第22話 消えた家族
夜も更けたころ。
山道。
ハチ公は、一人で歩いていた。
落ち着かない足取り。
匂いを辿る。
呼ぶ。
「タマ……!」
返事はない。
その時――
バサッ。
影。
モンジとウニ。
「お前……さっきさらったやつの家族みたいだな」
心臓が激しく動く。
「助けてほしかったら質問に答えろ」
「……っ」
睨む。
「言うもんか……!」
強がり。
だが声は震えている。
「じゃあ処分するか」
軽い一言。
だが――致命的。
頭に浮かぶ。
家族。
鳴き声。
恐怖。
「……やめろ……」
崩れる。
歯を食いしばる。
涙が落ちる。
「……なにを……知りたい……」
吐き出した。
守るための情報を。
守れなかった。
ニャオスのこと。
まだ未完成であること。
ゾロがいないこと。
回復の為、長く眠ること。
全部。
「よし」
モンジ。
「役に立ったな」
「じゃあ帰るか」
「……え?」
顔を上げる。
「約束……」
「は?」
笑う。
「そんなの守るわけねぇだろ」
飛び去る。
絶望だけが残る。
クロウズの巣。
「コールディー様!!」
モンジの報告。
「バカ猫ホイホイは効果絶大でした!」
満足げ。
「情報も取れました!」
淡々と聞くコールディー。
「未熟。ボス不在。無防備時間の長さ」
「やるなら今だな」
沈黙。
そして。
「十羽預ける」
「必ず仕留めてこい」
「はっ!!」
朝。
ハグサ山。
ざわめき。
「いない!!」
トラ吉の声。
空気が揺れる。
「うちもだ!!」
ワラビも声をあげる。
次々と広がる不安。
親子が消えた。
三組。
トラ吉。
ワラビ。
そして――
「……うちも、いない」
ハチ公。
その声は、妙に静かだった。
視線が集まる。
顔は沈みきっている。
そして――
ドサッ。
土下座。
「ごめんなさい!!」
叫び。
震え。
涙。
語る。
すべて。
「ふざけんな!!」
ミツ。
「てめぇ……!!」
カン。
怒りが爆発する。
今にも飛びかかる勢い。
「……やめんか」
チュウジ。
静かに制する。
「責めても戻らん」
「今やるべきは――対処じゃ」
「母子たちを救う」
「でもどこにいるんだよ!」
アキュラが言う。
「……西」
ユキ。
小さく。
「声が聞こえるの」
チュウジとシロが目を合わせる。
「案内を」
「すぐに向かいましょう」
救出隊。
編成。
3兄弟。
レオ。
ミツ。
シロ。
モン。
チッチ。
そして――ユキ。
道中。
ナナとユキ。
「なんで分かったの?」
「分からない。でも、分かる」
ナナ、考える。
シロが静かに言う。
「その感覚は……大切にしてください」
西の山。
カラスの声、猫の声。
見つけた。
カラス六羽が猫たちを囲う。
まだ気づかれていない。
カラスたちは親子をいたぶる。
「やめて……」
母猫の震える声。
「……許せない」
ナナ。
怒り。
爆発。
消える。
そして――現れる。
一羽。
二羽。
一瞬で沈む。
「なっ……!?」
これにはシロも驚く。
速すぎる。
目の色が変わっている。
仲間も動く。
連携。
圧倒。
あっという間に。
6羽、全滅。
だが――
ナナの中で、何かが変わった。
怒りが覚醒への導きとなった。
「もう大丈夫」
ナナが言う。
目の色はいつものようになっている。
親子が泣く。
助かった。
「怒りはな」
チュウジが静かに語る。
「力を引き出す」
「だが――」
「扱いを誤れば、自らを壊す」




