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まさか!うちのニャンコが?!―伝説を継ぐ者たち―  作者: トネガワ ワタル


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第17話 影、動く

 空は曇っていた。


 陽は差さない。


 

 西洲ウキリ区。

 

 中断された建設現場。


 荒れた建物の骨組み。


 鉄の匂い。


 そこに――


 無数の影。


 カラス。


 その中心。


 高い鉄骨の上に二つの影。


 ハゲタカ。


 毛が抜けた頭頂部に傷跡。


 コールディー。


 鈍く輝くひと際鋭い目つき。




「……報告します」


 一羽のカラスが降り立つ。


「猫どもが――」


「山で集まっています」


「戦闘訓練を確認」


 間。


「妙な動きも」


「石を……動かしていました」




 沈黙。


 そして――


 ククッ


「石だと?」


 ハゲタカが笑う。


「遊んでんのか?」


 コールディーも口元を歪める。


「所詮は猫だな」


「暇つぶしにちょうどいい」


 軽蔑。




 だが。


 ハゲタカの目が細くなる。


「……だが」


「集まってるってのは気になるな」


「数は力だ」


「放っとくと面倒になる」


 コールディーが頷く。


「潰すか?」


「いや」


 ハゲタカが言う。


「まだ早ぇ」


 その時。




 奥。


 闇の中。


 “それ”はいた。


 姿は見えない。


 だが――


 圧だけが存在する。


「……面白い」


 低い声。


 空気が重くなる。


 黒牙。


 すべてのカラスが沈黙する。




「コールディー」


「は」


「行かせろ」


「様子を見てこい」


「牽制も兼ねてな」


 短い言葉。


 だが、絶対。


「数羽でいい」


「遊んでこい」


 コールディーが笑う。


「承知しました」


 その目は冷たい。




 羽音。


 数羽の影が飛び立つ。


 静かに。


 確実に。


 山へ向かう。




 その頃。


 ハグサ山。


 修行は続いていた。


 だが。


 空気が違う。


「……なんか変だな」


 ハリーが呟く。


 風。


 音。


 何かが引っかかる。




「気のせいじゃない?」


 アキュラが言う。


「いや……」


 ハリーは空を見上げる。


(……来る)


 理由はない。


 だが。


 確信に近い何か。




「どうしたのですか」


 シロが声をかける。


「……分かんねぇけど」


「なんか嫌な感じがする」


 シロが少しだけ目を細める。


 ナナも反応する。


「……私も」


 沈黙。




「なら」


 シロが言う。


「それを使ってみなさい」


「え?」


「感覚です」


「その違和感」


「ニャオスの一部ですよ」


 ハリーが息を呑む。




 目を閉じる。


 感じる。


 空気。


 流れ。


 さっきまでとは違う。


 何かが――


 “来ている”




 ドクン


 心臓が鳴る。


 体が熱い。


 力が、流れる。


(……これが)




 目を開く。


 世界が違う。


 遅い。


 すべてが。


「……見える」


 小さく呟く。


 その瞬間。


 風が揺れる。


 影が横切る。


 だが。


 ハリーは動く。


 反応する前に。


 ドンッ!!


 空を切る一撃。


 “何もないはずの場所”へ。


 だが――


 ギャアッ!!


 悲鳴。


 空中からカラスが叩き落とされる。




 全員が固まる。


「……は?」


 アキュラが呟く。


「今の……」


 ハリー自身も驚いている。


「……当たった?」




 シロが静かに言う。


「ええ」


「捉えましたね」


 ナナがハリーを見る。


 その目が変わる。


(……やっぱり)




「始まったのう」


 チュウジの声。


「外も」


「内も」


「動き出した」




 空。


 まだいる。


 黒い影。


 次の戦いは、すぐそこ。

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