第20話 馴染まぬ牙
陽が差す。
猫山は穏やかだった。
観光客の笑い声。
餌の匂い。
昼の顔。
だが。
裏では――
戦士たちが動いている。
「……遅い」
低い声。
ミツ。
鋭い目で三兄弟を見る。
「そんな動きじゃ」
「戦場で死ぬぞ」
ナナが睨み返す。
「言われなくても分かってる」
「分かってないから言ってんだ」
空気が張る。
「やめろよ」
ハリーが間に入る。
「今は仲間だろ」
「仲間?」
ミツが鼻で笑う。
「いつからだ?」
刺さる言葉。
「まぁまぁまぁ!!」
アキュラが割って入る。
「ケンカは良くない!」
「ほら俺の八のご加護で!」
「関係ないだろ」
全員ツッコミ。
空気が少しだけ緩む。
「す、すみませーん!!」
駆けてくる一匹。
白黒ハチ割れ。
「えっと!」
「三兄弟の皆さん!」
勢いがすごい。
「ぼ、僕はハチ公って言います!」
「チュウジ様から」
「世話役を任されまして!!」
深々と頭を下げる。
「よろしくお願いします!!」
ハチ公の目がキラキラする。
「すごかったです!!」
「あの戦い見てました!!」
「特にあなた!!」
アキュラを指さす。
「“八”ですよね!?」
「そうだ!!選ばれし八だ!!」
「絶対違うだろ」
キジオ。
「僕も“ハチ”なんです!!」
「運命感じません!?」
「感じるな!!」
「感じねぇよ」
「実は……」
「最近子供が生まれまして……」
周囲が一瞬止まる。
「え?」
「えぇ!?」
「お前そんなキャラだったの!?」
「守るものがあるんだな……」
ハリーがしみじみ。
「だから頑張らないと!!」
ミツは黙っている。
視線。
ナナへ。
厳しい。
だが。
ほんのわずか。
違う感情。
(……なんだあいつ)
夕方。
ナナが歩く。
向かう先。
チュウジ。
「聞きたいことがある」
「……ポンズって」
「強いの?」
チュウジの目が細くなる。
「ほう……」
「気になるか」
「あやつはな」
「特別じゃ」
「ニャオスをうまく扱い始めておる」
ナナの目が揺れる。
「……やっぱり」
「そして――」
一瞬、間。
「ゾロ殿の血を引く」
ナナが止まる。
(……なんで)
理由のない引っかかり。
「……そっか」
それだけ言う。
だが。
胸がざわつく。
一方。
離れた場所。
チャチャ。
「……気に入らねぇ」
低く吐き捨てる。
「なんでだよ」
「なんで人間のために戦う」
「なんであんなガキどもに従う」
周囲の猫たち。
沈黙。
だが。
否定はしない。
「……確かに」
小さな声。
揺れが広がる。
「やめとけ」
レオ。
「今はまとまる時だ」
「外に敵がいる」
冷静。
だが。
「知るかよ」
チャチャが睨む。
「納得できねぇもんはできねぇ」
完全には収まらない。
同じ山。
同じ仲間。
だが。
心は一つじゃない。
「群れとはな」
チュウジの声。
「外敵だけでは崩れぬ」
「内からも崩れる」
「むしろ」
「内の歪みの方が――」
「厄介な時もある」
風が吹く。
空は静か。
だが。
嵐は近い。




