表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

55/81

55、壊れている?

 ケーキを食べ終わると、ウィルは、カーペットにゴロンと寝転んだ。そしてすぐに、うつ伏せになってる。


 あっ、携帯機を見てるみたい。さっき言っていたグループチャットを確認してるのかな?


「イマイチだな。オモチも転がりなよ。こうすれば、携帯機は監視カメラに映らないからな」


 ええ〜? 寝転ぶの?


 ウィルは、隣をトントンと叩いてる。私はそろりと、うつ伏せに寝転んだ。するとウィルは、頭を近づけてくる。フードで隠しながら、携帯機を見せてくれてるみたい。



「あれ? 写真?」


「あぁ、オモチに協力してもらったメモリーだよ。花火がメインになってて、俺達だとはわからない」


 私も携帯機を出してみた。あっ! ある! 二次元のウィルは、私がよく知っているウィルだよ! 私が作った二次元のアバターとウィルが並んで、花火を見ている!


「わっ! ウィルと私のアバターが並んでる写真! 私、この旅に申し込んだとき、ウィルと一緒に写真を撮りたいって思ってたんですっ!」


 舞い上がった私は、思わず、足をパタパタさせていた。あっ、しまった。引かれてしまう。


 そっと、ウィルの顔を盗み見ると、彼の表情は優しかった。演技かな? でも、目も穏やかだと思う。



「オモチは、そんなにウィル王子が好きなんだな」


 ウィル王子? なんだか他人事みたいな言い方。


「ここに来るキッカケが、エンディングでウィル王子から、会いに来ないかと言われたことですからね。乙女ゲームの制作地で、ファンミーティングか何かのイベントがあるのだと思っていました。まさか、ウィル王子が実在するとは知らなかったし」


「ウィル王子は、実在しないよ」


「えっ? あ、ウィルは……」


「俺は、ただの難民だ。メイロ星では役者をしていたから、ゲームに採用されやすかったんだと思う。あの頃は、この人工星に移住させてもらった礼をしたいと考えていた。100万人ほどを移住させてもらったからな」


「役者だったんですね。演技力がすごいと思ってました。メイロ星から来た人は、100万人もいるんですね」


「今は、半分くらいじゃないかな。街には、1万人も居ないよ。ほとんどは研究所の下働きだな。新規エリアの開発の仕事をしている」


「研究所ですか。街にいる人は、乙女ゲームに出演した人なんですか?」


「あぁ、そうだな。監視者が追放しようとしているのが、街にいる難民だ。新規エリアの開発をしている難民の一部も、その対象だな。メイロ星の出身者は、基本的に野蛮なんだよ」


 なんだかウィルは、懺悔をしているように見えた。


「何か、あったんですか?」


「ふっ、アース星の子には理解できないようなことだよ。あー、こんな言い方はすべきじゃないな。悪い」


「いえ、私も、プライベートなことを聞いてしまって、すみません」


 私も謝ると、ウィルは少し意外そうな顔をした。変なことを言ってしまったのかな。



「オモチは、ちょっと変わってるね。この星に来る乙女ゲームのファンは、もっと強引だし、自分の欲に忠実なんだよ。アース星の子は、純粋な色欲があるだけだから、まだマシだけどな」


 色欲って……。そっか、ウィルは今までに、いろいろと嫌な思いをしてきたのかも。


「攻略対象になると、ファンが押し寄せてきて、大変そうですよね」


「まぁね。アース星以外のファンは、俺達の護衛を殺すことも少なくない。だから、大きな公演のときは、魔導士を護衛に付けることになっているよ」


「えっ? 護衛が殺されるんですか!」


「あぁ、狂ったファンは、怖いよ。今回の恋人ごっこが終われば、イービー星の人が、オモチの護衛をするんじゃないかな」


「私の護衛?」


「俺に関する噂は、もともとは、そういうヤバイファン対策として、広めたんだよ。だが、噂は途中で変わるんだよな。最初は、主人公へのファンサービスをメインにすると言ってただけなのに、アイツらが女遊びを始めたこともあって、変な方向に噂が進んだ。それで俺が、男同士の方が気楽だと言ったら、男色だと言われる。どうしようもないよ」


 ん? ファン対策のために、噂を流した?



「もしかして、ウィルは、女性に恋愛感情を持つことはない、のではなくて、ヤバイ女性ファンが嫌いってことですか?」


 そう尋ねると、ウィルは、悪戯っ子のような笑みを浮かべた。図星? シャルルさん達の中で広がる噂は、真実ではないの?


「オモチは、どう思う?」


「えっ? 私? えーっと、まだよくわからないです」


「ふっ、そうか。俺も、よくわからないんだよ。ただ、俺が付き合った女は、すぐに殺される。だから、恋人は男に限定している。たぶん、性別はどうでもいいんだろうな」


 そう、なんだ。


「なんか、達観してますね」


「達観か。そう言われると俺がすごい人のように聞こえるな。親しい人達は、俺が壊れていると思っているよ」


「壊れている? なぜ……」


「俺は、役者だったって言っただろう? 演じることは得意だ。何かに困ると、自分の気持ちを封じて演じることで逃げてきた。だから、もう今は、自分に心があるかさえ、わからないんだよ」


 それほど攻略対象でいることは、過酷なのね。


「今の言葉も、演技かもしれないんですよね?」


「ん? あぁ、あはは、そうだな」


 やはり、そっか。今の言葉は本音だ。私は二次元のウィルをずっと見てきたし、まだ短い時間だけど三次元のウィルも見ていた。言葉に詰まって笑ってごまかすウィルは、初めて見た。



「自分がわからなくなるほど、無理しなくてもいいんじゃないかな。もう、ウィルは充分に、貢献したと思うもの」


 あっ! しまった! ウィルは、すごい形相で私を睨んでる。怒らせた。どうしよう。


「オモチ、それはどういう意味だ? 俺はもう不用品か」


 不用品? 何を言ってるの? 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ