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94、シーパスの街

「ウィル、交代だ」


 チャットに返信すると、セルさんが転移魔法を使って現れた。彼らはあらかじめ、交代時間を決めていたみたい。


「セルさん、オモチの断片が仮採用のようです。オモチ、また明日ね」


 ウィルはそう言い残すと、転移魔法の光に包まれた。ルナシティに戻ったのかな。


「アイツ……。オモチ、とりあえず場所を変えるぞ」


 セルさんが私の腕を掴むと、転移魔法の光に包まれた。




 ◇◇◇



 転移した先は、私の知らない街だった。すっごく都会。だけど、行き交う人は少ない。


「オモチ、昼飯を食ってないみたいだな。酒場にでも行くか。まだ、ランチ営業をしているはずだ」


「はい。あの、ここはどこですか?」


「ん? オモチは来たことないか。ここは、シーパスの街だ。その先には海がある。『レモネードはキスの味』の舞台の一つだ。あの乙女ゲームのメイン舞台は、海だけどな」


 セルさんは、あまりこの街には慣れてないのか、キョロキョロしながら、歩いている。


「へぇ! アース星では、次の配信予定になっている乙女ゲームです」


「だろ? 先に舞台を知っておけば、アース星に帰ったときに、楽しめると思ってな。あっ、ここか。入り口がわかりにくいな」


 確かに、ジュエンや他の街とは、店の造りが違う。酒場っぽさがないから、見逃してしまいそう。




「いらっしゃいませ。2名様ですね」


 酒場に入ると、大きな水槽があった。海で獲れた魚を泳がせているのかな。


「あぁ、個室は空いているか?」


「この時間は、ガラ空きです。各星のランチ営業中ですが、海の幸の定食がおすすめです」


「じゃあ、海の幸の定食を二つ頼む」


 4人席の個室に案内された。確か、防音結界があるから、携帯機に記録されないよね。だけど扉が閉まっても、セルさんの雰囲気は変わらない。



「あらかじめ交代時間を決めていたんですね」


「ん? あぁ、まぁな。測定の初日は、3人とも会う方がいい。明日は、ウィルは夕方が空いていると言っていたぜ」


「測定アプリを稼働させて、ご迷惑でしたよね。すみません」


「いや、構わない。運営の記録とズレると失敗扱いらしいからな。悪役令嬢から、だいたいの話は聞いている。運営の連絡を見せてくれるか?」


 私は、セルさんに、ミッションの注意書きを表示して見せた。ウィルとは違って、さっと流し読みをしているみたい。



「お待たせしました。海の幸の定食です。ごゆっくりどうぞ〜」


 運ばれてきた定食は、和食だった。でも、生魚はないし、上品さもない。煮魚、海鮮サラダ、そして白ごはんと具沢山な味噌汁が、トレイにドカンと乗ってる。


「わぁ〜、漁師飯って感じですね」


「そうだな。白ごはん以外には、魚が入っているみたいだ。ゲームで登場する食事は、ほとんどがオモチの故郷の料理じゃないか?」


「そうですね〜。こういうのって、漁港近くじゃないと食べられないけど。私の故郷なら、お刺身が付きますよ」


「生魚か。そういえば、アース星出身のロッコ族が、生魚を買いに行かせてるらしい。あぁ、クリスタルショップで、会ったんだったか」


「護衛の子ですよね。冷凍だと言っていたけど、生魚を使ったお寿司がありましたよ。元気いっぱいな子供達でしたが、すっごく強かったです」


 セルさんは、生魚が嫌いかな。ちょっと変な顔をしていた。ロッコロッコ星の料理とは、あまりにも違うもんね。


「俺は、まだ未来から来た子には会ってないけどな。この星の上書きに来るほどの人材だ。大人の身体に育てば、イービー星の弱小国の魔導士よりは、強いはずだぜ」


 弱小国って、あのナイフを開発した人達のことだよね。




「オモチは、シエルさんを選ぶだろ?」


 食事が終わると、セルさんは、突然、変なことを言いだした。わからないから、測定アプリを使ってるのに。


「誰を選ぶかは、まだわからないです。でも、選んだ人が、20周年の大作の攻略対象に選ばれてしまうなら、複雑です。自由を奪うことになるかもしれないし」


「オモチが選んだ人が、必ず攻略対象に選ばれるかは、わからないぜ。ストーリーのみの採用もあるからな」


「えっ? あ、じゃあ、迷惑にならない?」


「オモチは、そんなことを心配しなくていいんだよ。アース星の種族とは、寿命が大きく違うからな。メイロ星から来た奴らは、それほど長寿ではないが、アバターがある。ロッコ族なら、個人差はあるが、この星に来るチカラのある者なら、オモチの5〜6倍は長いよ」


 寿命が長いから、何?


「あっ、寿命が長いから、縛られる期間は、それほど長くは感じないのかな?」


「そういうことだ。オモチは、シエルさんを選ぶべきだと思うよ。まぁ、測定アプリの動作根拠がわからないけどな。今、どうなってる?」


 セルさんは、なぜシエルさんを推すのかな。あっ、彼は、自由でいたいのか。でも、マンスリーミッションをクリアしなかったら、研究室送りになる。ロッコ族の世話をするから、もう街には戻れない。自由なんてないよね。



 測定アプリを開いて、セルさんに見せてみた。



【測定対象】

 ● セルシード:20%

 ● シエル : 10%

 ● ウィル : 20%


(指標の目安)

 10〜20%: 友達

 20〜35%: 好意

 35〜50%: 恋愛対象



「オモチ、指標の目安しか、俺には見えない。上の部分は、文字化けしているぞ」


「そうなんですか? 3人とも友達ですね」


「測定アプリの数値は、確か増減するはずだ。3日間の累積というわけでもないと思うが、俺も詳しくない。開発は、イービー星の最強国だったと思うよ」


「じゃあ、運営や開発にも、明かされてないのですね」


「俺の周りは誰も知らなかった。難民の監視者が開発したんじゃないかな。確か、魔導大使という肩書きだったと思う」


 えっ? オルフルさん? 



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