第29話 ざわめく影
昼。
猫山の一角。
平和――
に見える時間。
「ちょっ、待てって!!」
アキュラが転がる。
その上に――ポンズ。
「遅ぇな!」
「速すぎるって!!」
横からキジ太が飛び込む。
「隙ありだニャ!」
「うおっ!?」
さらに――
キジ子。
「アンタたちほんっとバカね!」
と言いつつ――
しっかり参戦。
もつれる四匹。
転がる。
絡まる。
「八のくせに弱っ!」
「うるせぇ!八は縁起いいんだよ!!」
「いやただの模様でしょ?」
「違ぇよご加護だご加護!!」
ギャーギャー。
完全に平和。
少し離れて――
チュウジが目を細める。
「……よい」
木陰。
ナナとユキ。
「……ほんとに」
ナナ。
「一緒にいたんだね」
「うん」
ユキは静かに頷く。
「覚えてないけど……」
「でも、懐かしい」
少しだけ近づく距離。
「ナナは……昔から強かったよ」
「そうなの?」
「うん。なんか……」
「一番前にいた」
ナナは苦笑する。
「今も同じかも」
二匹。
並んで座る。
失われていた時間が――
少しずつ埋まっていく。
一方。
ギンジとゾロ。
「……なあ」
ギンジ。
「マジで知らなかったぞ」
「そりゃそうだろ〜」
ゾロは軽い。
「隠してたし」
「ユキが……お前の娘ってな」
沈黙。
ゾロがニヤッと笑う。
「じゃあさ」
一歩近づく。
「“お父さん”って呼んでもいいんだよ?」
「誰が呼ぶか!!」
即答。
「えー冷たいなぁ」
「ぶっ飛ばすぞ」
だが――
空気は悪くない。
ゾロの目が一瞬だけ変わる。
(……悪くねぇ男だ)
認めている。
その少し離れた場所。
シロとハリー。
「ナナさんの件ですが」
静かな声。
「怒りで覚醒するタイプ……」
「制御を誤れば危険です」
ハリーがうなずく。
「わかってる」
「でもあいつは――」
「止まらねぇ時があるんだよなぁ」
シロは目を細める。
「だからこそ」
「見ていきましょう」
「支える側が必要ですから」
その時。
ピタッ……
空気が止まる。
ナナ。
ユキ。
シロ。
チュウジ。
“感じる”
何かが。
「……来る」
ナナ。
「うん……」
ユキも同時に。
「これは……」
シロの目が鋭くなる。
だが。
場所も。
正体も。
まだ――わからない。
「……チャチャは?」
ゲン太の声。
レオが振り向く。
「……いないっすね」
一瞬の間。
レオは察する。
「抜けたか」
「だろうな」
ゲン太は短く答える。
「追うかい?」
「……いや」
首を振る。
「気持ちがねぇ奴は」
「いねぇ方がいい」
冷静。
だが――
「ただ……」
低く。
「妙なことしなきゃいいがな」
山道。
チャチャたち。
風が変わる。
バサッ――
降りる影。
五羽。
囲む。
「なんだテメェら」
チャチャが睨む。
子分たちは構える。
だが――
違う。
これまでの連中と。
“質”が。
「……精鋭か」
チャチャの目が細くなる。
そして。
その奥。
一羽。
ゆっくりと降りる。
ハゲタカ。
静かに。
だが圧倒的に。
立つ。
「……面白ぇ」
チャチャが笑う。
空気が張り詰める。
互いに理解する。
“強さ”を。
だが――
次の瞬間。
動いたのは子分たち。
速い。
重い。
正確。
「ぐっ……!?」
チャチャの子分が吹き飛ぶ。
一瞬。
崩れる陣形。
差は明白。
経験だけでは埋まらない。
質の違い。
だが。
チャチャは――
立つ。
傷だらけの体。
それでも。
「……理由は知らねぇ」
低く。
「だがな」
一歩踏み出す。
「黙ってやられるほど」
「甘くねぇんだよ」
牙を剥く。
戦闘態勢。
目の前には――
強敵。
そして――
その背後にあるもの。
まだ知らない。
だが。
確実に。
戦いは――
次の段階へ進んでいた。




