言う。


「昔、山を荒らす大猪を倒したくらいだからな。」


「へぇ~~!」


 アキュラは尊敬の眼差しでゾロを見る。


 本人は頭をかきながら笑っていた。


「いやぁ、昔の話だけどねぇ。」



 その後。


 山で出会う鹿も。


 狐も。


 狸も。


 誰一匹として猫たちを襲うことはなかった。



 やがて。


 山の空気が変わる。


 木々はさらに深く。


 風も冷たい。


 タカウジが呟く。


「……着いたな。」


 ドウギ山。


 猿たちが治める山。


 ゾロの表情も少しだけ引き締まる。


 その頃。


 高い木の上。


 二つの影が猫たちを見下ろしていた。


「来たか。」


「ああ。」


「例の猫たちだな。」


「間違いない。」


 二匹は枝を蹴る。


 シュッ!


 風を切る音。


 猫たちの前へ着地した。


 二匹の猿。


 しなやかな体。


 鍛え抜かれた筋肉。


「……。」


 アキュラは目を丸くする。


(猿だ……。)


 生まれて初めて見る生き物だった。


 一匹が口を開く。


「……お前がゾロか?」


「おう。」


 ゾロが笑う。


「ゴリオンズか?」


「ああ。」


「俺はアクセル。」


 胸を叩く。


「こっちはスラッシュ。」


 隣の猿が軽く手を上げる。


「ついて来い。」


 そう言って歩き始める。


 アキュラは興味津々。


「すげぇ!」


「尻尾長ぇ!」


「木登り速ぇ!」


「筋肉すげぇ!」


「静かにしろ。」


 またポンズの猫パンチ。


「いてっ!」


 アクセルが後ろを振り返る。


「……なんだ、あいつ。」


 ゾロは笑う。


「俺の倅だ。」


「……。」


 アクセルとスラッシュが顔を見合わせる。


「フッ。」


 思わず笑った。


「えっ?」


 ゾロが首を傾げる。


「なんで笑うの?」


「なんで笑うかなぁ?」


 スラッシュが肩を震わせる。


「もしかして……」


「性格、似てる?」


 一瞬静まり返る。


 次の瞬間。


「ガハハハハ!」


 ゾロが豪快に笑った。


「まぁ親子だからな!」


 その横で。


 ポンズが小さく呟く。


「……いや。」


「俺は性格違うぞ。」


 誰にも聞こえないほどの小さな声だった。



 やがて一行は山奥へ。


 木々が開ける。


 そこには――


 岩山を利用して築かれた巨大な集落。


 数え切れないほどの猿たちが暮らす要塞。


 ゴリオンズのアジトだった。

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