第3話 牙のぶつかり合い
「……負けを知ったか」
チュウジは静かに呟く。
「ならば次は、“どう勝つか”じゃ」
物陰。
三匹は息を整えていた。
「……強ぇな、あいつ」
アキュラが言う。
「当たり前だ」
ナナは短く返す。
「この場所で生きてるってことは、それだけで強い」
ハリーは黙っていた。
「……オレ、一発も通らなかった」
拳を握る。
「悔しい……」
「動きは見えた」
ナナが言う。
「でも、間に合わない」
「じゃあどうすんだよ?」
「ズラす」
短い答え。
「一対一じゃ勝てない」
「三匹で、流れを作る」
ハリーが顔を上げる。
「……できるのか?」
「やるしかない」
「逃げたかと思えば、まだいたか」
ギンジ。
再び現れる。
「今度は逃げねえのか?」
「逃げねえよ」
ハリーが前に出る。
足は震えている。
それでも、止まらない。
アキュラが突っ込む。
「うおおお!」
無茶な動き。
だが――
「チッ」
ギンジの動きが、わずかにズレる。
その瞬間。
ハリーが入る。
受け止める。
「ぐっ……!」
重い。
だが、止める。
「今!」
ナナの声。
位置が変わる。
ギンジの足が一瞬止まる。
視線が揺れる。
流れが崩れる。
ハリーが踏み込む。
全力。
恐怖ごと叩きつける。
「うおおおおお!!」
衝撃。
ギンジが崩れる。
静寂。
誰も動かない。
やがて。
ギンジが、ゆっくりと顔を上げる。
「……なるほどな」
低く笑う。
「さっきとは別物だ」
立ち上がるが、攻撃はしない。
「連携か……」
「……もうやめて」
その声で、空気が変わる。
三毛猫。
ユキ。
その瞬間。
ナナの中で、何かが揺れた。
「……なに、これ」
初めての感覚。
敵でもない。
恐怖でもない。
なのに――
無視できない。
強く、引っかかる。
ユキを見る。
ユキもまた、ナナを見ていた。
風が吹く。
誰も動かない。
ただ、静かに時間だけが流れる。
「……出会いとはな」
チュウジの声が重なる。
「時に、戦いよりも大きく運命を動かす」
目を細める。
「この時、あやつはまだ知らん」
「その違和感が――」
「血の導きだということをな」




