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82、コールドパンの難民特区

「へぇ、難民特区内はこんな感じか。外からだと結界で見えないから、知らなかったよ」


 ラグ塔からの転移魔法で着地したのは、何もない広場だった。難民を受け入れるときには、ここに運ぶのだろうか。学校の運動場よりも広いと思うけど、日が暮れているから、よくわからない。


 セルさんが見ている方向には、強い光を放つ大きな門があった。門の上部には、キラッと光る膜がある。結界って、あの膜のことかな。この難民特区全体を覆っているのかも。



「コールドパンは、学習が必要な移民の収容所ですからね。まずは、結界内の難民特区に集められます。ここから外へ出るには、門を通る必要があります。研修所で適切な教育を受け、試験に合格すると、難民特区の外へ出ることができます」


 ウィルは、セルさんに丁寧に説明した。これまで私が見ていた彼は、ウィル王子を演じていたからか、少し俺様な雰囲気だったけど。


「二重のおりになっているんだな。コールドパンは治安が悪いと聞いていたが、結界内は静かだな」


「はい。俺達もここに来たときは、門の外に出るために、真面目に勉強しました。試験に合格して結界の外に出ても、コールドパンの街からは出られなかった。次第に、荒れていきますね」


 騙されたってこと?


「なるほどな。だが難民を短期間で自由にするのは、リスクが大きすぎる。未開地に放り込めばいいという意見もあるが、そうすると今度は別の問題が起こるからな」


「この人工星の目的から考えると、未開地は、これから新たな舞台を作る土地だからですね。難民が住みついてしまうと、必要な時に排除できないからだと理解しています」


 二人は話しながら、運動場を歩いていく。私もケイトさんと、追いかけた。



 やっと運動場の端にたどり着いたら、土のままの道があった。道沿いには、土壁の小さな小屋が並ぶ。街灯が少ないから、よく見えないけど。風が吹くと、地面の砂が舞い上がって目に入りそうになる。


 彼らは薄暗い道を、無言で歩いていく。ケイトさんも、シーッと人差し指を口の前に立ててからは、何も喋らない。小屋に住んでいる人に聞こえるからかな?


 でも、人は全く見かけないし、灯りのついている小屋もない。転移魔法の着地点の近くには、今は誰も住んでないのかな。


 何度か角を曲がったけど、どこを歩いていても、私の目に映る景色は同じに見えた。完全に同じ造りの小屋が整然と並び、標識も案内板もない。もう、元の広場に戻れと言われても、私には無理。


 だから、案内役が必要なのね。


 ウィルは、小屋の屋根をよく見ている。全く同じ小屋だけど、何がわかるんだろう?



 あっ、人がいた! 街灯の光のせいかもしれないけど、青っぽい肌だ。わっ、大きなツノがある!


 だけど、慌てて小屋の中へ入ってしまった。よく見ると、窓から覗いている目があった。視線を向けると隠れるし、何の音もしない。窓には厚いカーテンがあるのかも。


 もしかして、私達を怖がっているのかな。


 知らない星に来て、いろいろな勉強をさせられている人は、この難民特区を歩くアバターが怖いのかもしれない。きっと教育している人もアバターだもんね。




「ここが、看板通りです。乙女ゲームを教えるために、古い作品から最新作まで、すべてのポスターが揃っています」


 角を曲がると、左右にズラリとポスターが並ぶ明るい通りになっていた。でも普通の看板通りとは違って、ポスターの下には、長い説明が書かれている。


 看板通りにいた人達は、私達を避けるように、逃げて行ってしまった。


「オモチ、ミッションを確認してくれ」


「は、はい」



 説明文を読み始めていた私は、慌てて携帯機を確認する。あっ! 達成になってる。私は、チカチカしているミッションの報酬を受け取った。


 ビンゴカードの下の、未達成ミッションは、あと2つというか、実質1つね。



 *クリスタル採掘地で土産を買おう!

 *このカードをビンゴ開始から72時間以内に達成せよ!

(残り時間:52時間38分)



「達成できています。ありがとうございます!」


「じゃあ、結界の外へ出て、晩飯にするか」


 セルさんがそう言うと、ケイトさんは嬉しそうな顔をした。でも、ウィルの表情は暗く沈んでいる。この後、用事があるのかな?



「あの、セルさん、コールドパンで食べるのでしょうか。ご存知かはわかりませんが、その……」


 ウィルは、何か言いにくそう。


「コールドパンで食べるよ。この街の門をくぐるまで、転移魔法は使えないからな。おそらく門までは、まだ2時間はかかるだろ」


「そうですね。ただ、安全な店は……」


 ウィルは、私の方に視線を移した。そして、何かに気づいたのか、首を傾げている。


「オモチのことを心配しているなら、問題はない。薬湯で治療した際に、主人公が放つ魅了魔法は消えているし、彼女自身、身を守るためのバリア魔法を習得している」


「あっ、見間違いじゃないのですね。俺は今、攻略対象のオーラを放っているから、主人公の魅了魔法は見えにくいのですが」


 攻略対象のオーラ?


「あぁ、今のオモチは、一般の滞在者と同じに見えるよ。まだ、攻略対象のオーラ期間は終わらないのか? 配信から5年くらいだと思っていたが」


「配信先が増えたから、一番遅いアース星での全キャラ配信が終わるまでは、このままらしいです」


 そういえば、全8ルートじゃないのよね? 私は8ルートしか知らないけど。


「大変だな。だが、あともう少しだ。頑張れ」


「ありがとうございます!」


 ウィルは、セルさんにペコリと頭を下げた。セルさんは、今でも過激なファンに追われていることを、言わないんだ。


 頑張っているウィルやケイトさんへの配慮かな。それに、ファンのタイプも違うかもしれないもんね。



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