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65、罠のニオイ

「オモチ、次のミッションは、まだやらないで。ちょっと、サリィさんに相談するから」


 シエルさんは、すぐにチャットを始めたようだ。



「お待たせしました」


 紅茶と焼き菓子が運ばれてきたけど、シエルさんはチャットに忙しいみたい。私が焼き菓子に手を伸ばすと、一瞬だけ、私に笑顔を向けてくれたけど。



 私も、シャルルさんに連絡しておく方がいいよね。


『シャルルさん、ミッション28で、ビンゴを1枚クリアしよう、というのが出ました。シャルルさんが許可するまではダメと言われていたので、ビンゴミッションは、まだ始めていません』


 すると、すぐに返信があった。


『今、シエルさんと一緒よね? オモチさんのデイリーミッションをシエルさんに念写してもらってちょうだい。フリーミッションは、いくつ終わってる?』


 念写? って何?


『シエルさんは、今、別の人とチャット中なので、後で頼んでみます。フリーミッションは、101個達成済みです』


『わかったわ。まだ始めるには早すぎるわね。とりあえず、念写を送ってもらって』



 チャットを終えたシエルさんは、やっと焼き菓子に手を伸ばした。難しい顔をしてる。


「シエルさん、シャルルさんがミッションの念写を送って欲しいそうなのですが……」


「あぁ、それがいいね。見せて」


 私は、ミッションを開き、シエルさんに見せた。



【ミッション28】未達成

 ビンゴを1枚クリアしよう!

(残り16日5時間22分)


【ミッション12】酒場に行こう!

【ミッション13】ショー劇場に行こう!

【ミッション14】看板通りに行こう!

【ミッション15】恋人を作ろう!

【ミッション16】コンセプトカフェに行こう!

【ミッション17】街歩きをしよう!

【ミッション18】静かな公園に行こう!

【ミッション19】異性のフレンドと話そう!

【ミッション20】恋人を作ろう!

【ミッション21】酒場に行こう!

【ミッション22】青く輝く湖を見に行こう!

【ミッション23】ショー劇場に行こう!

【ミッション24】異性のフレンドと話そう!

【ミッション25】コンセプトカフェに行こう!

【ミッション26】看板通りに行こう!

【ミッション27】花壇のある公園に行こう!



 念写の意味がわからないけど、たぶん魔法なんだろうな。私の携帯機をジッと見た後、シエルさんは、またチャットを始めた。


 達成済みのミッションがズラリと並ぶ画面を見ていると、少し寂しい気持ちがわいてきた。あと3つでミッションは終わり、私は地球に帰ることができる。


 今日は、まだ12日目だけど、たくさんの人が協力してくれたから、30日どころか、その半分の期間で終われそう。まだ、ミッション29と30は、何が出てくるかわからないけど。


 あんなに早く帰りたいと思っていたのに、心に余裕ができると、まだ帰りたくないと思う気持ちもある。


 ウィルの涙やケイトさんのことが気になるし、求婚してくれたシエルさんの気持ちも気になる。あっ、シエルさんには、もう他の候補がいるかもしれないけど。


 それに、初日以降、全然話せてないセルさんのことも、気になっている。彼が恋人を殺したと、シャルルさんは言っていたけど、そのことはさすがに聞けないけど、帰る前には、もう一度、ちゃんとセルさんと話したい。


 私が帰れるように、一番最初に忠告してくれたのは、セルさんだ。そして、シャルルさんにはとてもお世話になっているし、サリィさんも、シエルさんも……。




「オモチ、もう閉じていいよ」


「えっ? あ、はい」


「僕のミッションで行った公園には、花壇もあったから、オモチのミッション達成にもなったみたいだね」


「湖のある公園ですよね。夕暮れで綺麗でしたよね」


「うん、そうだね。あっ、ビンゴはまだやらないで、と仰っていたよ。ビンゴを始めてしまうと、開始から何日という時間制限のあるカードをクリアするまでは、デイリーミッションを終えていても、帰れない場合があるみたいだ」


「そうなんですか」


「オルフルさんにも確認済みだから、間違いない。フリーミッションがもう少し進んでからか、期限が近づくまでは、始めない方がいい。ミッション28ということは、28日目だよね? 28日目に開始すれば、時間制限は大丈夫だと思う。でもその場合、ミッション29や30で時間のかかるものが出ると、時間切れになるけどね」


「罠のニオイがしますね」


「うん、罠だろうね。しばらくは、できる限りフリーミッションを進める方がいいよ。シャルルさんが、達成済みのフリーミッションをチェックしてくれるみたいだ」


「わかりました。フリーミッションを進めます」



 シエルさんの表情は、やっと落ち着いてきたみたい。私が帰れるように必死に協力してくれる姿は、彼の性格の良さを表しているように思える。


 私は、シエルさんと一緒にいれば、幸せになれるのかもしれない。ミッションを終えて地球に帰っても、シエルさんは移住できると言ってくれた。もう気が変わってるかもしれないけど。


 だけど、何だろう?


 シエルさんは美形だから、私は劣等感を感じてるのかな。地球に戻ったときのことを想像してみても、何だか違うと感じる。


 誰から見ても文句ない条件が揃っている、と言われているシエルさんは、すっごくモテると思う。魔法なんて私にはわからないけどイービー星の人だし、三男だと言っていたけど貴族だし……。


 いろいろと考えていると、頭の中が、ごちゃごちゃしてきた。帰る前に、いろいろと整理しないとね。



「オモチ、どうしたの?」


 えっ? シエルさんのことを考えてたなんて、言えない。


「いろいろと考えなきゃなって思って」


 すると、シエルさんは意味深な笑みを浮かべた。


「僕のことも、考えてくれるのかな?」


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