第18話 空からの牙
空が鳴る。
羽音。
重い。
数ではない。
質。
影が五つ。
先頭。
少しだけ大きなカラス。
胸を張り、翼を広げる。
「フハハハハ!!」
「我こそは!!」
「コールディー様が一の子分!!」
「モンジ様だァ!!」
沈黙。
「……誰だよ」
アキュラが真顔で言う。
横のカラスが慌てて補足する。
「す、すごいお方なんです!!」
「コールディー様の側近で!!」
「そう!!偉いんだぞ!!」
モンジがドヤ顔で被せる。
「……」
空気が微妙に冷える。
「ま、いい」
モンジが咳払いする。
「猫どもが調子に乗ってると聞いてな」
「ちょっと教育しに来てやった」
(…あれ?先に牽制で送り込んだ奴どこいった?)
後ろの三羽が羽ばたく。
「やっちまいましょうモンジ様!!」
ウニが元気よく言う。
「そ、そうだそうだ!!」
モンジが乗る。
(迷子にでもなったかアイツ…)
次の瞬間。
急降下。
速い。
爪。
嘴。
空からの攻撃。
猫たちが散る。
「くそっ!」
ハリーが跳ぶ。
だが。
届かない。
上空。
ギリギリでかわされる。
「当たらねぇ……!」
「当然だろ」
ギンジが言う。
「空の連中だ」
攻撃。
回避。
翻弄。
猫たちの攻撃は空を切る。
カラスの一撃は鋭い。
「うわっ!!」
アキュラが転がる。
「大丈夫かよ八!!」
キジオが叫ぶ。
「今のはわざとだ!!」
「嘘つけ!!」
(……当たらない)
(でも……)
さっきの感覚。
(見えた)
目を閉じる。
風。
流れ。
――いる
開く。
「そこだ!!」
踏み込む。
ニャン法。
そこに――
ニャオス。
ドンッ!!
直撃。
「ギャアッ!!」
一羽、地面に叩き落ちる。
「やった!!」
ハリーが息を荒げる。
周囲がざわつく。
「今の……見えてたのか?」
レオが呟く。
空の流れ。
読んだ。
「よっしゃ次!!」
アキュラが叫ぶ。
モンとチッチが並ぶ。
「行きますよ」
「了解!」
黒猫兄弟が動く。
速い。
連携。
空中の一羽を追い込む。
「今だ八!!」
「任せろ!!」
飛ぶ。
だが――
ズレる。
「うわっ!!」
外す。
その瞬間。
カラスが体勢を崩す。
風。
偶然。
そこに――
ドンッ!!
アキュラの一撃。
「ギャッ!!」
二羽目、撃墜。
「……当たった」
「当たったな」
モンが言う。
「当たったね」
チッチが頷く。
「これが八の力だ!!」
「いや違うだろ」
残る一羽。
ナナが構える。
空を睨む。
(……いる)
感じる。
だが。
強すぎるニャオス。
制御ができていない。
流れが暴れる。
「くっ……!」
踏み込む。
――ズレる
外す。
「遅い」
カラスが嘲る。
「抑えなさい」
チュウジの声。
「流しすぎじゃ」
「絞れ」
「一点に」
ナナの目が変わる。
(絞る……)
試す。
だが――
まだ不安定。
届かない。
その瞬間。
「……少しお手伝いしますよ」
シロ。
シロが動く。
最短。
ナナの死角を埋める。
「今です」
その一言。
ナナが動く。
迷いが消える。
ドンッ!!
直撃。
三羽目、撃墜。
静寂。
残るは――
モンジとウニ。
「……え?」
モンジが固まる。
「え?」
もう一度言う。
「えええええええええ!?」
「な、なんで!?」
「こんなはずじゃ……!」
「おいウニ!!」
「はいぃ!!」
「どうすんだこれ!!」
「えっと……」
「逃げましょう!!」
「そうだな!!」
だが。
モンジが踏みとどまる。
「ふ、ふん!!」
「今日はこのくらいにしてやる!!」
「覚えておけよ猫ども!!」
「コールディー様はもっとすげぇんだからな!!」
震えている。
丸わかり。
「…あ」
(うわぁ、先発した奴もやられてる!)
今頃気づく。
その時。
ウニが小さく呟く。
「……今の」
「何か……変でしたね」
「ただの動きじゃない」
「……力が」
モンジがハッとする。
「そ、そうだ!!」
「俺も気づいてた!!」
「さすがモンジ様!!」
「だろ!!」
「行くぞ!!」
羽ばたく。
逃げる。
一直線に。
「コールディー様に報告だ!!」
声だけは大きい。
静けさが戻る。
猫たちが息を整える。
「……勝った?」
アキュラが言う。
「一応な」
ギンジが答える。
ナナが空を見る。
(……まだ)
(全然足りない)
シロが隣に立つ。
「良い一撃でした」
ナナは何も言わない。
「始まったのう」
チュウジの声。
「外敵との戦いが」
「そして」
「お主らの本当の戦いもな」
空の向こう。
まだ見ぬ脅威。
黒牙。
影は、さらに濃くなる。




