第42話 共闘
クロウズのアジト。
誰も口を開かなかった。
空気が重い。
いつも騒がしいモンジですら黙っている。
中央にはアリ。
傷だらけの姿。
兄を失った衝撃は大きかった。
「兄貴は……」
握り締める爪。
「俺のせいで……」
悔しさが滲む。
だが。
「泣き言は聞き飽きた」
冷たい声。
コールディーだった。
アリが顔を上げる。
「負けた事実は変わらん」
「問題は次だ」
黒牙が唸る。
「ハゲタカ……」
「許さん」
羽を震わせるほどの怒り。
「裏切り者が」
「兄弟を殺した」
今にも飛び出しそうな勢いだった。
だが。
コールディーは静かだった。
「感情だけで動くのは良くない」
その一言で黒牙も黙る。
「今は潰す順番を考える」
「タオ区だ」
地図代わりの木の幹を見る。
「フリー」
「ハゲタカ」
「この二つを潰せば西洲は終わる」
モンジが小さく震える。
コールディーが本気になっている。
それが分かった。
「準備しろ」
「総力戦だ」
その言葉にアジト全体が動き始めた。
一方。
タオ区。
フリーの縄張り。
傷の手当てが続いていた。
「助かったな」
部下が言う。
「ああ」
フリーは短く答える。
だが考えている。
ハゲタカのことを。
「……」
しばらく黙ったあと立ち上がる。
「どこ行くんです?」
「探し物だ」
二日後。
岩場。
高台。
そこでハゲタカたちは休んでいた。
「暇ねぇ」
シノが欠伸をする。
「平和ってことだろ」
部下が笑う。
その時。
遠くから羽音。
「ん?」
現れたのは。
フリーだった。
空気が張り詰める。
双方の部下が警戒する。
「何の用だ」
ハゲタカが言う。
「礼を言いに来た」
フリー。
「言ったはずだ」
「助けたつもりはねぇ」
「それでもだ」
しばらく沈黙。
やがてフリーが続ける。
「それともう一つ」
真剣な顔。
「共闘しろ」
その言葉に全員が反応した。
シノも目を丸くする。
ハゲタカは鼻で笑った。
「断る」
即答だった。
「だろうな」
フリーも苦笑する。
「だが聞け」
そして話す。
地獄兄弟。
クロウズ。
コールディー。
西洲全体が狙われていること。
ハゲタカは黙って聞いていた。
「俺は群れるのが嫌いだ」
「知ってる」
「命令されるのも嫌いだ」
「それも知ってる」
「だったら」
ハゲタカが笑う。
「なんで誘った」
フリーも笑う。
「お前なら断ると思った」
「だが」
表情が変わる。
「お前がいないと勝てねぇ」
真っ直ぐな言葉。
ハゲタカは少し驚いた。
そして。
「……馬鹿正直な奴だな」
小さく笑う。
その夜。
ハゲタカは崖の上にいた。
風が吹く。
下では仲間たちが休んでいる。
シノが近づく。
「どうするの?」
「何がだ」
「決まってるでしょ」
ハゲタカは空を見る。
遠く。
クロウズの縄張りの方向。
「……気に入らねぇんだよな」
「何が?」
「コールディーも」
「黒牙も」
静かに言う。
「好き勝手やりすぎだ」
シノは笑う。
「じゃあ答えは出てるじゃない」
ハゲタカは返事をしなかった。
だが。
その目には戦う覚悟が宿り始めていた。
その頃。
クロウズのアジト。
大量のカラスたちが集まっていた。
今までとは桁が違う。
西洲中から集められた戦力。
その中央。
コールディーが翼を広げる。
「出るぞ」
静かな一言。
だが。
その場の全員が震えた。
ついに。
クロウズ最強の男が動き出した。
嵐は。
すぐそこまで来ていた――。




