第25話 揺れる正義
クロウズのアジト。
荒れた空気。
重い沈黙。
その中心に――
モンジとウニ。
震えている。
目の前には。
コールディー。
「……で?」
低い声。
「また逃げてきたのか?」
「い、いや!違いますコールディー様!!」
「今回は、その……予想外の――」
「黙れ」
一言。
空気が凍る。
「十羽預けた」
「それを無駄にして」
「言い訳か?」
モンジの喉が鳴る。
ウニも黙る。
「……申し訳ありません……」
「当然だ」
その時。
「待て」
別の声。
ハゲタカ。
奥から現れる。
「どういう戦い方をした」
モンジがビクリとする。
「え、えっと……その……」
ウニが口を開く。
「猫の親子を捕まえて人質に――」
「……なんだと?」
空気が変わる。
ハゲタカの目。
鋭く。
怒りが滲む。
「女子供を盾にしたのか」
「い、いや!効率を考えて――」
「黙れ!!」
怒号。
モンジが縮み上がる。
「戦いとはな」
「力で決するものだ」
「誇りを捨てた時点で――」
その時。
「面白いじゃないか」
低く。
冷たい声。
黒牙。
姿は見えぬ。
だが――
全員が黙る。
「弱い者を使う」
「心理を崩す」
「実に合理的だ」
ハゲタカの目が細くなる。
「……それが戦いか?」
「勝てばいい」
即答。
「過程などどうでもいい」
空気が歪む。
ハゲタカの中で。
何かが軋む。
(違う……)
(こんなはずじゃなかった)
生きるため。
群れを守るため。
だが今は――
(ただの弱い者いじめだ)
沈黙の後。
「……次は、俺が行く」
全員が見る。
「俺が決着をつける」
「正面からな」
黒牙が笑う気配。
「いいだろう」
「だが――」
一拍。
「失敗は許さん」
圧。
ハゲタカは目を逸らさない。
「分かっている」
「準備しろ」
羽音。
子分たちが動き出す。
その背中。
覚悟と。
わずかな迷い。
両方を抱えていた。
一方。
ハグサ山。
静寂。
戦いの後。
猫たちは眠る。
深く。
重く。
ニャオスの回復。
だが――
「……まだ起きんか」
チュウジ。
視線の先。
ナナ。
ユキ。
他よりも深く眠っている。
「当然じゃな」
シロが近づく。
「ナナは怒りで覚醒しました」
「ユキは初めての探知」
「消耗が大きいのでしょう」
チュウジ、頷く。
「話してみよ」
シロが語る。
あの時のことを。
「カラスを見て」
「怒りだしたと思った瞬間――」
「消えました」
「そして……一瞬で」
「2羽仕留めた」
チュウジの目が細くなる。
「速さも異常でした」
「僕ですら見失うほどに」
一拍。
「……それだけではありません」
「目が――」
「青白く、光っていたように見えました」
沈黙。
風の音。
チュウジの表情が変わる。
「……青白い光」
「そうか……」
「そこまでか」
小さく呟く。
「それは」
「強いニャオスを持つ者にだけ現れる兆しじゃ」
シロが息を呑む。
「だが――」
チュウジの声が低くなる。
「問題は“怒り”じゃ」
「怒りは力を引き出す」
「だが同時に――」
「制御を失わせる」
ナナを見る。
静かに眠る姿。
「行き過ぎれば」
「ニャオスだけでなく」
「己すらも壊す」
シロ、黙る。
「……かつてな」
チュウジの目が遠くを見る。
「それを背負った猫がおった」
それ以上は語らない。
「この先」
「試練が来る」
「力を制するか」
「力に飲まれるか」
「それ次第じゃ」
風が吹く。
静かに。
だが確実に。
何かが近づいている。
空が暗くなる。
夜。
そして――
「……そろそろか」
チュウジが立ち上がる。
視線は山の奥。
猫たちが集まってくる。
ゾロの元に。
3兄弟たちも向かう。
そして
ユキも。
運命に引き寄せられるかのように。




