第38話 強くなる理由
ハグサ山。
朝。
まだ空気は冷たい。
だが訓練場にはすでに猫たちが集まっていた。
「よーし!」
ゾロが伸びをする。
「今日も張り切っていくぞぉ~!」
「軽いなぁ……」
アキュラが呟く。
「師範なんだからもっとこう……」
「威厳とか」
「重厚感とか」
「迫力とか」
「欲しいよな」
「誰の話だ?」
ゾロが振り返る。
「もちろん親父……」
アキュラの口をハリーが塞ぐ。
「何でもないです」
「そうかぁ」
ゾロは気にしていない。
チュウジだけが苦笑した。
ニャオス組。
ナナ。
ハリー。
アキュラ。
ポンズ。
シロ。
ミツ。
カン。
そしてレオ。
「今日の課題は制御じゃ」
チュウジが言う。
「力を出すのは簡単」
「止める方が難しい」
ナナの目が少しだけ真剣になる。
怒り。
ハゲタカとの戦い。
あの時の自分。
思い出す。
「焦るな」
チュウジが言う。
「少しずつで良い」
ナナは頷く。
一方。
「ほぉ」
ゾロがレオを見る。
「面白いな」
レオの周囲。
空気が揺れている。
本人は気づいていない。
だが。
ニャオスが以前より遥かに強い。
シロも気づく。
「確実に伸びていますね」
ポンズも頷く。
「しかも急激に」
レオは首を傾げた。
「そうか?」
「そうだよ」
ミツが言う。
「前はもっと鈍かった」
「誰が鈍いんだ」
小競り合い。
だが。
全員が感じていた。
強くなっている。
確実に。
午後。
再び修行。
ナナ。
目を閉じる。
怒りを思い出す。
だが。
流す。
飲み込まれない。
チュウジが静かに頷いた。
「良い」
「その調子じゃ」
以前より長く維持できる。
以前より冷静でいられる。
ナナも分かっていた。
少しずつ。
本当に少しずつだが。
前に進んでいる。
一方、ニャン法組。
ギンジ。
ゲンタ。
モン。
チッチ。
キジ太。
キジ子。
トラ吉。
ワラビ。
さらには怪我が癒えたハチ公の姿も。
「遅い!」
タカウジの声。
「もう一回!」
全員悲鳴。
「えぇぇぇ!」
トラ吉が倒れる。
「死ぬぅ!」
「まだ生きてるだろ」
タカウジ。
「死んでから言え」
「鬼だ!」
「鬼だこの人!」
ワラビも転がる。
だが。
ハチ公だけは違った。
何度倒れても立ち上がる。
何度転んでも前へ出る。
「おい」
ゲン太が声を掛ける。
「少し休め」
「大丈夫です」
即答。
「強くなりたいんです」
その言葉に。
誰も何も言えなかった。
家族を守れなかった。
あの日の後悔。
それが今のハチ公を動かしていた。
そして時は夕刻。
修行終了。
全員ボロボロ。
だが。
確かな成果があった。
「次は練習試合だ」
タカウジが言う。
ざわつく一同。
「実戦形式だ」
「甘えは許さん」
「げぇ……」
トラ吉が倒れる。
「まだ終わってなかった……」
笑いが起きる。
だが。
その笑顔の裏で。
誰もが感じていた。
ハゲタカの言葉。
自分たちはまだ未熟。
だからこそ。
強くならなければならない。
迫り来る脅威に備えて。
その頃。
遠く離れたタオ区。
黒い翼が夜空を横切る。
地獄兄弟。
そしてクロウズ。
静かに。
だが確実に。
次の戦いの準備を進めていた。
嵐はまだ遠い。
しかし。
その足音は確実に近づいていた――。




