第30話 空へ連れ去る者
ウキリ区へ向かう山道。
血の匂い。
倒れた仲間。
そして――
一匹。
チャチャ。
「一人になっても逃げないのか」
空から声。
ハゲタカ。
羽ばたき一つで空気を裂く。
「勝ち目が無い事ぐらい気づいているだろう」
「……」
チャチャは動かない。
視線だけを上げる。
「目の前で子分やられて」
「黙って逃げるわけねぇだろ」
「ほぉ」
わずかに目を細めるハゲタカ。
「この状況で逃げないとは」
「よほど男気が強いか――」
一拍。
「頭が悪いか、どっちかだな」
「やってみりゃ分かるさ」
低く構えるチャチャ。
子分のカラスたちがざわつく。
「任せてください!」
「俺たちで――」
「いい」
ハゲタカが遮る。
「思ったより強ぇぞ、こいつは」
「袋叩きは性に合わねぇ――」
「俺がやる」
静寂。
そして――
開戦。
風が鳴る。
空。
速すぎる。
チャチャが飛び込む。
だが――
空を裂く影。
当たらない。
「遅い」
背後。
横。
上。
位置が定まらない。
「くっ……!」
爪が空を切る。
「今度はこっちからいくぞ」
急降下。
一瞬で間合い。
鋭いくちばし。
狙いは――首。
その瞬間。
ガバッ!!
四肢。
全力で掴む。
「――捕まえた」
「……!」
わずかに目が見開くハゲタカ。
「こういう戦いばっかしてるとよ」
歯を食いしばるチャチャ。
「生傷ばっか増えちまうが――」
「これで世の中渡ってきたんだよ、俺は!!」
ガブッ!!
噛みつく。
胸元。
「ぐぁっ!!」
初めての悲鳴。
だが――
「……ククク」
笑う。
「今まではこれで勝ってきたんだろうが」
目が変わる。
「俺に通用するかな?」
バサッ!!
急上昇。
「なっ……!」
地面が遠ざかる。
一気に高度が上がる。
「どうだ?」
「いい眺めだろう?」
さらに上。
さらに上。
「離れたら――」
一瞬の間。
「真っ逆さまだぜ」
風圧。
視界が揺れる。
「……クッ」
だが離さないチャチャ。
牙が――
わずかに緩む。
「お前ら!」
ハゲタカが叫ぶ。
「このままヤツらんとこまで行くぞ!」
「こいつも連れていく!」
「つかまっていられたら――だけどな」
さらに上昇。
空の支配者。
チャチャの牙が離れる。
もはや必死にしがみつくだけ。
その頃。
ハグサ山。
静寂。
だが――
「……!」
ユキ。
目を見開く。
「来る」
空気が張り詰める。
「ウキリ区に向かう山道のほう」
「……すごく大きな力」
その言葉に
全員の顔が変わる。
「チャチャの野郎じゃねぇだろうな」
ゲン太。
「迎撃するぞ」
ポンズが前に出る。
「俺たち5兄弟」
「ギンジ、シロ」
「ゲン太とレオ」
「向かうぞ」
一斉に動き出す。
「キジ太、キジ子!」
「親父とタカウジさん、チュウジさんに報告だ!」
「モン、チッチは周辺警戒!」
「ミツとカンはここを守れ!」
「部隊編成、頼む!」
それぞれが走る。
役割へ。
戦いは――
空と地で
同時に動き出した。
風が強くなる。
次の衝突は
もう避けられない。




