第36話 怒りの檻
翌朝。
ナナはゾロとチュウジの元に向かった。
「修行?」
首を傾げるナナ。
「そうじゃ」
チュウジが頷く。
「お主は強い」
「じゃが今のままでは危険じゃ」
ゾロも真面目な顔になる。
「次に同じことが起きたら」
「敵を倒す前に自分が倒れる」
ナナは黙る。
反論できない。
実際に倒れた。
「ついて来い」
三匹は山奥へ向かう。
辿り着いた先。
古い洞窟。
入口から異様な空気が漂う。
「ここは?」
「昔からニャオスが濃く集まる場所じゃ」
「強い感情が増幅される」
チュウジが説明する。
「中へ入れ」
「一匹でじゃ」
ナナは息を呑む。
だが。
進む。
洞窟の奥。
静寂。
そして。
突然。
景色が変わる。
家を出た日。
寒かった夜。
空腹。
恐怖。
そして。
カラスに虐められる親子。
あの日の光景。
「やめろ……」
怒りが湧く。
目が熱い。
身体が熱い。
「許せない!」
青白い光。
ニャオスが膨れ上がる。
だが。
その瞬間。
「だからお前は倒れるんだ」
声。
ゾロ。
いつの間にか幻の中に立っている。
「怒るななんて言わねぇ」
「俺も怒る」
「今でもな」
ナナが振り返る。
「じゃあどうすればいいの!」
叫ぶ。
「抱えろ」
短い言葉。
「怒りを捨てるな」
「飲まれるな」
ナナの周囲で暴れる青白い光。
「怒りは武器だ」
「怒りを主人にするな」
「お前が主人になれ」
その言葉。
ナナは目を閉じる。
逃げない。
押し込めない。
受け入れる。
怒りも。
悲しみも。
全部。
自分のものだ。
そう思い込む。
そうであると理解する。
すると。
暴れていた光が静かになっていく。
景色が消える。
洞窟が元に戻る。
ナナは膝をつく。
「はぁ……はぁ……」
疲労。
だが。
倒れない。
そこにチュウジ。
「第一関門は越えたな」
静かに笑う。
しかし。
ゾロはまだ厳しい。
「いや」
「まだ終わってない」
「本番はこれからだ」
ナナが顔を上げる。
「え?」
ゾロがニヤリと笑う。
久しぶりにいつもの顔。
「俺を倒してみろ」
ナナ。
「は?」
チュウジ。
「毎回これをやるのう……」
頭を抱える。
ゾロは構える。
「来い」
「今のお前がどこまで出来るか見てやる」
風が吹く。
ナナの目が変わる。
今度は怒りではない。
覚悟の目。
そして。
ゾロとの試験が始まろうとしていた。




