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まさか!うちのニャンコが?!―伝説を継ぐ者たち―  作者: トネガワ ワタル


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第35話 怒りの先に

 夜。


 クロウズのアジト。


 黒牙は目を閉じていた。


 その時。


「……消えたか」


 ぽつりと呟く。


 コールディーが顔を上げる。


「ハゲタカですか」


「ああ」


 遠く離れていても分かる。


 長年共にいた気配。


 それが消えた。


「裏切りましたか」


 コールディーは冷たい。


 怒りすらない。


「元より甘い男だった」


 黒牙は静かに笑う。


「まあいい」


「代わりなどいくらでもいる」


 その目が細くなる。


「問題は猫どもだ」


「思った以上に育っている」


 コールディーも頷く。


「特にあの灰色の娘」


「気になります」


 黒牙は何も答えない。


 ただ。


 静かに笑った。


「面白くなってきたな」




 場面は変わる。


 ハグサ山。


 夜更け。


 ナナは眠ったままだった。


 規則正しい寝息。


 だが。


 目覚めない。


 その傍ら。


 ゾロ。


 チュウジ。


 二匹が座っている。


「懐かしいなぁ」


 ゾロが空を見上げる。


「俺も昔やったんだよな」


「ぶっ倒れるまで暴走」


 チュウジがため息。


「昔どころではないじゃろ」


「何回やったと思っとる」


「へへへ」


 笑うゾロ。


 だが。


 目は優しい。


「怒りってのは厄介なんだ」


「強い力を持ってる奴ほどな」


 眠るナナを見る。


「怒れば怒るほど強くなる」


「だけどな」


「その力は自分も壊す」


 チュウジが続ける。


「ニャオスは心の力」


「心が乱れれば」


「力も暴れる」


 ゾロは頷く。


「だから俺は教わった」


「怒るなじゃねぇ」


「怒りに飲まれるな」


 静かな言葉。


「怒るのはいい」


「悔しいのもいい」


「守りたいのもいい」


「でも」


「自分を見失うな」


 チュウジが目を閉じる。


「ナナもいずれ学ばねばならん」


「次の段階じゃな」




 その頃。


 少し離れた木陰。


 ミツ。


 じっと見ている。


 ナナを。


「……」


 無言。


 近づこうとして。


 やめる。


 また近づこうとして。


 やめる。


「何やってるんですか」


 後ろからシロ。


「うるせぇ」


 即答。


「別に心配なんかしてねぇ」


「そうですか」


「そうだ」


「寝顔なんか見てねぇ」


「誰もそんなこと聞いてません」


 ミツがそっぽを向く。


 耳だけ赤い。




 翌日。


 昼近く。


 ユキ。


 ハル。


 二匹が付き添っていた。


 静かな時間。


 そして。


「……ん」


 ナナの耳が動く。


 ゆっくり。


 目が開く。


「ナナ!」


 ユキが駆け寄る。


「よかった……!」


 ハルも安心した顔。


「ここは……?」


 まだ少しぼんやりしている。


「一日寝てたんだよ」


「え?」


 ナナが驚く。


 その時。


「やっと起きたか」


 ミツ。


 腕組み。


「心配かけやがって」


「鈍くせぇんだよ」


 ナナは首を傾げる。


「心配してくれたの?」


「してねぇ!」


 即答。


「全然してねぇ!」


「一ミリもしてねぇ!」


「昨日ずっと見てましたよ」


 シロ。


「言うな!!」


 全員が笑う。


 ナナも少しだけ笑った。


 ユキが立ち上がる。


「もう少し休んでから」


「行こう」


「どこへ?」


 ナナが聞く。


 ユキは微笑む。


「ゾロさんと」


「チュウジさんのところ」


「きっと大事なお話があるから」


 ナナはまだ知らない。


 自分の中に眠る力の本当の危険さを。


 そして。


 それを乗り越えるための試練が。


 もう始まろうとしていることを。

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