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66、価値観のズレ

「えっ? シエルさんのことも、ってどういう……」


「僕と結婚する、ということだよ。オモチが星に帰っても帰らなくても、僕はオモチに合わせることができるからね」


 シエルさんの考えは、変わってなかった!


 私は頬が熱くなってる。きっと赤くなってるよね。でもシエルさんは、焼き菓子に手を伸ばしてるから、気づいてないかも。



「しつこく言うと嫌われると、サリィさんから忠告されたんだけどさ。僕は、ゲームの恋人時間が終わっても、やはりオモチのことが好きなんだよ。それに、好きな物が合う気がするから、似てるのかもしれないね」


 真っ直ぐに見られてる。まだ頬が熱いよ。


「ゲームも食べ物も、好きな物が似てる気がします」


「でしょ? でも、今のオモチの心の中には、僕の居場所はあるのかな? ウィルの方が好きなんだろうとは思うけど、他にも誰かいるの?」


 えっと、どうしよう……。だけど、シエルさんは、将来の相手を探しているから、適当に誤魔化すことは不誠実だと感じる。



「私は、ウィルのことが気になっているし、他にもゆっくり話してみたいと思う人がいます。それが恋愛感情かというと、わからないですが」


「僕のことは、全く考えられないのかな? あー、変な意味で捉えないで欲しいんだ。僕は、自分の気持ちを押し付けるつもりはない。ただ、可能性を知りたいと思ってる」


 だよね。当たり前だよ。


「私は、シエルさんのことは、もちろん嫌いじゃないし、趣味も合うと思うし、一緒にいて楽しいです。シエルさんの魔法のことはわからないけど、性格的には真面目で一生懸命で素敵だなと思います。ただ、恋愛感情は、あるとは言えないです」


「あれ? オモチの感覚って、今の僕と同じじゃないのかな。僕は、オモチと趣味が合うし、一緒にいて楽しいよ。それに、真面目で律儀な面に好感が持てる。だから、結婚したいと思った。そうか、最後の部分がズレてるんだね」


 シエルさんには、恋愛感情がないのかな。もしかすると、それが、イービー星の人の特徴なの?


 でも、サリィさんは、キュンキュンする乙女ゲームが好きだよね? あ、日常的にそういう経験がないから、乙女ゲームの世界観が好きなのかな。


 シエルさんが乙女ゲームが好きなのも、同じ理由なのだろうか。非日常の架空の世界、か。



「オモチ、僕は、アース星の人の感覚を理解できてないみたいだ。乙女ゲームのような世界観が、オモチの世界の常識かな?」


「えっと、乙女ゲームは極端な演出が入ってますけど、私は、結婚は、恋愛関係の先にあると思っています。もちろん、お見合い結婚や政略結婚をする人もいるでしょうけど、少数派だと思います」


「そうか。種族の違いが大きな妨げになってしまうんだな。いや、イービー星だけが特殊なのかもしれない。いろいろな星の人と話す中で、そう感じるようになったよ」


 シエルさんは、少し考え込んでしまった。


 でも、種族の違いを感じても、それに傷つく様子はない。この付近の星の中で、イービー星は圧倒的な優位性があるからか。


 ウィルが、シャルルさんに、嫌なことを言っていたことを思い出した。王城に、オルフルさんを呼んだつもりだったのに、シャルルさんが来たからかな。ロッコロッコ星はイービー星の下僕だと、言ってたっけ。


 たくさんの種族が集まると、いろいろと難しいよね。




「今、考えていても、仕方ないね。オモチのミッションを無事に終えることができれば、オモチも、先のことを考えられるようになるかな」


 やはり、シエルさんは性格が良い。


「何だか、はっきりしなくてすみません」


「気にしなくていいよ。僕もいろいろと勉強になっている。それに、今の僕とオモチでは、あまりにも状況が違うからね。僕は何も失う物はないけど、オモチは、ミッションを終えないと、本来の自分の身体を失うんだから、先のことなど考えられないのは当然だ。僕の方こそ、ごめんね」


「いえ、そんな……シエルさんは優しすぎますよ」


「ん? それは、僕のアバターが放つ魅了にかかってるんじゃない? オトメンのテスト要員が終わると、僕はアバターをやめて本来の姿に戻るよ。その状態で、もう一度話そうか」


「あっ、フレンドじゃなくなるんですか?」


「いや、携帯機は、そのまま持ってるから、フレンドは継続だよ。もう少し、僕のミッションに付き合ってくれる? オモチのフリーミッションにもなるからさ」


「はい、喜んで」


 私達は、コンセプトカフェを出た。支払いは、また、シエルさんに先を越されてしまったけど。




 ◇◇◇



 シエルさんのミッションに付き合う形で、看板通りを見に行った後、静かな公園の遊歩道を歩き、レストランで遅い夕食を食べた。


「オモチ、残りは、あと2つになったよ! 夜も遅くなったから、宿屋に送っていくね」


「はい、ありがとうございます。次のミッションは29ですか?」


「うん、これは僕が一人で出来る。ファン会館に行こう、だからね」


「シエルさんの仕事場ですね」


「そういうこと。本当に助かったよ。最後のミッションは、お世話になった人達への挨拶回りだと思うから、もうミッションはすべて達成できたようなものだ」


「20日でミッションを終えられそうで、良かったです。ギリギリでしたね」


「ほんとだよ。ギリギリだった。オモチのおかげで達成できたものが多いから、一番の功労者はオモチだね。ミッション30が出たら、ゆっくり会いに来るよ」



 手を繋いで宿屋まで送ってくれるシエルさんは、何か思いついたようだけど、頭を左右に振って考えを打ち消したみたい。


「ん? シエルさん、何ですか?」


「いや、何でもないよ。あー、うん、ゲームの恋人になっておこうかと思ったんだけど、僕の本来の姿に戻ってからにするよ」



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