第44話 忍びの影
ハグサ山。
タオ区でカラスたちが争っている頃。
猫たちは黙々と修行を続けていた。
ニャオス組。
ハリー。
ナナ。
アキュラ。
三匹は明らかに以前とは違っていた。
動き。
反応。
そしてニャオスの扱い。
まるで鍛えられた刃のように研ぎ澄まされている。
「おいおい」
ポンズが苦笑する。
「もう追いつかれそうじゃねぇか」
「へへーん!」
アキュラが胸を張る。
「未来の最強猫だからな!」
「その前に足元見ろ」
レオが呆れる。
そのレオ自身も急成長していた。
元々才能のあったシロとレオは、今やポンズと並び、互いを追い越そうと競い合う段階に入っている。
チュウジが目を細めた。
「良い」
「力は確実についておる」
「だが――」
「力だけでは勝てん」
その時だった。
サッ。
風が揺れる。
次の瞬間、ゾロの背後に一匹の猫が立っていた。
黒い毛並み。
細い体。
鋭い目。
誰も気配を感じなかった。
「おっ、サスケじゃん」
ゾロが振り返る。
忍びの国――伊州。
その血を引く猫。
諜報部員にして斥候。
情報を集め、敵の動きを探る“影の猫”。
サスケは短く報告した。
タオ区でクロウズとハゲタカが交戦。
ハゲタカはクロウズと敵対。
フリー軍団と共闘。
新たに軍団を結成した。
ゾロの表情が変わる。
「……なるほど」
「なら今のうちだな」
タカウジが頷く。
「ゴリオンズか」
「ああ」
隣山に住む猿軍団。
ゲッコウ猿軍団の紹介で会う予定だった勢力。
クロウズがタオ区で足止めされている今なら、安全に接触できる可能性が高い。
ゾロは立ち上がった。
「よっしゃ、遠征部隊を編成するぞ!」
名前が呼ばれる。
「タカウジ!」
「おう」
「ポンズ!」
「任せろ」
「ゲン太!」
「行くぜ」
「レオ!」
「はい」
そして――
「アキュラ!」
「よっしゃあああ!!」
飛び上がる。
「ついに俺の伝説が始まる!」
「始まる前に落ち着け」
ポンズに頭を叩かれた。
一方、防衛側。
「チュウジを中心に防衛する」
「ミツ、カン。部隊長を頼む」
「おう」
「任せろ」
「ナナ、ユキ、キジ子は待機組」
ナナが少し不満そうな顔をする。
だがチュウジが静かに言った。
「今は守る役目も大事じゃ」
「……分かった」
「ハリー、シロ、ハチ公」
「女子供を守れるよう準備しておけ」
「はい!」
ハチ公の返事は特に大きかった。
その目には迷いがない。
「ギンちゃんはみんなをサポートしてくれ」
「任せとけ」
さらにゾロが振り返る。
「キジ太、モン、チッチ」
三匹が前へ出る。
「お前らはサスケについて行け」
「え?」
「弟子入りだ」
サスケが腕を組む。
「俺は厳しいぞ」
キジ太は元々情報屋。
モンとチッチは並外れたスピードを持つ。
それが修行でさらに磨かれている。
チュウジも頷く。
「適任じゃ」
「これからは戦う者だけでなく、情報を運ぶ者も必要になる」
サスケが歩き出す。
「来い」
「まずは気配を消すところからだ」
「うわぁ……なんか怖ぇ」
モンが小声で言う。
「頑張ろうね兄ちゃん」
チッチが苦笑する。
キジ太は静かに頷いた。
こうして三匹は“影の修行”へ向かう。
そして。
遠征部隊も出発の時を迎えた。
ゾロ。
タカウジ。
ポンズ。
ゲン太。
レオ。
アキュラ。
六匹が山道へ歩き出す。
「ゴリオンズかぁ」
アキュラが空を見上げる。
「猿ってバナナくれるのかな?」
「遊びに行くんじゃねぇんだよ!」
レオが即座に突っ込む。
笑いが起きる。
だが。
誰も知らない。
タオ区で生まれた新たな勢力が、やがてハグサ山の運命を大きく変えていくことを。
風が吹く。
東州と西州。
二つの地で、それぞれの戦いが静かに動き始めていた――。




